超ISO企業研究会

最新情報

  • HOME >
  • 新着 >
  • 基礎から学ぶQMSの本質 第12回 第3の原理・原則「プロセス志向」(2016-4-11)

新着

基礎から学ぶQMSの本質 第12回 第3の原理・原則「プロセス志向」(2016-4-11)

2016.04.11

 

 

 

原理・原則の3番目は,「プロセス志向」を取り上げる。

 

 

 

■段取り八分

 

街を歩くと建設中のオフィスビルやマンションが目に入る。

工事現場では鉄筋・型枠組立,コンクリート打設,電気・設備工事など日々違う作業が行われ,次第に建物としての形を成していく。

多種多様な作業が錯綜する工程において品質の良い建物を作るために,段取りが重視される。

段取りは,広辞苑では「事の順序・方法を定めること。」,「心がまえをすること。工夫すること。」と解説されている。

 

仕事は段取りが命と言う人もおり,「段取り八分」は,仕事を進めるうえで事前の準備・工夫をしっかり行えば,その仕事は8割完了したも同然という意味で使われる。

 

 

「段取り八分」は,実は大変に高度な要求で,実務で確実に実行するには一方ならぬ難しさを経験した方もおられるのではないだろうか。

 

建物を例にとれば,建物が開発・設計・施工され,供用から取り壊しに至る間で具備すべき品質と,その品質を造り込むためのプロセスの様々な条件との間の因果関係が分からないと,上手な段取りができないため,結果として品質の良い建物の実現が難しくなる。

 

 

 

■プロセス志向

 

品質保証にはコストがかかるという誤解が以前あった。

これは,設計や製造工程に起因する不適合製品を顧客へ引き渡さないように検査を厳重に行ったり,修理や補償を行ったりなどで発生した費用がかさんだことが一因であった。

これではダメだと,日本では1950年代から工程で造り込む品質(製品特性)と工程条件との間の関係を明らかにするために,統計的手法を用いて工程解析が行われた。

 

 

これらの経験から,良い品質を達成するうえで,「結果を追うだけでなく,プロセス(仕事のやり方)に着目し,これを管理し,仕事の仕組みとやり方を向上させることが大切」と言う「プロセス志向」の考え方が日本企業に浸透し,普遍化した。

検査も大切であるが,検査でチェックして処置するよりも,初めから品質の良い製品・サービスを実現できるプロセスを確立し,プロセスで品質を造り込んだ方が効率的なのは言うまでもない。

 

 

 

■プロセスとは

 

プロセスは,何らかのインプットを受け,ひと,設備,技術,ノウハウ,資金などの経営資源を活用し,ある価値を付与してアウトプットを生成する活動と言えるが,人によってとらえ方が大きく異ならないようにプロセスを定義する必要がある。

 

プロセスの代表的な定義として,「インプットを使用して意図した結果を生み出す,相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」(JIS Q 9000:2015)がある。

ここで言う意図した結果は,アウトプット(プロセスの結果),製品,サービスを指す。

 

 

 

■プロセスの概念

 

プロセスの概念はどのようなものだろうか。

 

大きく分けると,

 

A)ユニットプロセスの管理 と,

B)プロセスフローの管理

 

という意味からとらえることができる。

 

 

A)ユニットプロセスの管理

 

プロセスの第1の概念であるユニットプロセスの管理は,あるまとまった単一業務や要素作業を,インプットを受けて意図した結果を生み出す一連の活動とみなして管理することを意味する。

管理については,本テーマの第7回第8回のメールマガジンを参照してほしい。

 

 

ユニットプロセスを管理するためには,目的(①意図した結果であるアウトプット)を得るために,何を受け取り(②インプット),どのような資源を使い(③リソース),どのような活動をするのか(④活動),またその間にどのような状況把握や介入をするのか(⑤測定・管理)を明らかにすることが必要である。

 

 

プロセスにかかわる前記①~⑤の代表的な要素として次のものが挙げられる。

 

(1) アウトプット:プロセスのインプットが変換されて出力される,a)製品,半製品,部品などのモノ,b)出力情報,知識,分析結果,知見などの情報,c)最終状態,など

 

(2) インプット:プロセスに入力され出力に変換される,a)原材料,部品,補助材,処理対象などのモノ,b)指示,入力情報,参考情報などの情報,c)活動前の対象の初期状態,など

 

(3) リソース:プロセスの活動を支え,また投入される,広義の経営資源である,人材,供給者・パートナー,知識・技術,設備・機器,施設,作業・業務環境,ユーティリティ(電気,ガス,水など),支援プロセス,支援システム,インフラなど

 

(4) 活動:インプットからアウトプットを得るために必要な,実施事項,手順,方法,条件などの諸活動

 

(5) 測定・管理:プロセスの目的達成度合い,活動状況を把握し管理するための,測定・管理項目・管理指標(アウトプット特性,プロセス活動状況,プロセス条件特性)など

 

 

 

 

B)プロセスフローの管理

対象にしている業務がある程度以上大きくなると,インプットをアウトプットに変換するためには,1つのユニットプロセスだけでは管理が難しくなり,ユニットプロセスを連結させた一連の活動としてとらえることが必要になる。

 

プロセスの第2の概念であるプロセスフローの管理は,どのようなユニットプロセスが,どのような順序で,どのように連結すれば意図した結果であるアウトプットを生み出すのかを考察して管理することを意味する。

 

プロセスフローを図に表すと,ある程度大きくまとまった業務を,適度な大きさと適度な単純さをもった小さな活動の連鎖でとらえて考察し,これらの小さな活動間の関係を把握したうえで,それぞれの活動をユニットプロセスとしてネットワーク化して精緻に管理することが可能になる。

 

例えば,業務の流れを縦軸に,担当部門を横軸にとってプロセスフローの図を描けば,その業務を実施するために,どのような活動が必要であり,それらをどのような順序・構造で,どの部門が担当するかが明確になる。

 

品質を達成する仕組みという観点からプロセスフローの図を描けば,いわゆる品質保証システムを表すことができる。

 

 

 

プロセス志向のもとで品質をプロセスで造り込むには,ユニットプロセスとプロセスフローのそれぞれの管理が有機的なつながりをもって実効を上げる必要がある。

この考え方は,量産品の工程管理で有効なだけでなく,建設,ソフトウェア開発,設計・開発などのように一回限りに見える仕事においてより重要となる。

 

最後に,プロセスを管理するための要点を4つに集約して挙げれば,

 

-良い結果を生み出すプロセスを明確に定義する

-そのプロセスにおいて,重点管理などによって失敗をしないようにする

-失敗は早く見つける

-失敗を迅速・適切に処置する

 

となる。

 

 

この4項目については,次回のメールマガジン「プロセス管理」でより詳しく解説したい。

 

(村川賢司)

一覧に戻る