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QMSの大誤解はここから始まる 第17回 マネジメントシステムはすでにあるのだからISOマネジメントシステムは必要ない、ISOマネジメントシステムは構築できない(2)   (2018-2-5)

2018.02.05

 

 

シリーズ「QMSの大誤解はここから始まる」、今日は

「マネジメントシステムはすでにあるのだからISOマネジメントシステムは必要ない、ISOマネジメントシステムは構築できない」

の後編です。

 

早速、以下からどうぞ。

 

 

(4)品質マネジメントシステムは組織の中でどのように存在しているのか

 

ISO9000(品質マネジメントシステム-基本及び用語)では、「マネジメントシステム」を以下の様に定義しています。

「方針及び目標、並びにその目標を達成するためのプロセスを確立するための、相互に関連する又は相互に作用する、組織の一連の要素」(ISO9000:2015)

この視点で、 先のa)~e) を見た場合、以下のような問題があることに気が付きます。

 

1. 例えば、a)の「経営計画」を作らない組織はないでしょうが、その中にb)の「品質に関わる課題」が「組織を取り巻く内外の状況や利害関係者のニーズ」を踏まえて具体化されているでしょうか。

経営計画(中長期・短期)を策定する際に、“何をどれだけ売るか”について計画化しない組織はありませんが、それを支える品質上の課題を、変化する状況を踏まえて明確化して、計画に織り込んでいる組織はそれほど多くはないかもしれません。

 

b)の「品質マネジメントシステム(品質保証に関わる規定等)」は、各々の組織の歴史的経過の中で制定されたものですが、「組織を取り巻く内外の状況や利害関係者のニーズ」の変化の中で、対処すべき新たな課題に直面しています。

例えば、多くの組織でプロセスの担い手の変化(ベテラン層の退職に伴う経験年数の低下や、外部化)が進んでいますが、それに伴う仕組みの見直しや教育訓練が適切に実施されていない事例も散見されます。

 

 

2. b)の「品質マネジメントシステム(品質保証に関わる規定等)」とc)の「部署・事業所別のマネジメント」との関係についても、現時点で見直しが必要になっています。

 

多くの組織で部署・事業所別のマネジメントは「状況の変化」にさらされています。

例えば、労働安全衛生・環境配慮・個人情報保護など、業務遂行の前提として部署・事業所が対処すべき社会的責任に関わる課題は格段に増加しています。

一方で長時間労働の規制により、その課題を限られた時間で処理しなければなりません。

プロセスの担い手の外部化が進行することで、協力関係の在り方が問われています。

 

品質マネジメントシステムだけでなく、労働安全衛生・環境配慮・個人情報保護・コンプライアンスなどの個別のサブシステムは、各々、状況に対応するために対処すべき課題を具体化してその対応を現場に求めます。

しかし、受け皿である現場は一つしかありません。日々の仕事は「ゴールの達成(求められる品質のアウトプットの実現)」をめざしてすすめられていますが、その中で当たり前に、これらの課題への対応ができるためには、システムの見直しが必要です。

 

 

 

3. 上記のような変化に対応するためには、一人ひとりの参画が重要になります。

 

状況の変化と新たなリスクに対応した手順の見直しを、プロセスを担うメンバーの自覚的な参加ですすめることが不可欠です。

これはd)「個別業務のマネジメント」及びe)「個々人のセルフマネジメント」の改善に他なりません。

各部署・事業所のマネジャーには、従来のマネジメントを見直して、新たな課題に対応するマネジメントの実現が求められています。

 

参画を推進するためには、状況と課題とを見える化し、共有化することが必要不可欠です。

プロセスの担い手が変化していることを踏まえて、自分たちが責任を負うプロセスがどのようなものであるのかを再度明確化し、それが直面しているリスクと課題、それを達成するために一人ひとりにどのような役割が期待されているのかを共有化し、各人がその役割を果たせるようサポートすることが、部署・事業所のマネジャーに求められています。

 

 

 

(5)組織にいまあるマネジメントシステムを見直してみること

 

ISO9001:2015では、従来は序文などで考え方を示していた事項のいくつかが要求事項とされました。

例えば、「組織の目的及び戦略的な方向性に関連し、かつ、その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の課題を明確に」すること、「リスク及び機会」への取り組み、プロセスアプローチなど ・・・ これらは変化する状況の中で、組織の事業経営戦略を支える品質マネジメントシステムを確立するための重要な課題でもあります。

 

一定の年月、製品・サービスを提供し続けている組織であれば、ISO9001が要求する「要素とそのつながり」に相応する「仕事」は何らかの形で存在しているでしょう。

そのことをもって、「要求事項を満たしている」と主張し、たとえ多少の齟齬があったとしても、審査員に対してその正当性を説明できれば審査はクリアできる ・・・ 「だから2015年版改正の対応についても何もしなくてよい」、という主張もあります。

 

しかし、大切なことは、「我々の品質マネジメントシステムは従来どおり審査に合格できるか」ではなく、「事業経営を前進させるために、品質マネジメントシステムに改善すべき課題があるか否か」です。

既存のマネジメントシステムは、組織の歴史の中で形成され、各種の規程や手順として文書化(見える化)されたものです。

それは、文書化された時点で完成したものではなく、変化の中で見直され継続的に改善されるべきものです。

それはISOのための課題ではなく経営課題そのものです。

 

 

 

(6)要求事項をモノサシとして

 

ISO9001は、要求事項を満たす製品・サービスを一貫して提供するために必要なマネジメントの要素と、その相互の関連を明らかにしています。

但しそれは、購入者が供給者を評価するための必要最小限の品質マネジメントシステムモデルであり、組織にとって必要な品質マネジメントシステムの要素のすべてが盛り込まれたものではありませんが、点検のためのモノサシとしては有効なものです。

 

先に述べた「組織の状況」や「リスク及び機会」の検討をはじめとして、品質マネジメントシステムに必要な「要素」がISO9001の要件を満たして確立されているか、要素間の情報の流れなど「相互の関連」が適切に確立されているかを点検することで、「すでにある品質マネジメントシステム」の改善課題を明らかにすることができます。

 

また、現時点で、組織の品質ネジメントシステムが規程やマニュアルなどで「見える化」されていない組織であれば、ISO9001の要求事項をモノサシとして、それらが自組織の仕事の中にはどのような形で存在しているかを点検することで、「組織に現時点で存在しているマネジメントの仕組み」を見える化し、欠落や過剰などの改善課題を明らかにして、事業経営に役立つ品質マネジメントシステムを確立することができます。

 

より良い仕事をすすめるためには手順の見直し・改善が不可欠であるように、事業経営の前進のためには、マネジメントシステムの不断の見直しと継続的改善が必要です。

組織に既に存在しているマネジメントシステムは、状況の変化の中で有効に機能できているか、新たに対応すべき課題、要素やそのつながりの補足・補強などの改善課題は存在していないか、それらについて点検し、必要な改善を実施すること ・・・ これが「マネジメントシステムの構築」に他なりません。

 

ISO9001はそのための、優れたツールとして、すでに品質マネジメントシステムが存在している組織においても、活用されるべきものではないでしょうか。

 

(土居 栄三)

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