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QMSの大誤解はここから始まる 第16回 マネジメントシステムはすでにあるのだからISOマネジメントシステムは必要ない、ISOマネジメントシステムは構築できない(1)   (2018-1-29)

2018.01.29

 

 

シリーズ「QMSの大誤解はここから始まる」

今回と次回は、

「マネジメントシステムはすでにあるのだからISOマネジメントシステムは必要ない、ISOマネジメントシステムは構築できない」

というテーマでお届けします。

それでは以下をどうぞ。

 

 

はじめに

 

ISO9001:2015は、序文で、組織がISO9001に基づいて品質マネジメントシステムを実施することで以下のa)~d)の便益を得る可能性があると指摘しています。

 

 

a)顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供できる。

b)顧客満足を向上させる機会を増やす。

c)組織の状況及び目標に関連したリスク及び機会に取り組む。

d)規定された品質マネジメントシステム要求事項への適合を実証できる。

 

 

ISO9001に基づく品質マネジメントシステムの実施は、認証の取得だけでなく、顧客満足の向上や組織の目標達成に寄与することができる ・・・ それが規格の意図であるのに、導入する組織の側には、そのような方向でISO9001を活用することに対して否定的な受けとめをする場合があります。

 

例えば、「どこの会社にも品質マネジメントシステムは存在している。今さらISOなど必要ない」、「すでにマネジメントシステムは存在しているのだから、ISOに基づくマネジメントシステムの構築などできない」 ・・・ 等々。

 

このような「受けとめ」は正しいのか。このような主張が生まれた背景から考えてみましょう。

 

 

 

(1)文書過剰への反省・批判を背景として

 

“組織にはすでにマネジメントシステムが存在している”という考え方の一つの背景として、ISO導入による過剰な文書化(「システム構築=文書」ともいえる状況)への批判・反省がありました。

ISO9001の導入は「それを使って仕事を進める仕組みの整備」ではなく、「要求事項に適合していることを顧客に見せるための仕組みづくり」としてスタートしました。

ISOマネジメントシステムの構築とは、大量の「見せるためのISO文書」を作成することであり、その多くは仕事では使用しないものである ・・・ このような「構築」の実態は確かに存在していたし、もしかしたら2015年版以降も克服されていないかもしれません。

 

もちろん、文書化それ自体はシステム構築の重要な柱です。

ISO9001:2008では、「4.1一般要求事項」で「組織は、この規格の要求事項に従って、品質マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、維持しなければならない」ことが要求されていました。

マネジメントシステムを組織として実施・維持・改善するためには、どのような形であれ、それが見える化されていなければなりません。

 

しかし、文書はマネジメントシステムの「模写」であり、システムの実体ではありません。

文書に書かれたシステムがどれほど整然としていても、それが現実の仕事の仕組みと乖離しているならば、どんなに大量の文書を作成しても何の成果にもつながらないことは言うまでもないことです。

 

 

 

(2)「既に存在しているシステム」は改善できないのか

 

「組織にはすでに品質マネジメントシステムが存在しているので、ISOマネジメントシステムの構築など不要。そもそも不可能だ」という主張は、「仕事と無縁の認証のための文書づくり」を否定し、“既存の仕事の仕組みの中にISO9001要求事項を満たすシステムが存在している”ことを主張している点で積極的な意義をもつものです。

2015年版でも「組織の事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の統合」が提起されています。

しかし、一方でこの考え方は〝すでにシステムが存在している〟ということを強調するあまり、ISOマネジメントシステムを活用することで既存の仕組みを改善することに道を閉ざすものとなっています。

 

マネジメントとは目的を達成するために必要な働きかけであり、それを組織の仕組みとして取りまとめたものがマネジメントシステムです。

より良い成果を達成し続けるためには、「マネジメントの仕組みの改善」が必要となります。

 

「仕事をしているということは、そこに『既存の仕事の手順』が存在している。従って、手順の改善や標準化はできない」 ・・・ 仮にそのような主張をしたら、「ずいぶん変な話をしている」と思われるでしょう。

それと同様に、「組織にはすでにマネジメントシステムが存在している。従って、その標準化や改善はできない」という考え方は誤ってはいないでしょうか。

 

 

 

(3)マネジメントの実態とマネジメントシステム

 

組織のマネジメントを階層構造として捉えるなら、以下のa)~e)の様に考えることができます。

 

 

a)経営のマネジメント

 

◎主な内容 :

・経営計画、事業予算の確定~執行 ・執行体制、人事の確定 ・ガバナンス など

 

◎特  徴 :

・とりわけ中小の組織の場合、暗黙のルールに基づく運営が多い。例:事業経営計画が網羅すべき要件や進捗管理の方法は各部任せ、など。

・ガバナンス関連は規程類として文書化されているが、内容は「会社規程集」などを写しただけで、実態とかい離している場合も少なくない。

 

 

b) サブシステム別・テーマ別のマネジメント

 

◎主な内容 :

・経営目的を達成するために、特定のテーマについて組織全体をマネジメントするもの。

ゴールマネジメント系(品質マネジメント)

リスクマネジメント系(安全、環境、コンプライアンス等のマネジメント)・各々のサブシステムが独立して存在するのではなく、実際の仕事は下記のc~eの中に混在している。

 

◎特  徴 :

・狭義の「品質マネジメントシステム」はここに該当するが、“体系化された品質管理全般のルールのとりまとめ”ではなく“○○製品品質保証体系”、“○○工場品質管理規程”など、限定されたものである場合が多い。・工場ごとで、あるいは“品質”と“労働安全衛生”とで再発防止の考え方が異なるなど、各サブシステム間で不整合ある場合も少なくない。

 

 

c) 部署・事業所別のマネジメント

 

◎主な内容 :

・上記のa)経営のマネジメントとb)テーマ別のマネジメントとに規定されながら、部署・事業所の目標を達成とそれに伴うリスク管理を行うマネジメント

 

◎特  徴 :

・マネジャーの力量や考え方によりPDCAの実質的な確立に格差がある。・公式には上記のb)で定められた規程類を運用しているが、我流の運用や、規程類と矛盾する独自のルールが存在することも多々ある。

・組織の経営目標達成を直接左右するため、実際にはこのマネジメントの影響が最も大きい。

 

 

d) 個別業務のマネジメント

 

◎主な内容 :

・固有の手順・資源を使用して、仕事の目的を実現するために行うマネジメント

 

◎特  徴 :

・暗黙知としての「個人技」・「体得」ですすめられているものも少なくない。・一般的にPDCAは未確立 ・・・ 計画が暗黙の前提として見える化されていない仕事、他者による点検はなく異常値が発生した場合にのみ問題が表面化する仕事、改善は外部からの強制としてのみ実施される事例・・・などなど。

 

 

e) 個々人のセルフマネジメント

 

◎主な内容 :

・各自の仕事の作風・癖

 

◎特  徴 :

・多くの場合、上記のc)~d)を通じて形成される部署・事業所の体質・風土に影響される。・“熟達した職業人”とは、自分の担当する分野でPDCAサイクルを回せる存在を意味する(見通しをもった計画、確実な段取り、目配りと変化への迅速・柔軟な対応、失敗から学び次に生かすことで同じ失敗を繰り返さない ・・・ 等々)。しかしそのような存在は多くはない。

 

 

「組織にはすでに品質マネジメントシステムが存在する」というのは、上記のどの部分のことでしょうか。

b)の品質保証等の規程類に見える化されたマネジメントの仕組みがあるということならば、それがa)~e)の他の要素とどのようにつながっているかを点検してみることが必要です。

 

(土居 栄三)

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