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未だに頻発する品質不祥事を防止するために何が必要か? 第3回 『求められる健全な組織体制・風土』   (2021-08-09)

2021.08.10

■事故・不祥事は起こしてはいないけれど……

 

事故・不祥事を起こす企業に共通する特徴として,「内向き」「内部コミュニケーション劣悪」「属人的意思決定」「希薄な思想・哲学」を挙げました.事故や不祥事には至っていませんが,それでも「いかがなものか.お気の毒に」という企業や部門を垣間見たことがあります.

 

例えば,「学習能力不足」です.同じような失敗を懲りずに何度も繰り返す組織です.謙虚さが不足しているのか,類型を認識した上で得られた知見を敷衍し自らの言動に活かすという抽象化能力が不十分といいましょうか,「他山の石」とか「人のふり見て我がふり直せ」という教えの通用しにくい組織ということになります.

 

「極めない企業」「根性なし企業」というのも気になります.何らかの問題・課題が生じたとき,その原因究明や対応策検討において,とことん追及せずに適当なところで手を打ってしまう組織です.もちろん,投資と回収という概念からいえば,出来ないことや出来そうにないことに多大な資源を投入するのは賢くはありませんが,実現可能性について常識的な検討もせずに諦めてしまうのは,いかがなものかと思います.

 

「他律的組織」というのもあります.何らかの判断をするときに,自らの価値基準がないとか,判断軸がブレる組織です.何か決めようとするときに,参考事例を常識的レベル以上に調べそれに従おうとします.決断を先延ばしにしたり,提案を却下するときの理由の多くが「先例がない」という組織です.決断に際しては多かれ少なかれリスクや不確実性を伴うものですが,これを克服できる見識や度胸,あるいは確固たる価値基準がない組織です.これが個人レベルに蔓延してくると,受け身,消極的,当事者意識不足,熱意不足の組織となります.

 

その結果として,上述した「属人的意思決定」にもつながります.もっともこのような組織には,何らかの意味で優秀な,それゆえに強いリーダーシップを持った上層経営管理者がいて,中間層やフロントラインがいろいろ考える前に強烈な指示が来ます.むしろ待っている方が無難で効率的です.ついには上の顔色を窺い,考える習慣を捨て,問題意識,改善意識の薄れた組織に変貌していくことになりかねません.

 

「不透明企業」というのも気持ち悪いものです.先週取り上げた,「内部コミュニケーション劣悪」にも通じます.もちろん組織運営においては,何もかも開示して進めて良いわけではありません.それでも,組織が価値観を共有し一丸となって進むためには,守秘にする必要や理由のない事項は関係者が知っているという状況を作り出す方が得策です.決められたこと,いま進められていることの理由や根拠は多くの構成員が知っていて当然です.

 

「ガバナンス」の効いていない組織も,当然のことながら好ましくありません.組織で仕事をしているのですから,組織構造に従った指揮命令系統が機能し,業務の進捗や結果が然るべき職制に伝達され適時適切な対応が取れていなければなりません.組織運営のために決めているルール類を守って,適時適切に業務を遂行すべきです.社会人,職業人としての「しつけ」の問題といえるかもしれません.

 

■求められる健全な組織体質・風土

 

こうした事例を反面教師にし,また優れた企業の特徴を確認して,いま求められる健全な組織体質・風土がどのようなものか探ってみたいと思います.

 

そのむかし,バブル経済崩壊後の成功企業を分析して3つの特徴を見出したことがあります.それは「外向き」「コアコンピタンスの自覚」「優れた人材」でした.「外向き」とは,顧客志向・目的志向をその中核に置き,ステークホルダーへの価値提供連鎖を意識した経営を行うということでした.そのためには,妥当な目的・目標設定,因果関係・目的手段関係の理解が必要です.「コアコンピタンスの自覚」とは,競争環境における自己のあるべき姿を明確に認識し,その実現に向けて経営資源の集中投入ができるということでした.そのためには,学習能力,本質把握能力,実行力,自律,スピードが必要です.「優れた人材」とは,上位,中間,最前線のいずれの階層においても優れた人材がいるということでした.そのためには,情報共有,価値観共有,当事者意識,使命感,問題意識などが必要です.

 

いろいろ考えられ,過不足が多々ありそうですが,「求められる健全な組織体質・風土」として,以下の事項を挙げておきます.そのために必要なことを「*」で記してみます.

 

(1) 正しさ

  公正:公正性,職業的正直さ

  合理:合理性・妥当性の認知・推奨

  事実:事実の重視・尊重,科学性

  賞罰:信賞必罰

*目的志向,外向き:外部の期待に応える,責任を果たす

 

(2) オープン

  透明:透明性,説明責任,企業統治,問題・課題の明示

  外向:外向き,他者の目,ベンチマーク

*外向き:外部の期待に応える,責任を果たす

 

(3) 共有

  情報:コミュニケーション

  思想:価値観共有

  分担:責任・権限・説明責任,役割・分担の明確化

*一体感,当事者意識,自律分散

 

(4) 賢さ

  本質:本質の理解,本質知の抽出,知識の再利用

  継続:成功するまで止めない

  目的:目的志向,目的は何かを自問

  反省:PDCA,一流の反省,未然防止

*目的志向,本質理解,因果関係,学習能力,継続力

 

(5) 愚直(真理追究型ハングリー精神)

  徹底:極める,徹底的にやる

  積極:前進,前進,また前進

  改善:問題意識,改善意欲,工夫

  科学:事実,論理

  因果:メカニズム,根拠,深い分析

  本質:一般化,抽象化,仮説(モデル),目のつけどころ

*当事者意識,追求・追究・追及

 

(6) 自律

  定義:要件定義,仕様

  企画:コンセプト提示,計画

  価値観:価値基準,価値尺度

  責任:自己責任,リスクを取る,挑戦

  自律:○○依存からの脱却

  変化:変化への対応,コアコンピタンス,自律

*自立・自治,自己の価値軸

 

何やら判じ物のようで,よく分からないでしょう.私自身,こんなものでよいのか自信を持てません.ご迷惑かもしれませんが,これらをかみ砕く作業を通じて,私自身が何を考えているのか明らかにしてみようと思います.

 
飯塚悦功

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