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本日から、品質部門配属になりました 第49回 『品質改善活動の全社的推進』(その4)   (2021-05-10)

2021.05.10

1.改善の全社的推進に関する品質部門の役割

 

品質部門の役割を端的に言えば,製品の品質,サービスの質という視点から社内を部門横断的に見渡し,社内全体がうまく回るようにする,というものです.したがって,改善の全社的推進にかかわる品質部門は,製品,サービスの質を高める,すなわち,顧客満足の獲得,製品,サービスを通した顧客への価値提供を目指し,テーマの選定とチーム構成から効果の確認,標準化に至るまでの全てのステップを俯瞰し,会社が向かうべき方向に進むよう支援する役割があります.例えば,改善のテーマの選び方によっては,部門としてよくなる方向には進むものの,企業全体でみると,顧客への価値提供の上では労力の割に効果がないものになりかねません.改善活動を部門任せにしてしまうと,部門内部での取り組みになってしまい,部門間での取り組みが弱くなります.そこで部門間を俯瞰できる品質部門が支援に回り,部門の壁をとるのです.

企業の収入のほとんどは,製品,サービスに対する対価であり,顧客がそれを購入,利用するかどうかは,製品の品質,サービスの質に依存します.したがって,企業の理念,ビジョン,戦略などに沿った製品の品質,サービスの質に関する戦略を設定することが必要です.この設定は経営陣の役割です.またこの戦略などは,大きな方向性を示したものです.これをそのまま部門に伝えるのではなく,それぞれの部門の役割に応じて伝達するという,とても大きな役割が品質部門にはあります.これをうまくやらないと,それぞれの部門が自分勝手に製品,サービスを通した顧客への価値提供を解釈し,自分たちがやりたいこと,作りたいことに偏ってしまいかねません.問題の多くは部門間の壁によって生じる,とよく言われます.これを,品質という視点で問題を取り除くのが品質部門です.

 

2.品質は段階によって姿を変える

 

製品の品質,サービスの質にかかわる情報やものは,部門によってその内容が変化します.例えば製品の場合には,企画段階では顧客の声,潜在要求,それを満たす企画案が品質にかかわる主要な情報です.また,設計部門ではこれらの情報を受け,製品の目標値たる仕様がアウトプットになります.設計段階では,品質は製品仕様で表現されています.さらに,製造部門では製品仕様を満たすべく製造した製品の実際の値で品質が表現されます.製品を顧客に渡す営業部門では,製品の実際の値を顧客がどのように受け止めたかが品質です.このように,段階に応じて品質とらえ方が変わるので,企業全体を見渡して整合しているかどうかを見る部門が必要になります.まさにこの役割をもつのが品質部門です.例えば,製品を決められた納期通りに納入し,製品仕様を満たし故障せず稼働しいていても顧客満足が得られないとします.販売部門は納期通りの納入,製造部門は仕様通りの製造をしているので,それぞれの部門では取り決め通り業務を遂行していることはわかります.一方,どこに顧客満足が得られないという問題の原因があるのかはわかりません.品質部門が顧客満足データをもとに,企業内の部門を横断的に調べることで,企画段階での要求のとらえ方が適切でない,設計段階における要求から製品仕様への変換が適切でないなど,顧客満足が得られない原因が初めてわかります.改善の全社的な推進には,品質部門の持つ分野横断的に品質で組織を見る視点が欠かせないことがわかります.

 

3.品質保証体系図は企業の動脈を記述

品質のとらえ方が企画,設計,製造という一連の段階のそれぞれで変わる点は,原価と対照的です.原価の場合は,円という単位を用いて全ての部門で測定します.したがって,原価管理面での課題は,円という共通単位での合理性,納得性の高い戦略立案,実施,測定,対策になります.複数の部門にまたがる原価であっても,円という共通単位で測定しているので,加減乗除という演算で処理できるため,原価管理上の標準を明確にしておくとその結果は一目瞭然です.

これに対して品質の場合には,一連の段階ごとに変化していく情報,ものを,企業内で一貫して評価する必要があります.この流れは,企業内の動脈ともいえます.この流れを視覚化したものが品質保証体系図であり,企業内の動脈図と言い換えてもよいでしょう.このように重要な役割を持つ品質保証体系図ですが,審査,監査用に作ってみたというレベルのものをちらほら見かけます.企業内の動脈の流れをよくするために,企業内にある問題を明確にし,改善テーマにつなげるのも品質部門の全社的改善の役割です.

 

4.製品,サービス戦略評価へのインプットも品質部門の役割

製品,サービス戦略をもとに,新規顧客獲得を目指した新製品の開発,他者が実現していないサービスの提供など,企業の将来にかかわるような大きな改善プロジェクトを設定します.これは,企画部門,設計部門,生産,サービス提供部門,営業部門などほとんどの部門を経て,顧客の手に渡ります.その結果,顧客が満足したか,売り上げが当初目標を達成したかなどの分析を,部門横断的に行い経営戦略評価のインプットにします.例えば,それぞれの部門が目標を達成しても最終目標が達成できていない場合には,最終目標が高望みすぎ,あるいは,部門の目標設定に問題があったことになります.このように,大きな改善プロジェクトの評価に関連し,企業の存続にかかわる製品,サービス戦略評価のインプット情報を,部門横断的立場からまとめるのは,品質部門の役割です.

 

この4回の連載では,改善の全社的推進を取り上げました.まず改善について説明し,定石,教育,支援,風土づくりなどを説明しました.さらに今回は,改善の全社的推進における品質部門の役割を説明しました.改善,品質という視点から企業を見ると,根幹となる活動が多数含まれてきます.それを総括するのが品質部門といえるでしょう.

 
(山田 秀)

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