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本日から、品質部門配属になりました 第40回 『品質評価』(その3)   (2021-03-01)

2021.03.01

品質評価 (その3)

今回は(その1)で分類した品質評価の3番目「組織全体の仕組み(事業プロセスをコアにした品質マネジメントシステム)➡マネジメントシステムの評価」について、体系的なマネジメントシステムの評価である内部監査と経営者による評価についてお話します。

 

ISO認証の導入により自組織を評価する仕組みとして「内部監査」が定着してきましたが、それ以前から我が国では現場を中心とした品質管理活動が活発に行われ、その結果としてJapan Qualityが確立された歴史があります。特に製造業系では工程検証、品質検証、トップ診断など現場を中心とした評価機能とそれらを支える教育訓練が活発に行われました。ISO9001導入1ジェネレーションを経た今、それらの現場指向のベクトルが弱くなってきたように思うのは私だけではないような気がしますが、いかがでしょうか?

ここではISO用語が多く登場しますが、ISO規格にとらわれず、組織の規模、文化、体制、事業特性などに調和する経営機能における品質部門の役割として最適化を考えていただければ幸いです。

 

3.マネジメントシステムに対する内部監査

内部監査の対象を①マネジメントシステム、②製造工程監査、③製品監査として、②と③は(その2)で述べていますので、ここでは①の「経営機能としての内部監査」として、品質部門が行うべき最も重要な項目に焦点を当てお話します。

 

3.1 内部監査の計画:「監査プログラム」の重要性

監査プログラムはISO9000及びISO19011の定義で“特定の目的に向けた、決められた期間内で実行するように計画された一連の監査”と定められています。これは「監査活動のP(計画)」であり、一般的な日程、項目だけの「監査計画書」(監査スケジュール)のことではありません。

監査プログラムは、監査の目的、範囲、監督基準、資源(監査員・予算など)、日程計画、場所(被監査部門)などを策定するもので品質部門の役割です。

 

監査プログラムはマネジメントシステムの有効性を継続的に評価するための重要な計画で、組織の状況から見える課題、トップ指示、事業計画などが策定の原点であり、内部・外部のパフォーマンス(工程不具合や顧客クレーム等)、重要なプロセス及びリスク度合から優先的に計画されることが大事なのです

 

監査プログラム策定のサイクルは年間ベースで良いでしょうが、時宜を得たプログラムで都度計画するとより効果的です。

 

監査プログラムのインプットには次のような項目があります。

・以前の監査プログラム(以前のプログラムとその結果の有効性)

・リスク分析結果(マネジメントシステム、事業プロセスからのリスク、組織変更などの変化に伴うリスクを含む)

・監査結果(認証審査、顧客監査-第2者監査、内部監査)

・内部/外部の品質パフォーマンス(仕損費からも追ってゆく)

・顧客の苦情・フィードバック(最重要なインプットのひとつ)

・内部/外部の課題(中期的なものを含み組織が直面している課題、問題)

・マネジメントレビューのアウトプット(トップ指示事項)

・サプライヤ関連事項(サプライヤ変更、サプライチェーンのパフォーマンスなど)

・プロセスの大きな変更(工程変更、組織変更による役割変更などを含む)

・その他、組織特有な注目すべき事項

 

監査プログラムのアウトプット、①監査目的に整合した日程計画、②監査チーム(監査対象プロセスに合わせた力量担保)、③監査対象プロセス/部門/範囲、④監査基準/方法、⑤必要資源(予算等) が監査プログラムの中身になります。

即ち目的指向で策定されることが重要であり、以下に内部監査プログラムの例を示します。

〈リスク発掘型〉➡ 最優先

・製品品質リスクの検出(リコール、重大品質不具合防止など)

 ・組織変更によるリスク評価(プロセスの変更等)

 ・重要サプライヤの変更(新規・サプライチェーン変更、第2者監査を伴う等)

〈適合性確認型〉

・法規制適合性(公的監査対応、特に法規制がバイタルプロセスの会社など)

・規格、QMSへの適合性(QMS構築の初期段階に有効)

・新製品の適合性(製品監査が含まれる)

・顧客または供給者との契約事項の検証

〈課題顕在化型〉

・顧客クレーム(費用)低減

・新規顧客の要求事項

〈システム改善パフォーマンス向上型〉

・新製品及びプロセスの有効性

・品質目標の展開・達成状況

……など

 

次に、人的資源管理についてお話します。

3.2 内部監査員の資源:プロセスの特性に合わせた力量

効果的な内部監査結果を得るためには力量がある要員と監査目的に合わせたチーム編成が必須です。内部監査員には次に述べる二層の要員編成が効果的です。

現業部門の現場プロセス・作業を熟知している第一線の内部監査員を第一階層として、「製造工程監査」及び「製品監査」を担当することが効果的です。ここでは基準への適合性検証に重点が置かれます。

第一階層の内部監査員の力量

① 組織の製品に適用される法的規制、ISO/JIS規格、自組織のQMS理解

② 製品・サービスのプロセス(少なくとも自分が監査する領域)の理解

③ 品質管理の基礎知識(QC7つ道具など)

④ その他、企業特性により自組織プロセス及び製品に必要な知識及び経験

 

次に管理職レベルを第二階層として、部門における課題、リスクに対する展開、部門の品質目標妥当性など事業プロセスとQMSとの統合という観点から、ISO9001:2015 の箇条456に該当する「マネジメント領域のプロセス」に管理職レベルの力量がある内部監査員を充てることが効果的です。

第二階層(管理職レベル)の内部監査員の力量

  • 上記1)の項目に加え、

TQMの実践、特に管理職として組織の事業計画策定に参画し、部門の方針管理(目標管理)を実践していることが望ましい

② コスト管理・予算管理の知識

③ 経営資源活用(人・物・金)の知識

④ 教育訓練の面で管理職としての実践が望ましい

 

内部監査員の活用

品質部門の役割として、監査実績・評価記録も含めて人的資源管理をすることが大事です。内部監査員が持つリスク検出能力の活用は、1年の1,2回の出番では宝の持ち腐れというものです。特定の問題が発生した時などに検証チームとして活用すれば更に効率的です。

監査のスキルは当然、日常業務のリスク検出にも大いに役立つものであり、その意味で監査要員が自分の職場でその力量を発揮できれば自ずと組織の品質向上に寄与できるのです。

 

3.3 サプライヤ第2者監査員の編成及び報告

監査プログラムに基づき監査先の製品、プロセスに合わせてチーム編成をすることが基本ですが、マネジメント領域を監査する人(第二階層)と現業を監査する人(第一階層)の両方が必要でしょう。窓口となっている購買・調達要員、品質保証要員、該当する場合は設計・開発要員、生産技術要員、製造部門要員などで編成すると効果的です。

監査結果の報告は監査先サプライヤの経営層になりますが、正式な監査報告書は自組織の職制の承認を得た後、正式に提出することになります。

 

3.4経営者(経営層)による評価:マネジメントレビュー(MR

ISO 9001:2015改訂による事業プロセスとQMSの統合という気づきから、マネジメントレビューが年1回とかの“年中行事”ではなく、通常行われている経営層を含めた会議等が本来の意図であることが理解されてきたようです。

 

経営層による適切な評価と判断が行われるためには、箇条9のマネジメントレビューのインプット項目に対して、どのような資料が準備され報告されるかがキーです。報告資料の準備は品質部門の役割ですが、ここに加えていただきたいのは「コンプライアンス評価」です。大企業の不祥事が社会問題として世間を騒がせたことをきっかけとして、多くの企業でコンプライアンスオフィサーのような役職や法規制遵守監視のための組織変更が起こったのは良いことです。私が在籍した自動車会社では、品質保証部から独立させて、経営層直結でコンプライアンスに係るリスク管理を担当し、内部統制の機能と合わせた活動を行っています。

 

内部からの報告と並んで経営層にとって重要なのは、外部の客観的評価でしょう。これは社外取締役を加えた監査機能における内部統制及び監査法人による評価ですが、(ISO認証審査も加えて良いでしょう)これらに共通した目的には経営リスクの検出があることを理解しなければなりません。

 

まとめ

(その1)の冒頭で引用している「品質という経営機能」の意味を深く考え、事業活動の中で品質部門として認識すべき評価は何かという観点で、ISO9001:2015の「箇条9 パフォーマンス評価」を切り口にして考えました。

個々の品質評価については各著者のメルマガでも述べられているので、重複した解説論は避け、自らの経験及び専門領域(自動車)の事例などを交えてお話しました。

読者の皆様におかれましては“左脳休め”感覚で読み終えたことと願っています。

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