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本日から、品質部門配属になりました 第36回 『品質会議の運営』(その1)   (2021-02-01)

2021.02.02

今週から2週にわたって「品質会議の運営」についてお話しします。
品質会議は、組織の品質保証に係る業務を効果的に、効率的に行うために設けられた全社的な会議です。
通常は、品質部門が月に一回、経営層から全社の関係部課長までを招集して開催します。
 
品質会議は、組織の製品・サービスの顧客への提供に関わる品質保証について、主要な情報、課題を全社幹部に提供し、今後の品質保証活動への対応、処置及び解決策についてコンセンサスを得る、という重要な会議です。品質会議で扱う議事は広範ですが、招集される幹部の時間的効率を考え、状況に応じた議事を速やかに上程し、課題を重点的に取り扱う運用の工夫が求められます。
 
11.1 品質会議の目的、意義,位置づけ
この連載で、我々は組織が顧客に提供する製品・サ-ビスの品質を保証するためには、以下に関わる活動が必要だと考えてきました。
A.品質保証体制:品質保証体制の構築・維持・改善
B.4つの品質保証:品質の4つの側面の保証
 B1.企画品質の保証:顧客ニーズ → 製品・サービス企画
 B2.設計・開発品質の保証:企画 → 製品・サービス仕様(+プロセス仕様)
 B3.量産品質の保証:製品・サービス仕様 → 製品・サービス
 B4.市場品質の保証:製品・サービスの使用・利用時
C.品質保証の主担当業務としての組織的活動:全組織的,部門横断的な活動
D.品質経営参謀:品質経営の推進における参謀的役割
 
連載「1.品質部門の役割とは」では、上述のA~Dまでの活動すべてに関与するのが品質部門であると明らかにしています。
それに沿って品質部門の業務をより分かり易く説明しますと、以下のようになります。
Aに関しては,経営機能を運営していくための品質保証体系構築、その機能の運営、及びその状況監視と管轄業務になります。
Bに関しては,全社の品質保証活動に直接かかわります。自部門の業務は当然のこととして(検査、クレーム・是正処置)、他部門の品質保証業務、すなわち企画品質の保証から市場品質の保証まで多岐にわたっていろいろな支援をライン業務として行います。
Cは、品質保証の体系・体制のもとで各部門が分担・連携して実施していく業務について,部門間の調整や支援をするスタッフ業務になります。
Dに関しては,品質保証の側面から経営トップ層に助言を行う参謀的役割の業務を行います。
 
品質会議は、A~Dの品証部門の業務の内Cに属するもので、その目的は、「組織活動の中核としての製品・サービスの顧客への提供に関わる品質保証について、主要情報、課題を全社幹部に提供し、今後の品質保証活動への対応、処置及び解決策についてコンセンサスを得る」ことにあります。
また、品質会議の意義については、「定例的に組織の製品・サービスの品質保証状況を組織の主要メンバーが共通の認識を持つことにより、より顧客満足を向上させ、組織が持続的に成長していける」所にあります。
さらに、品質会議は、「組織の持続的成長に不可欠な顧客に価値を提供し続けるということの基盤になるもので、継続してパフォーマンス指標を監視するという組織に重要な会議」の一つに位置づけられます。
 
11.2 品質会議の議題
典型的な品質会議の議題は以下の3つに大別されます。
(1)定例的な全社品質状況の報告と対応
(2)個別の全社的重要品質問題への対応
(3)品質保証体制にかかわる課題と対応
 
11.2.1 定例的な全社品質状況の報告と対応
品質会議では、品質保証の状況を表す代表的な指標を定例的に報告します。組織は、重要と判断する指標を毎月定例的に監視・測定し、製品・サービス品質の良さ加減、或いは悪さ加減を判断します。組織の主要メンバーがその指標を定例的に知り、現在の製品・サービスの品質保証の状況について共通な理解を持つことは、以降の組織の品質保証活動に多大な影響を与えます。
一般に製品・サービスの品質保証の状況を表す代表的な指標には、次のようなものがあります。
・市場・顧客クレーム
・客先納入不良
・出荷検査不良
・工程内不良
・受入検査不良
・DR指摘数
・設計変更数
・開発リードタイムなど
 
これらの中から組織の品質保証の脆弱性を示唆する指標を選択して、定点観測できる体制を構築します。その場合品質情報がタイムリーに各現場で取られているかを確認す
ることが大切です。それぞれの指標には管理水準を設け、管理水準から逸脱した指標に対しては品質保証活動に内在する問題・課題を明確にし,必要な対応策について提案、議論、検討をして,組織的な改善、改革に結びつけます.
 
定例的な全社品質状況の報告は、長年会議に出席しているメンバーにとっては単なる数字の羅列を眺めるだけになりがちですので、どこが改善、改革のポイントであるか明確に抉り出すことが品証部門の重要な役割です。そして、その改善、改革のポイントを全社対応問題として、経営層のいる前で対応部署、対応日程、期待する目標などについてコンセンサスを得ることが鍵になります。
 
11.2.2 個別の全社的重要品質問題への対応
定例的な指標とは別に,重要品質問題が発生したときには,その事案について概略を報告し,問題の発生原因,見逃し原因,不十分である原因分析などについての見解を示し,迅速な修正処置と適切な再発防止,未然防止策について出席者の確認を得るようにします。類似製品における潜在的市場クレームがどのぐらいあるかの推測もする必要があります。
発生した事案によっては、財政的な棄損、顧客への損害補償、社外への適切な広報など品質部門だけでは処置しきれない場合があり得ます。そのような場合は、すでに個別会議で対応が協議されているはずですので、品質会議の場で処置の全体計画を示し、部門ごとの役割分担を含め、現状並びに今後の対応について会議でコンセンサスを得るようにします。
ここで重要なことはコンセンサスを得た後のフォローです。会議で決まったことが他の問題の噴出により忘れられてしまうことが往々にしてあります。
組織全体を総合的、俯瞰的に見ていける品質部門だけが一連の品質問題を終結させるまで活動していけます。経営者の代わりに最後の処置が終わる迄関係部門に対して決して手を緩めない存在でなければ品証部門の価値は無いと言っても過言ではありません。
 
11.2.3 品質保証体制にかかわる課題と対応
市場や技術などの外部環境や組織内部の状況の変化があって,品質保証体制の改善・改革が必要になると判断した場合,現状の体制について見直しすることを提案し、今後の活動に主導的な役割を果たすようにします。こうした活動が適時かつ適切に推進できるように,経営環境の変化への世間の平均的な動きを知るために,日ごろのベンチマークを怠らないことが必要です.また、複数の個別製品の歩留まりなどを横串し的に、時系列的に、国内外拠点別に把握することで品質保証体制の弱さが具体的に見えてきます。
品質保証体制の見直しは全社の組織構造の見直しに繋がりますので、慎重かつ大胆な事前の検討がことの成否を決めます。次のような事前の活動、行動が求められます。
(1) 現状体制の見直しが“なぜ必要なのか”をデータで説明できる。
(2) いくつかのオプションを検討しそれぞれのメリット、デメリットを上げる。
(3) 経営幹部からの意見を聴く。
 
(つづく)
 
(平林 良人)

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