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本日から、品質部門配属になりました 第26回 『設計・開発品質の保証:工程設計・生産準備』(その4)   (2020-11-16)

2020.11.16

5.工程管理計画
① QC工程表の作成

これまで説明してきた工程の計画は、当然、何らかの形で明確にしておく必要があります。そこでこのために生まれた日本発の手法が「QC工程表」(会社によって、いろいろな言い方をしています)です。
QC工程表には2つの目的があります。一つは「工程管理計画立案」の“道具”として,もう一つは“管理標準”として用いられています。前記のようにして、生産技術部門で、工順,工法,設備,補助材など工程設計と、現実の量産工程においてどのように管理していくかについて,多くの検討とその決定を効率的に行うための“道具”として使用され、そしてできあがった後は、製造部門で、現実の量産工程における“管理標準”として活用されます。
QC工程表には, 工程名、主要な使用設備・治具、管理項目(特性と特性に影響する要因・条件)、管理方法(使用する管理ツール・手段・試験機器、頻度やサンプリング方法など)、管理基準(上限・下限値、使用するできばえ見本や限度見本など)、使用する作業標準、記録文書、異常時の処置方法などが記載されます。
また、A社では、原則、すべての製品はこのQC工程表を作成するのですが、多品種でしかも多工程なので結構大変です。そこで、タイプ別の「標準QC工程図」を作成しておいて、これを利用することにより短期間で作ることができています。
できあがったA社のQC工程表は、品質保証部による月次の製造工程のQCパトロールや、年に1回行われる内部監査時には、製造部門では、この標準を基準にして確認を行います。あらゆる管理の基準となるQC工程表の基準を守ることは、標準遵守の出発点でもあるのです。
 
② 作業標準書の作成
作業標準書は、作成された時点での最も良いとされる作業に関する諸々の事項が文書化されるもので、まさに組織の知識が詰まったものと言えます。
作業標準書には、作業の目的、使用する材料・部品、作業の手順,方法、作業者,作業時期,場所、使用する設備,型・治工具,補助材料、品質基準とその計測方法、品質,安全上で注意すべき事項、異常処置の方法などが、通常は記載されます。
また、作業標準書には、大きくは「一般作業標準」と「個別作業標準」があります。前者は、A社の例で言えば、穴明加工とか、溶接とか、接着とか、半田付けとか、製造する製品が変わっても,共通的に行われる作業に関する標準です。後者は、製品の組立手順とか、配線手順など製品ごとに定められる標準とか、設備や試験機器の操作方法などの装置ごとに定められる標準です。
A社では、個別作業標準を生産技術部で作成し、一般作業標準を生産部門で作成しています。中山さんが技術部門から品質保証部門にきて、改めて感じたのは、この生産技術部で作成する作業標準の出来が、技術者によってばらついていることが気になりました。そこで、毎月の品質会議で、生産技術部門に、作業標準作成の標準を作るようにお願いをして、これが計画的に進められています。
 
③ 教育訓練の実施
生産技術部門で作成された作業標準書に基づいて教育訓練が行われるのですが、ここで大事なのは、まず頭で理解させ、そして実際に体験させることによって体で覚え込むことです。そして、理解させるときに「なぜその作業が必要なのか」ということを同時に教えることなのです。
 A社においても当然これが、量産前に、担当する生産技術者によって、関連する作業者に行われています。これも、上記と同じように、技術者によって教え方がだいぶちがいます。一番大事な、“なぜその作業が必要なのか(それをやらないとどうなってしまうのか)”ということを、丁寧に説明する技術者と、これをあまりやらない技術者のばらつきがあります。それは、経験の違いに起因しているのかも知れません。そこで、中山さんは、作業標準書の一番右欄に「作業の理由」欄を設けて、重要作業にはこれを記載するようにして、この内容を上司が確認して作業標準書を発行していくしくみを明確にしました。

 さて、中山さんは、こんな風にして、新しい品質保証部門の仕事を、1年間無我夢中で実施してきました。成果も上がってきました。すると、今度はまた新しい仕事のミッションが与えられました。これは次回以降のお話しとなります。

●工程設計段階での品質部門の役割発揮ポイント(2)
 第2回に、いったんまとめましたが、第3回、第4回の中山さんの仕事ぶりから、さらに次のような役割発揮のポイントが追加されました。今回も、当メルマガ第9回で説明している、“性格が異なる4つの役割”に分けて説明します。
①体系構築・管轄
「新たなしくみを作るとか、既存のしくみの運用状況を監視し、改善・強化する」対象として、以下の事項を特に留意します。
・「QC工程表」や「作業標準」の作成手順
②主担当ライン業務
「品質部門の仕事として積極的に実施する」対象として、以下の事項を特に留意します。
・QCパトロールなどを実施して「QC工程表」を最新化する
・QCストーリーの活用を働きかける
・統計手法が適切に使えるように教育を企画する
・工程能力を把握することが当たり前になるように働きかける
 以上(前々回の分も含めて)は、「工程設計・生産準備」の流れに沿って抽出した、品質部門の役割発揮のポイントでしたが、もう一つ大事な役割に以下のような「経営参謀的業務」があります。
 
④経営参謀的業務
以下の事項の計画(目標)に対する実績の把握と、その差異分析から、しくみや組織体制の改善提案をすることが重要です。
・製品設計完了後の量産開始までの立ち上がり開発期間、及び、開発工数
・初期流動段階における工程能力指数、不良の発生状況、製造原価など
・量産段階における工程能力指数、不良率、品質クレーム発生状況、設備の稼働状況など
 

 完(丸山昇)

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