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メルマガ⑨ 本日から、品質部門配属になりました

本日から、品質部門配属になりました 第23回 『設計・開発品質の保証:工程設計・生産準備』(その1)   (2020-10-26)

2020.10.26

今回から、設計・開発でも、より生産に近い段階の「工程設計・生産準備」の品質保証の話に移ります。ここでは、本メルマガのタイトル通りに新しく品質部門に配属になったA社に勤める中山さんに登場してもらって話を進めて参ります。
 
 1.はじめに
 
A社は、産業用の機械・設備及び周辺機器(ユニット)を設計・開発して製造するメーカーです。顧客は自動車、家電、医療機器など多様ですが、搬送関係の機器やユニットを得意としています。したがって、装置は、メカニカルなハード機器のみならず、電装品も組み込まれています。従業員は、約80名で、15名程度が設計開発の技術者(製品設計部門と生産技術部門が分かれてある)で、40名弱が製造要員で、15名が検査実務を含む、品質保証のスタッフです。製造の内容は、当社のコアとなる重要部品の加工と、組立を行って、顧客に引き渡します。

A社は、自社の標準装置もありますが、そのまま使用されることはほとんどなく、顧客の製造ラインの条件に合わせた設計が必ずあり、自社品のモデルチェンジも数年に一度は行っています。最近の顧客のラインの変化は早く、頻繁に設備の新規導入や入れ替えが行われるために、受注から引き渡しまでの納期の要求は短くなるばかりです。10数年前には、生産技術部門や生産部門が設計の早い段階から参加して工程設計が行えるように、「サイマルテニアス・エンジアリング」が導入されて、設計プロセスのリードタイムはだいぶ短縮しました。それでも最近は追いつかず、その影響か、納入した製品の初期トラブルは増加傾向にあります。

そこで経営層は、生産技術部門の「工程設計・生産準備」の品質保証体制を、基本的に見直すために、設計部門の技術者であった中山さんを品質保証部に配転して、その役割を与えました。今回のメルマガは、この中山さんの仕事ぶりを紹介して参ります。

中山さんは、まず最初に「工程設計・生産準備」の品質保証ってなんだろうかと考えました。そもそも、生産段階における品質管理活動の主眼は、製品設計部門で設定された設計品質(仕様、図面などのねらいの品質)に適合する品質の製品を経済的に生み出すことにあります。そうすると、生産技術部門は、まさにこれを実現するために、製品設計と生産との橋渡しをする、重要な役割を持っています。「工程設計・生産準備」の品質保証とは、生産技術部門がこの役割を確実に果たすための支援活動でもあろうと考えました。

 

2.A社発展の理由
 
A社は、昭和30年に設立した会社で、比較的長い社歴を持ちます。“生き字引”みたいな大先輩に生産技術部のことを聞いてみました。

A社の設立当初は、当社は「検査」をしっかりやって、バラツキのない品質で顧客から大いに信頼をされていたとのことでした。その成果もあって、次第に注文が増え、さらには、世の中が高度成長で沸騰してくると、検査ではちっとも品質向上ができず仕事も忙しくなるだけなので、「品質は工程で作りこめ」ということに考え方を転換して、品質も、生産性も上がっていきました。

この取り組みの最初は、製造工程を細かく分けて、その分けた工程の中での品質チェック項目(特性)を決めて、これをこまめに行って、おかしいとすぐに修正することで、工程中で品質を作り込んでいきました。しかしながら、そのうちに、特性のバラツキの原因となる条件をしっかりとつかまえて、これをコントロールすることの重要性に気づき、これを進める「生産技術部」が出来ました。

その後、さらに世の中のスピードアップに対応できるように、生産技術部門や生産部門が設計の早い時期に参加していく「サイマルテニアス・エンジニアリング」が導入されて、今日に至っている、ということでした。

最近、この経緯は、日本の産業界の成長の軌跡の縮図であることを聞きました。日本の企業は、まさにこのようにして成長遂げていったのです。

中山さんは、自社のたどったこの流れを良く理解し、「工程設計・生産準備」段階での品質保証をさらに強化するために、この「工程で品質を作り込む」ことの原点に戻って、見直しをすることにしました。

 
 

  1. 3.工程設計

 
「品質は工程で作りこめ」ということが重要であることは前に述べました。しかしながらそのすべてを製造に任せるのが得策ではないことは言うまでも無いことです。逆に言うと計画の立て方(すなわち工程設計)で品質が作り込まれると言っても過言ではないでしょう。

その工程設計の手順は以下の通りです。順番は、状況によって多少は前後することはありますが、おおむねこの順序で説明していきます。
 

  • ①目的製品の製造に必要な原材料、部品、ユニットなどを決める

製品設計で、材料の材質とグレードや、部品の形状や寸法、電装品の仕様などは、部品図、組み図、仕様書などで決まっていますが、これらの設計のアウトプット文書に載った情報は表面的なものであり、実際には業者によって、製造における使い勝手や、品質に微妙な違いもあります。

設計部門では、どうしても自身の設計しやすさの観点から業者を決定しがちなので、設計の早い段階で、購買部門や生産部門の意見を吸い上げ、品質保証部門では、品質評価の仕方をしっかりと決めて調達することが重要です。

調達に関する事項は、次のテーマである「量産品質の保証(その2)」をお読みになって下さい。
 

  • ②なすべき「作業とその順序」を決める

だいたいどんな製品でも、多かれ少なかれ過去に採用した作業方法を使います。過去の方法を利用している限りは、さほど大きな問題も発生しません。できるだけ、過去の作業方法を利用するのは定石ですが、一方では、進歩がありません。

A社でも、顧客からの厳しいコストダウン要求や、ライバルとの優位性確保や、環境に代表される社会的な要求により、新しい工法を積極的に開発することもしばしばです。そして、この時に往々にして、品質トラブルも発生しているのです。

A社では、「工程FMEA」を、適宜、実施しています。「工程FMEA」は、製品設計時の製品のFMEA(Failure Mode Effect Analysis)を工程に応用したもので、工程中で発生する不具合モードを想定して、これが発生したときの影響度を評価して、重要度の高い不具合に対して対策を打って不良発生の未然防止をする手法です。

結構大変なのでA社では「適宜」というのは、現実的には顧客から要求されたときに適用していました。中山さんは、これを、“新しい工法を採用したとき”は、設計の早い時期に(概略設計時)に、当該製品に関わる“ネック技術”を特定して、これを対象として必ず実施するように、実施の基準を明確にしました。

また、新製品のみならず、既存製品であっても,4M1E(Man人、Machine設備、Method方法、Material材料、Environment作業環境)に大きな変更があったときにも、必ず実施するようにしました。

 

ということで、「工程設計」の話、だいぶ長くなりそうなので、「設計・開発の品質保証:工程設計・生産準備」の第1回目は、まずは,ここまでです。次回は、「工程設計」の続きのお話をします。

 

(丸山 昇)

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