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メルマガ⑨ 本日から、品質部門配属になりました

本日から、品質部門配属になりました 第22回 『設計・開発品質の保証:設計・開発の全貌と製品設計』(その4)   (2020-10-19)

2020.10.19

第4回 “設計・開発品質の保証における品質部門の役割”について

 

過去3回にわたって“設計・開発品質の保証”に関するプロセス、機能などの主要事項について、また、その責任・主管部門は、多くの場合は、製品事業部門であるが、品質部門も品質保証機能等の側面、内容の本質を十分理解していることが重要であることなど考察してきました。

 

最後となる4回目では、今まで考察した内容の整理を含め、“設計・開発品質の保証に対する品質部門の役割・関わり”において、重要であり、かつ代表的なものと思われる機能について考察します。

すなわち、“設計・開発プロセス(システム)の基盤・要素の構築、維持管理、改善を推進させる機能”及び“主要設計・開発プロセスのチェック、ゲート機能”であり、製品事業部門を含む関連部門が運用面で参加のもと品質部門が主導的に機能することが重要となります。これらは、本メルマガにおける「品質部門の役割」で既に議論されている“体系構築・管轄業務”“事務局的ライン業務”の中で主に展開されるものになるでしょう。

 

■設計・開発プロセス(システム)の基盤要素の構築、維持管理、改善を推進させる機能

“設計・開発の機能”が確実に実施されるためには、活動の基礎となる設計・開発プロセス(システム)の基盤・要素の構築、維持管理・改善を、関連部門の協力はもちろんですが、全社的な立場で、主導的に推進することが、品質部門の重要な役割となります。

ここで着目すべき“設計・開発プロセス・システム”の管理の要素、基盤となるものは“設計・開発”に限定されたものではなく、本来、管理の側面として共通的な面はありますが、設計・開発に焦点を当てて代表的なものにつき考察してみます。

 

>標準化の促進

設計・開発を間違いなく、組織的に効率よく行うためには“既に評価され、良いと分かっている技術、物品、方法等”の採用を可能にする標準化が不可欠です。

設計・開発には創造性、創意工夫が必要ですが、標準があれば従来の積み上げられた技術、方法の再活用、検討対象の絞り込みなどが可能となり、設計・開発のスピードを速くし、また誤りも減らすことが期待できます。更に、製品等の統一化、及び単純化などにも寄与し品質の安定にもつながります。

1990年台当初、ISOは創造性、創意工夫を阻害するので“設計・開発に対しては否定的な意見”があったことを思い出しますが、遥か昔の話で、むしろなくてはならないものとなっています。

標準化の対象としては設計・開発のやり方、手法、手順などの方法に関するものと、材料、部品、ユニットなどの構成要素となる部品類などが代表的なものでしょう。これらは、“技術標準、設計・開発基準/手順、設計・開発マニュアル、設計・開発事例集、標準部品リストなどとして文書化されますが、当然ですが陳腐化しない最新版管理がキーとなります。事務局、取りまとめ役としての品質部門は重要です。

 

>計画・進捗管理

何事においても“計画と進捗管理”は基本です。設計・開発業務の進捗管理に当たっては、特に不確定の要素も多いため、計画と次へのアクションに繋げるための状況把握が重要です。計画においては設計・開発の各ステップの作業項目、役割分担、スケジュールの明確化、更に問題が発生すると思われる作業の予測、及び事前の対応策の検討も大切です。特に、進捗把握に当たってのキーは、作業完了を含む達成状況が把握できる評価尺度を工夫することです。

良く使われる進捗管理の手法としては、プロジェクトの計画・内容とスケジューリングを見える化するPERT図(Program Evaluation and Review Technique)、PDPC法(Process Decision Program Chart;過程決定計画図)、管理グラフ(計画と実績のプロット)、日程表、業務分担表、ガントチャートなどが利用できます。

 

>変更管理

新しいものを作り出す設計・開発では、当然変更はつきものです。企画内容の変更、デザインレビューの指摘に基づく改良、試作試験・出荷判定評価からのフィードバックなど様々です。また、変更の原因も意図していなかったいわゆる設計・開発のミスなどに加えて、意図した品質改善、コストダウンの要請に基づくものなどがあります。

設計変更は、それが開発する製品・サービスの完成度を上げるためには必要な工程であると認識すると共に、再発防止の観点から、積極的に事例の収集・分析を行い、設計標準類の見直しなど、源流である設計・開発プロセスの改善につなげる努力が大切であり、この観点から改善提案を含め品質部門の参画、寄与が重要です。

なお、設計変更を確実に実施するためは下記のような観点を配慮し、変更手続きを定めることがポイントです。

・変更の実施の徹底:体系的な実施により漏れを防ぐこと(内容、対象範囲)

・設計変更によって生じうる様々な2次障害:トラブルを他に波及させないこと(機能、側面)

・他部門に渡るケースが多く、変更指示内容の分かり易さなど情報伝達への配慮

また、「変更管理」に非常に近い管理として「構成管理:Configuration Management」があります。製品がどのような構成要素(部品、材料、ユニット、プログラム、モジュールなど)で成り立っているかを明確にし、特にその構成要素の変化(版数)を管理することにより、製品そのものの変化の管理に結びつけるものです。

製品は構成要素から成り立っており、構成要素がどの版数なのかが分からなければ、製造、保守などにおいても品質保証が出来ません。

 

>人材・能力の開発・育成

能力のある人材確保、育成は常に組織の課題ですが、顧客の言わば概念的な抽象的なものを含む要求品質を、具体的なものとして創造し技術的仕様へ具現化する設計・開発は、特に「ひと」の能力に頼るところが多い分野です。市場・顧客に受け入れられる製品・サービスを提供し続けられるように、設計・開発に携わる管理者・技術者の能力を計画的・継続的に開発・育成することは組織の永遠の課題でしょう。

設計・開発に従事する管理者・技術者に必要な能力は、例えば、分野毎の専門的な各種技術能力、マネジメント能力、いわゆる人間力(論理性、実行力、問題解決力、コミュニケーション力など)が考えられます。組織の置かれている状況を分析し、“必要とされる力量の明確化”に基づき、管理者、技術者、更にはリーダーとなる人材をどう育てるか、どのような育成プログラムを用意すればよいかなど、主管部門である技術管理部門や人事・労務部門と一体化して取り組む必要があるでしょう。

特に、最近は組織競争が激しい中、人員削減等も昔に比べて顕著であり、品質部門は、言わば間接部門的な見方がされていますが、“顧客価値に基づく品質経営”を考えた時、品質管理等に精通した人材の育成、確保は戦略的にも重要なものとなります。

 

■主要設計・開発プロセスのチェック、ゲート機能

製品設計・開発、工程開発・設計における試験・検査・レビューに基づく品質保証、及びユーザー視点に基づいた品質評価などは、各設計・開発プロセスのアウトプットが適切であること、有効であることをチェックし、不具合をリジェクトするゲート機能として大変重要です。

チェック対象とすべき各プロセスの特質を重視することはもちろんですが、基本は、市場品質の視点です。

製品・サービスが顧客において使用・利用される際の品質であり、製品・サービスの機能・性能、使い易さ、保守性、トラブル事象、トラブル対応、運用支援、ライフサイクルコストなど、顧客が当該製品・サービスに期待した価値が得られたかという多面的な側面、かつ全社的な視点から確認することが、特に品質部門にとって重要です。

特に、設計・開発プロセスにおけるチェック機能とは、各アウトプットの適切さに対するゲート機能であり、着目すべき対象は2つあります。一つ目は“要求性能・仕様を満たしたアウトプットとなっているか”の側面、二つ目は“決められたプロセスが確実に順守されているかの側面”です。品質部門は、前者の技術的な領域に対しては限界があるかもしれませんが、後者の確実なプロセスの実施に関しては的確な意見・提言等が求められます。また、このチェック・ゲート機能のプロセスを効果的に構築、準備し、それに基づき確実に有効に運用するかのキーは、品質部門が持っていると言えるでしょう。

品質部門が主導し参画すべき代表的なゲート機能としては下記があげられます。

・品質保証システムの監査の主導

・DR(デザインレビュー)等への参画・主導

・出荷判定会議への参画・主導

・各種品質会議等への参画・主導に基づく重要品質問題等の検出、管理

(ハードウエア/ソフトウエア品質など)

 

なお、品質部門の役割としては、組織体制によりますが、他にも“設計品質に関する支援、調整業務(クレーム・品質問題に対するサポート、進捗管理、改善指導など)”、“経営参謀業務の観点から、各種データの収集・現状分析に基づく品質保証体系、品質システムの改善提言等を行うこと”も重要となります。

 

 

設計・開発品質の保証体制、役割分担は、組織構造、組織の大きさなどにより様々です。今までの経験からも、製品事業部門と品質部門間の関係は各論になれば明確になりにくい面が見られます。しかしながら、各プロセスにおける責任・権限の付与に基づくこの両者の関係・役割の明確化、及び独立したゲート機能が働く体制が重要となるでしょう。

 

また、製品実現の上流である設計・開発品質は、製造、試験、保守、顧客使用の下流プロセスの品質に多大な影響、被害を及ぼすものものであり、設計・開発プロセスの源流管理としての重要性をしっかりと再認識したいものです。

 

(小原 愼一郎)

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