本日から、品質部門配属になりました 第6回 『品質保証体系』(その2) (2020-06-22
2020.06.22
第2話、品質保証体系についての第2回目、早速始めます.
3.品質保証体系の構築
先週の「2.品質保証体系とは」で示した品質保証体系の説明のキーポイントは,“市場調査~廃棄までの一連の組織的活動”と,“組織の各部門が何をやるべきか”の二つです.前者は,製品・サービスの実現に必要な経営機能といえ,後者はその経営機能の運営を行う組織体制であると言えます.したがいまして,品質保証体系を構築することとは,
①製品・サービス品質の確実な保証のために必要な経営機能(業務)の列挙
②品質保証に必要な経営機能(業務)の運営を行う組織体制の明確化
③(上記①と②を踏まえて)品質保証体系図の作成
の3つを行うことになります.以下でそれぞれ詳細に説明します.
①製品・サービス品質の確実な保証のために必要な経営機能(業務)の列挙
品質保証体系の構築には,まず製品・サービス品質を確実に保証するためにどのような経営機能が必要であるかを明らかにしなければなりません.
自動車業界を例に挙げれば,マーケティング→研究開発→商品企画→設計→調達→製造→販売・サービスなどが必要となるでしょう.建設業であれば,企画・営業→設計→見積・契約→施工準備→施工→引き渡し→アフターサービス等を列挙できます.また,ソフトフェア分野における古典的なウォーターフォール型開発では,要求分析→基本設計→機能設計→詳細設計→コーディング→検査(単体,結合,システム)→導入→保守サービスがありえるでしょう.
必要な経営機能を列挙することに留まらず,例えば企画があって初めて設計ができ,設計ができて調達及び製造が開始できるというように,各経営機能のインプットとアウトプットを踏まえて,各経営機能の相互関係,順序も明確にしてください.
最後に,製品・サービスの品質を確実に保証するために各経営機能でどのようなアウトプット(成果)を出すべきか,抑えるべき点をも検討したほうが良いでしょう.例えば,自動車の「調達」であれば,品質の良い部品をできる限り安く納期通りに調達するということが求められているのですが,近年のグローバルサプライチェーンの進展に伴い,世界中のあらゆるリスク(政治的リスクや自然災害リスクなど)に晒されているため,いかにサプライチェーンを断絶させずにこれらリスクに対する頑健性,継続性を高められるかが重要となる場合もあるように思います.
②品質保証に必要な経営機能(業務)の運営を行う組織体制の明確化
次に行うべきことは,上記①で列挙した経営機能をどのような組織体制で行うのかについて決めることです.ここでいう組織体制の明確化とは,
・指揮命令系統や役割分担などの組織構造
・組織運営に必要な経営資源
の2つを明確にすることを指します.新たに起業したということでない限りは,既に何らかの組織構造があり,保有している経営資源があるはずですから,①で列挙した経営機能を,既存の組織構造のどの部門が担当すべきかについてマッピングしていくことになります.ただ,既存の組織構造や各部門が保有する経営資源をそのまま当てはめても,当該経営機能を果たすのに十分であるとは限らないため,組織構造や経営資源の組み換えが必要となる場合も当然ありえます.
例えば,設計部,製造部というように,経営機能の冠を付けた部門名としている組織が少なくないため,単純に設計機能は設計部が担当して・・・となりがちです.しかしながら,設計機能の主要アウトプットは設計図(製図)ですが,まずこれが商品コンセプトに合致していないといけませんので,その意味で商品企画部の関与が必須です.そればかりか,設計機能の下流である調達,製造機能から見ると,調達しやすい部品を用いていること,安定製造しやすい設計構造であることも大事であることから,購買部,製造部,さらに生技部も関与も必要となります.とすれば,設計機能に関与すべき部は,設計部以外に商品企画部,調達部,製造部,生技部となります.また,これだけの部がそれぞれの意見をぶつけ合いますので,それを束ねて調整する個別製品・サービスのプロジェクト開発責任者が必要となりますから,その任務を担う人として別の部(例えば,品質保証部や事業開発・統括部)の方を置いて,指揮命令系統を円滑にすることもあります.
このように,既存の組織構造や経営資源に捕らわれ過ぎることなく,経営機能とそこで求められるアウトプットに照らして,確実にその役割を果たしてくれる組織体制を明確にすることが重要なのです.
これにより,各部門で果たすべき業務分掌が明確になり,各部門の役割分担が定まるため,どの部門とどの部門がどの段階の経営機能で連携及び,協働すべきかも容易にわかるようになります.
次に、品質保証体系図の説明に入りますが、少々長くなりますので、今週はここまでとさせていただきます.
(金子雅明)