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本日から、品質部門配属になりました 第3回 『品質部門の役割』(その2)   (2020-06-01)

2020.06.01

■品質を保証するとは何をすることか
 
品質マネジメントにおいて,「品質保証」の名のもとに何をするか考えてみます.そのためには,「保証する」とは何をすることか明らかにする必要がありそうです.私たちは,ときに「業務の品質保証」とか,「仕事の質を保証する」なんてことを言いますが,それが何を意味しているのか,少しはマジに考察してみようということです.
 
「品質を保証する」とは,「品質が期待通りであることを請け合い,顧客に信頼感を与える」ことだと思います.ISO 9000の世界では,信頼感を与えるために,仕様通りの製品を提供できる能力があることを「実証」することに力点を置きます.そして,手順の存在の証拠としての手順書,実施した証拠としての記録など文書類が重要視されます.自分がまともであることを証明・説明することが基本です.
 
日本で品質保証という用語が広まる契機になった,誠実な品質保証のために何をすべきかという点ではどうでしょうか.信頼感を与えるためには,はじめから品質の良い製品・サービスを提供できるようにすることと,もし万一不具合があった場合に適切な処置をとることの2つからなると考えられます.
 
はじめから品質の良い製品・サービスを提供できるようにするには,そのためのマネジメントシステム(QMS)を確立する,そのシステムが妥当であることを確認する,システムの計画どおりに実行する,実現された製品・サービスを確認するという4つの活動が必要でしょう.何かあった場合の対応は,応急対策と再発防止策に分かれます.これらを以下にまとめておきます.
 
品質を保証するための活動
1.信頼感を与えることができる製品・サービスを顧客に提供するための体系的活動
 1.1 顧客が満足する品質を達成するためのシステムの確立
 1.2 システムの意図通りに運用したときに顧客が満足する品質を達成できることの確認
 1.3 日常の業務がシステムの意図通りに実施されていることの確認
 1.4 日常的に産出される製品・サービスが所定の品質水準に達していることの確認
2.供給者に責任のあるトラブルが生じた場合の補償と再発防止のための体系的活動
 2.1 応急対策としてのクレーム処理,アフターサービス,製造物責任補償
 2.2 再発防止策としての品質解析と製品・サービス提供システムへのフィードバック
 
2.は,「応急処置・影響拡大防止」と「再発防止・未然防止」の2つの対応のことを言っています.それでは,はじめから品質の良い製品を提供する仕組みについての1-1~1-4は何を言っているのでしょうか.
 
1.1は,要するに,製品・サービスを提供するシステム(プロセス+リソース),すなわちQMSを構築せよと言っています.
 
1.2は,そのシステムによってまともな製品・サービスが提供できることを確認しておくようにと言っています.しかし,これはそれほど易しいことではありません.論理的にこのシステムでよいことを言うか,過去の経験から致命的な問題が起きていないことを言うか,システムとして良いとされているモデルを適用していることを言うか,あるいはそれこそISO 9001に適合していると言うか,いろいろ考えられます.
 
1.3は,決められた通りに実施せよと言っています.そして,本当にルール通り実施していることを確認しなければなりません.ここにISO 9001の認証の使い道があるかもしれません.ISO 9001は,結局は「決める,実施する,確認する」です.決めた内容が適切なら,やるべきことを実施する仕組みの基盤として使えます.やるべきことを実施するのは,簡単に見えて実は難しいですから,その意味でISO 9001は有用と言えます.
 
1.4は,システムから生み出された製品・サービスそのものを確認せよと言っています.正しいはずの仕組み通りに実施して生み出されたものが期待通りかどうか,現物で確認するということです.いわゆる検査がそれに当たるでしょう.
 
品質保証には,こうした組織を挙げた体系的な活動が必要だということです.組織には,普通は,どの部門がいつ何をするかの概略フロー図のような感じの品質保証体系図があります.通常の工業製品であれば,商品企画から,開発・設計,試作,試験,生産準備,購買,生産,販売,サービス,市場評価などに至る一貫したシステムの大要を図示したものがあると思います.この図には,各ステップで実施すべき業務を各部門に割り振ったフロー図として示されるのが普通です.関連規定や主要な標準の種類を示してあるものも多く,提供する製品・サービスが組織的にどのように品質保証されるのか,その全貌を可視化するものとして有効です.
 
■品質保証業務の全貌
 
上述したような品質保証をしていくために,どのような業務が必要になるでしょうか.いろいろな考え方があるとは思いますが,ここでは次のような枠組みで考察をすることにいたします.
 
A.品質保証体制:品質保証体制の構築・維持・改善
B.4つの品質保証:品質の4つの側面の保証
  B1.企画品質の保証:顧客ニーズ → 製品・サービス企画
  B2.設計・開発品質の保証:企画 → 製品・サービス仕様(+プロセス仕様)
  B3.量産品質の保証:製品・サービス仕様 → 製品・サービス
  B4.市場品質の保証:製品・サービスの使用・利用時
C.品質保証の全組織的活動:全組織的,部門横断的な活動
D.品質経営参謀:品質経営の推進における参謀的役割
 
A.は,品質保証の体制を構築し,維持し,改善していくという業務です.ここで「体制」というのは2つのことを意味しています.第一は,前項の最後のパラグラフで述べた品質保証体系のような,品質保証のためのシステム,あるいは,いわゆるQMSです.すなわち,品質を達成するために必要な品質機能要素と,それら要素間の関係を意味しています.第二は,そのシステムの運用をしていく組織とその構造を意味しています.QMSの諸機能を,どの組織が担当し,どのように運用していくか,妥当な組織構造,十分な経営リソースがあるかが問題となります.
 
B.は,品質の良い製品・サービスを提供するために,品質の4つの側面に注目して,その品質を保証する活動が必要になるという考え方,すなわち,顧客に提供され,顧客が使用・利用する製品・サービスが,顧客のニーズに適合することを保証するためには,企画,設計・開発,量産,市場の4つの側面の品質が良くなければならないという考え方を基礎とするものです.
 
企画品質とは,顧客ニーズが製品・サービスの企画にどのくらい反映されているかどうかに関する品質レベルです.製品・サービス企画で明確にされる製品・サービスのコンセプトが,顧客のニーズ・期待に応えるものになっているかどうかに関心があります.
 
設計・開発品質とは,その製品・サービス企画,あるいは製品・サービスのコンセプトが,どのくらいその製品・サービスの実現仕様に反映されているかを問題にしています.設計とは「ニーズ・期待の実現手段の指定」と言うことができますので,まさにこの意味での「設計品質」を意味しています.なお,この設計・開発には,製品・サービスそのものの特性の指定(製品・サービス仕様)のみならず,それらの製品・サービスを現実に製造し,サービス提供するプロセスの仕様を決定することも含めています.
 
量産品質とは,それら製品・サービス仕様通りの製品・サービスが実現されたかどうかを問題にしています.モノづくりで言えば,仕様通りの製品が製造できたかに関心があります.いわゆる「製造品質」とか「適合品質」と言われるものです.製造品質に非の打ちどころがなくても,設計品質が悪かったり,企画品質に問題があると,顧客の満足は得られず,従ってあまり売れず,“不良”の山を作ることになります.それにもかかわらず,品質保証,品質管理と称して,この量産段階の品質だけを追いかけている組織があります.これが基本であることは間違いありませんが,そのような活動だけを品質保証と言ってほしくない,というのが私たちの正直な気持ちです.
 
市場品質とは,製品・サービスが顧客に提供され,それを使用・利用する際の品質という意味です.製品・サービスの機能・性能,使いやすさ,保守性,トラブル事象,トラブル対応,運用支援,ライフサイクルコストなど,まさに顧客が当該の製品・サービスに期待した価値が得られたかどうかという側面に関心があります.
 
C.は,B.で示したような製品・サービス提供の主プロセス(バリューチェーン)での品質保証に加え,全組織的,部門横断的な活動にも関心を寄せるものです.品質会議,品質監査(製品監査+システム監査),ISO 9001認証維持,重要品質問題対応,品質情報システム,品質報告書(品質白書),組織的品質改善活動などがその例です.
 
D.は,経営レベルの参謀機能を意味しています.品質を「製品・サービスを通して顧客に提供した価値に対する顧客の評価」ととらえると,経営における最重要課題となりますので,品質経営,品質中心経営の推進における参謀としての経営機能を担うことも考えられるということです.
 
品質マネジメントの目的・中心・神髄としての「品質保証」に関わる業務は.ここまで拡大して考えることができるということです.これをすべて実施すべきとは申しません.経営環境に応じた身の丈にあった品質保証の“範囲”を定める基礎にしていただければと思います.
 
次週は,第1話のその3として,品質部門の担当業務について考えてみることにいたします.

(飯塚悦功)

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