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TQM/品質管理 こんな誤解をしていませんか? 第51回『品質保証部門の主な業務は要するに 「検査」と「クレーム処理」ですよね?』(その1)  (2020-04-27)

2020.04.27

 
今回と次回(第52回)の執筆を担当する松本隆です. 
 
現在,QMS/EMSの審査,並びにQMS,TQM等に関するコンサルの傍ら,ビジネススクールで(標準化や品質管理をビジネスに活かすための)「標準化経営戦略」や「問題解決図解演習」という科目を,高専で「品質管理」という科目を担当しています. 
これから次回を含めて2回にわたり,『品質保証部門の主な業務は要するに「検査」と「クレーム処理」ですよね?』という考え方(誤解)に関連して,「品質保証部門の役割」を考えてみたいと思います. 
 
私(筆者)は,非鉄金属加工メーカーに勤務し,工場での品質保証部門の仕事を長年経験し,「検査」そして「クレーム処理」の実務で苦労しました.その後,全社の横断部門で品質管理推進の仕事も担当しました.それらの実務経験等を踏まえて,以下お話しを展開します. 
 
1.「検査」と「クレーム処理」  
 
まず,『「検査」と「クレーム処理」は,品質保証部門の重要な業務です.』という考え方については,だれも否定できないでしょう. 
それでは,「検査」をきちんとやって,不良品は顧客には出さないで,顧客に迷惑をかけることはなく,もし万一「検査」ミス等で不良品が顧客に出ても,直ぐに顧客に謝って代品に取り換える等の「クレーム処理」を的確・迅速に行って,顧客の評判が良い会社を考えて見ましょう. 
 
「検査」での不良率が高い場合,不良ロスコストが莫大となり収益を圧迫しかねません. 
ですから,その検査不良を減らすために不良の原因と対策を考え実施する必要があります. 
また,「検査」で、不良品は除去して「良品」のみを顧客に提供できていても、製品サービスそのものが,顧客のニーズから乖離しているかも知れません.市場での顧客の使われ方,本当の意味での顧客ニーズ・要望に適した製品になっているかを調べる必要もあります. 
 
「クレーム処理」を誠実,丁寧,的確に対応していても,クレームが絶えないとすれば,会社として品質保証上の問題が何かあるはずです. 
そのクレームの発生状況を集計・分析して,クレームの傾向から,品質保証体系のどこに問題があるかを探り,再発防止策を検討・実施する必要があります. 
 
このように,「検査」と「クレーム処理」は「品質保証の基本」で大切ですが,それだけでは,顧客の満足する製品を継続的に提供できる保証はないのです. 
以下,このような観点で基本に戻って,「品質保証」の意味合いから考えて見ましょう. 
 
2.「品質保証」とは  
 
面倒かも知れませんがまず,「急がば回れ」で,この「品質保証」という用語の意味(定義)を考えてみましょう. 
 
“品質保証”(Quality Assurance,QA)の国際的な定義は,「品質要求事項が満たされるという確信を与えることに焦点を合わせた品質マネジメントの一部」(JIS Q 9000:2015 3.3.6 )となっており,「仕様通りの製品サービスの提供を請け負うこと」だと言えるでしょう.要は,国際的な定義では,“品質確約”といった狭い意味合いが強調されています. 
 
さらに,JIS Q 9000にある,以下の記述からも,“品質保証”は,広い意味の品質管理(品質マネジメント:quality management)のほんの一部となっています. 
「品質マネジメント:quality managementには,品質方針及び品質目標の設定,並びに品質計画,品質保証,品質管理及び品質改善を通じてこれらの品質目標を達成するためのプロセスが含まれ得る.」(以上,JIS Q 9000:2015の3.3.4の「注記」から転記). 
 
上記の定義を式で示すと以下のようになります. 
 
広義の品質管理(品質マネジメント:quality management) 
=品質方針及び品質目標の設定(establishing quality policies and quality objectives  
+品質計画(quality planning) 
+品質保証(quality assurance ) 
+品質管理(quality control) 
+品質改善(quality improvement) 
 
一方,日本流の考え方(定義)では,「顧客・社会のニーズを満たすことを確実にし,確認し,実証するために,組織が行う体系的な活動」(日本品質管理学会『品質管理用語』JSQC-Std 00—001:2011)となっています.この定義には,以下の4つの「注記」が付いています. 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――― 
注記 1 
“確実にする”は,顧客・社会のニーズを把握し,それに合った製品・サービスを企画・設計し,これを提供できるプロセスを確立する活動を指す. 
注記 2 
“確認する”は,顧客・社会のニーズが満たされているかどうかを継続的に評価・把握し,満 たされていない場合には迅速な応急対策及び/又は再発防止対策を取る活動を指す. 
注記 3 
“実証する”は,どのようなニーズを満たすのかを顧客・社会との約束として明文化し,それ が守られていることを証拠で示し,信頼感・安心感を与える活動を指す. 
注記 4 
上記の定義の目的の部分「顧客・社会のニーズを満たすこと」を品質保証という場合がある. 
―――――――――――――――――――――――――――――――――― 
 
“保証”とは「大丈夫だ,確かだとうけあうこと」(広辞苑)ですが,日本流の品質保証の方は,「顧客だけでなく社会を含めたニーズに対する」「組織を挙げた」活動としており,概念が広くなっています. 
一方,国際的な定義では,“品質要求事項”について“確信を与える”活動だけが強調されており,QAの和訳は“品質保証”ではなく,“品質確約”とするのがよいとまで言われています. 
いずれにせよ,日本的な意味での「品質保証」とは,「お客様が安心して使っていただけるような製品・サービスを提供するためのすべての活動」を意味し,それは「品質管理の目的」であり,「品質管理の中心」とも言えるでしょう. 
 
「QC的ものの見方・考え方」の一つに挙げられる「品質は工程で作りこめ」の意味の「検査で不良品の出荷・受け入れを減少させるのではなく,工程(プロセス)を解析・管理・改善して,品質を保証して行こうという考え方」が,ここで大切になります. 
 
ちなみに,40数年前に筆者(松本)が会社(非鉄金属加工メーカー)に入社した時には,製造部の中に「検査課」という名称の部門はありましたが,「品質保証」という名称の部門はありませんでした.それからかなり経って,重大品質問題への対応として初めて「品質保証」という名の部門(課又は部)が,全社一斉に誕生しました. 
 
3.品質保証活動の要素 
 
■“保証”と“補償”  
品質保証の“保証”と“補償”とは音(おん,読み)が同じですが,その意味は異なります. 
“補償 compensation”とは,「欠陥による被害を償(つぐな)うこと」であり,問題発生後の金銭的な事後処理です.それに対して“保証”は,お客様に「大丈夫だと請け合う」ことで,問題発生の前に重点が置かれていると言えます.
製造物責任法(PL法,1995年施行)は,“保証”ではなく“補償”に関する法律です. 
 
以上のように “保証”と“補償”とは本来は意味が異なりますが,家庭電化・情報通信製品等についている“保証書”には,「メーカーの責任による故障の場合には,無償で取り替えます.」というようなことが書かれている場合が多く,“保証”だけでなく“補償”の意味も含んでいると考えられます. 
 
「品質保証活動の要素」を分解して考えると,以下の(1)~(2)のようになります. 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――― 
(1)“はじめから”品質の良い製品・サービスを生み出せるようにすること 
そのために,以下の1)~4)を実施します. 
1)手順を確立する(顧客満足が得られる品質達成の手順の確立) 
2)手順が妥当であることを確認する(手順通りの実施で顧客満足の品質達成かの確認) 
3)手順通りに実行する(手順通りの実施,実施されてない場合のフィードバック) 
4)製品・サービスを確認する(製品・サービスの品質水準の確認,未達の場合の処理) 
 
(2)“もし不具合があったら”,適切な処置をとること 
そのために,以下の1)~2)を実施します. 
1)応急対策(クレーム処理,アフターサービス,製造物責任補償)を実施する 
2)再発防止策(品質解析,前工程へのフィードバック)を実施する 
―――――――――――――――――――――――――――――――――― 
 
上記(1)の「4)製品・サービスを確認する」ことに「検査」が含まれており, 
上記(2)の「1)応急対策」の一つが「クレーム処理」です. 
 
確かに,その意味で,品質保証部門の重要な業務に「検査」と「クレーム処理」があるのは間違いありません. 
 
さきほど述べたように,「品質保証」とは,「初めから良い製品・サービスを提供すること」と,「もし不良が市場・顧客に渡ってしまったら的確な対応をする」という2つの活動からなっています. 
それらの活動の全体が品質保証活動で,検査やクレーム処理などの業務に加えて,品質保証体系の管轄・監視,支援・調整・推進等も担っています.これらの活動を担うのが品質保証部門ですが,その役割については次回詳しく考えて見ましょう. 
 
 
(松本 隆)

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