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TQM/品質管理 こんな誤解をしていませんか? 第46回『QCサークルなどの小集団改善活動は自主的な活動だから、方針管理とつながるテーマに取り組むのはまずいですよね 』(その1)  (2020-3-23)

2020.03.23

 
今回と次回(第46回)執筆を担当する松本 隆です。 
現在、ISO 9001/14001の審査、並びにISO 9001、TQM等に関するコンサルの傍ら、ビジネススクールで(標準化や品質管理をビジネスに活かすための)「標準化経営戦略」や「問題解決図解演習」という科目を、高専で「品質管理」という科目を担当しています。 
 
これから、次回を含めて2回にわたり、小集団活動と方針管理との関係を考えてみたいと思います。 
私(筆者)は、第28回(2019-11-12配信済)と第29回(2019-11-19配信済)の2回にわたり、「TQM(総合的品質管理)と方針管理や小集団活動(QCサークル活動)の関係」を書きましたので、今回はその続編ということになります。 
 
なお、筆者は、勤務していた会社の工場の製造部門のスタッフであったころから、全社の品質管理推進部門にいた時まで、一貫して小集団活動(QCサークル活動)とは縁が深かった(支援活動が長かった)ので、その経験も踏まえて、書かせていただきます。 
 
1.「QCサークル」とは 
 
■「QCサークル活動の基本」では? 
 
まず「QCサークル」とは一体どんなものでしょうか? 
「QCサークル活動の基本」(QCサークル本部、1996年編)には次のように書かれています。 
 
****************************** 
1)QCサークルとは、 
第一線の職場で働く人々が 
継続的に 
製品・サービス・仕事などの質の管理・改善を行う 
小グループである。 
 
2)この小グループは、 
運営を自主的に行い 
QCの考え方・手法などを活用し 
創造性を発揮し自己啓発・相互啓発をはかり 
活動を進める。 
 
3)この活動は、 
QCサークルメンバーの能力向上・自己実現 
明るく活力に満ちた生きがいのある職場づくり 
お客様満足の向上および社会への貢献 
をめざす。 
 
4)経営者・管理者は、 
この活動を企業の体質改善・発展に寄与させるために 
人材育成・職場活性化の重要な活動として位置づけ 
自らTQMなどの全社的活動を実践するとともに 
人間性を尊重し全員参加をめざした指導・支援 
を行う。 
 
****************************** 
(上記の1)~4)の番号は、原文にはなく、筆者が付したものです。) 
 
確かに、上記の「基本」の2)項のトップに「運営を自主的に行い」とありますね。 
そこで、QCサークルとして「運営を自主的」に行うから、トップダウンである「方針管理」とつながるテーマに取り組むのはまずいと考える人が多いようです。 
この考え方に沿って、サークル(職場)の周りの身近な困りごとの解決を図るのが、QCサークルの基本機能だと考えることもあります。 
 
しかし、上記の「基本」の2)項には、 
 
QCの考え方・手法などを活用し 
創造性を発揮し自己啓発・相互啓発をはかり 
 
とあります。 
「サークルの周りの身近な困りごとの解決」だけやっていても、上記の「基本」の2)項にある「QCの考え方・手法の活用」や「創造性を発揮→自己啓発・相互啓発」をすることにはならないと考えます。 
 
■日本品質管理学会「小集団改善活動の指針」では? 
 
2015年に日本品質管理学会から発行された「小集団改善活動の指針」(JSQC-Std31-001:2015 )では、「小集団改善活動」の形態を、(1)職場型-横断型と(2)継続型-時限型という2つの軸で分類し、「QCサークル活動」は、「職場型・継続型」のものだとしています。そして、「横断型・時限型」や「職場型・時限型」の小集団活動を「チーム改善活動」として、「QCサークル活動」とは区別しているようです。 
この「指針」では、このような分類は別として、「QCサークル活動」や「チーム改善活動」を含む「小集団改善活動」には、次の①~③の3つの基本があるとされています。 
 
①小集団で問題・課題に取り組む 
②QC的考え方・手順・手法で改善する 
③能力の向上と組織の活性化を図る   
 
この①~③の基本からも、QCサークルは、職場の身近なテーマ(困りごと)だけではなく、方針管理とつながるテーマに取り組む必然性があると考えられます。 
 
2.全社方針と直結した「テーマ型QCサークル活動」の例 
 
いろいろ、「小集団活動」に関する考え方を書いてきましたが、筆者自身が以前に経験した、具体的に方針管理とつながるテーマに取り組んだ「小集団活動」の例を紹介します。 
 
当時、筆者が勤務していたのは、多数の事業部に全国9か所の生産拠点(事業所)を擁する非鉄金属加工のメーカーですが、その製造部門全てで、「テーマ型QCサークル活動」という名称で、「コスト競争力に貢献する」全社運動として、取り組みました。 
 
■「テーマ型QCサークル活動」の基本方針 
 
まず、その「基本方針」は、以下の通りでした。 
 
・「ロスの削減」(歩留の改善)を全社共通の目標とし、部門主導による「テーマ型QCサークル活動」を全社の製造部門のQCサークル一斉に導入する。 
・これにより、サークルメンバー一人一人の力を結集して、スピードを上げた改善に挑戦し、会社の業績に貢献する。 
・その活動を通じて、サークルメンバーの能力の発揮と生きがいのある職場を実現する。  
 
■「テーマ型QCサークル活動」の考え方・狙い 
 
この「テーマ型QCサークル活動」の導入は、会社トップの指示でしたが、その考え方・狙いは、以下の通りでした。
 
1)「テーマ型」サークル活動とは 
従来のQCサークル活動が、「まず職場・作業組や設備・ラインがあり、その中にサークルを編成し、そのサークルの身近な問題から解決する」という形とすれば、この「テーマ型」は、「まず、テーマありき」である。 
その部門で解決しなければならない問題(課題)をテーマとして取り上げ、そのテーマの解決の為にサークルを編成しようとするものである。 
 
2)「テーマ型QCサークル活動」の狙い 
全社製造部門一斉にテーマ型QCサークル活動を展開することにより、次の事を狙う。 
 
①現状把握の結果としての悪さ加減の顕在化(ロスの構造の明確化) 
②部門長(製造部長、工場長など)の方針とすることによるQCサークル活動の活性化 
③全社一斉活動とすることによる短期間に大きな効果(損益向上)へ寄与 
 
■「テーマ型QCサークル活動」の進め方 
 
テーマ型QCサークル活動においては、成果はもちろんであるが、スピードを上げて目標に挑戦するというプロセスも重視する。その為には、職制・スタッフの指導・支援が肝心である。この活動では、テーマの選定、その根拠となる現状把握、サークルの編成、職制・スタッフによる支援等、すべて製造部長(工場長)の方針として実施する。 
その詳細は以下の①~⑧に示します。 
 
①目的:良いテーマを与え、メンバー一人一人の力を結集して、スピードを上げた改善に挑戦し、会社の業績に貢献する。 
②対象サークル:全社の製造部門のQCサークル 
③テーマ選定:ロスの削減(全社共通)。製造部長(工場長)が各部門のロス削減に関するテーマを選定。→工場によっては、他に優先順位が高いものに取り組み可。 
④サークル編成:テーマに対応したサークル編成とする。 
⑤テーマ解決期間:3ヶ月/1テーマを目標とする。4ヶ月目を「定着月」として、トータルでは、4ヶ月で1テーマを解決する。 
⑥会合時間: 15分間/回×毎週を目標とする。(トータルの会合時間を増やすことなく、会合回数を増やして改善のスピードを上げる。) 
⑦効果の把握: ロス削減実績数値として決算数値とリンクさせる。→テーマ設定の段階で考慮する。 
⑧報告会(発表会)、フォロー:各部門の報告会(発表会)や既存活動の仕組みを使って行う。 
 
■「テーマ型QCサークル活動」の成果 
 
全社で300を超えるサークルが、この「テーマ型QCサークル活動」に取り組み、効果金額及びその目標達成率は大きく、期待以上の成果を収めることができました。 
このような個々のサークルの改善効果金額の積み上げとは別に、全社一斉に取り組むことによる現場のサークルメンバーのロスに対する意識の変化もあって、この活動が全社的な歩留の大幅な改善に貢献したと考えられます。 
会社としては、従来は各部門に任せていたQCサークル活動を、初めて全社運動として展開して、ベクトルを合わせることで、活動が活発になり、コストダウンに貢献するという期待以上の成果を出すことができました。 
 
【引用文献】 
・QCサークル本部(1996):QCサークル活動の基本 
・日本品質管理学会(2015):小集団改善活動の指針(JSQC-Std31-001:2015) 
・松本 隆(2001):コスト競争力に貢献するQCサークル活動、品質管理2001年6月号 
日本科学技術連盟 
 
 
(松本 隆)

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