超ISO企業研究会

最新情報

メルマガ⑧ TQM/品質管理 こんな誤解をしていませんか?

TQM/品質管理 こんな誤解をしていませんか? 第45回『うちも方針管理を導入しています.各部門に会社方針を提示して方策を考えてもらっています.半期に一度,報告会も開催していて慣れてきたところです。 』(その2)  (2020-3-16)

2020.03.16

 
今回のメルマガは,方針管理について2回にわたり取り上げ,方針管理の実効を高める術を考えています. 
第1回は,方針管理とは何だろうか,そして方針の策定と展開の段階でどのようなことに留意しなければならないかを紐解きました. 
 
第2回は,方針管理における評価と処置を取り上げます. 
進捗評価や期末レビューでは次のような実態を見かけます. 
方針の達成状況の確認時期を見誤り処置が後手に回る,進捗が良くない方針に対する差異分析が浅薄で対応策が見当違いになる.その結果,目標の未達成が続く. 
目標の達成可否だけに注視した表層的な期末レビューに終わり,翌期の重点課題の絞り込みもできない.その結果,翌期の方針が総花的で抽象的になってしまう. 
 
要するに,「いい加減な方針(目標など)を立て,いい加減に展開し,特段の達成努力をせず,期末にご破算で願って,また来年頑張ろう!」という方針管理では経営目標・戦略の確実な達成が難しくなります. 
 
表題の事例は,方針を提示して各部門が方策を考え,半期に一度は報告会を開催しています. 
方針管理の所期の目的を達成するには,方針管理の評価と処置の段階で,方針の実施結果と実施状況のチェックをどのくらいの頻度でどのように行ったらよいか,報告会などで何を議論しなければならないか,などを深く考える必要があります. 
 
■方針管理の評価をいつ行うか? 
 
方針管理におけるPDCAのCheck段階の評価では,いつチェックするのが適切かを決めなければなりません. 
方針管理は業務プロセスの改善に焦点を当てており,目標達成のための方策には不確定な要素,未知の領域,予期しない変化などリスクが潜在しています. 
したがって,方策の結果やその進捗を,あらかじめ定めた時点で定期的にチェックし,時宜を逸することなく必要に応じた処置をとることが求められます. 
定期的なチェックの時期は,チェックの実施に要する経営資源と,実施しないことによるデメリットを勘案して設定しますが,見定められない場合は月次でのチェックを基本にすることが一般的です. 
 
■目標の達成状況と方策の実施状況を評価する 
 
では,定期的なチェックでどのようなことを評価すべきでしょうか? 
厳しい経営環境では目標達成が最優先だから,目標を達成するための方策は頓着しないという意見もあります.これは正しいですか? 
 
結果は,結果を生み出す要因に左右される,という観点を思い起こしてください. 
つまり,良い結果を得ようと思ったら,要因系~結果を生み出すプロセス~に着目して管理することが肝要という品質管理で重視する考え方に立脚することが大切です. 
 
この考え方を方針管理の評価に当てはめると,目標の達成状況という結果だけでなく,目標を達成するための方策の実施状況というプロセスを含めた評価を行うことになります. 
評価のし方について,ABCDの4タイプに分けた考え方を次に例示します. 
 
Aタイプ:目標を達成し,目標を達成するための方策も計画どおり実施した. 
これでよしよしとせずに,成功要因を必ず分析してください. 
目標が妥当だったか(例えば,目標が甘い,適切など),どの方策の寄与度が大きかったか,などを分析します. 
 
Bタイプ:目標は達成したが,方策は計画どおり実施しなかった. 
方針の策定時に考慮しそこなった方策は何か,その寄与度はどのくらいか,なぜ方策を計画どおり実施しなかったのか,などを分析します. 
また,環境変化,為替変動など外部要因も考えられ,なぜ方針の策定段階で見極められなかったかも分析します. 
 
Cタイプ:目標は未達成だったが,方策は計画どおり実施した. 
方策が見当違いだったのか,方策の寄与度が高くなかったのか,などを分析します. 
品質管理教育が不十分で,目標を達成するための方策の具体化に必要な調査・分析・解析の力量が高くなかったときに起こりがちです. 
 
Dタイプ:目標が未達成で,方策も計画どおり実施しなかった. 
まずは,方策を計画どおり実施できなかった,またはしなかった理由を分析します. 
 
目標の達成状況と方策の実施状況の対応関係を4つのタイプから分析する視点を重視してほしいと思います. 
 
■内的要因・外的要因の変化に対して的確に処置する 
 
方針管理の実施過程では必ずといってよい程,予期しない変化に遭遇します. 
したがって,経営環境の変化が起きたときのリスクを評価し,組織能力に応じた対応策をあらかじめ練っておく必要があります. 
 
組織の内的な変化の例には,上位方針の変更,経営資源の支障,固有技術面の課題,経営統合などによる組織変更などが想定されます. 
また,組織の外的な変化の例には,競合状況や顧客・社会のニーズ・期待の変化,為替レートの変動,地震・台風など自然災害・気候変動,感染症の流行などが想定されます. 
事前に事業リスクを抽出して評価し,変化に対して的確に処置することが望まれます. 
 
方針の策定・展開の前提としていた経営環境を常に注視し,大きく変わったと判断した場合は遅滞なく組織方針を見直して再展開するなど,変化に素早く対処しなければなりません. 
しかし,言うは易く行うは難し,というのが現実です. 
組織内外の変化に対して事前対応策を当てはめられない事案が起きた場合は,危機管理を含め,BCP(事業継続計画)をあらかじめ準備しておくことになります. 
 
■適切な処置を促す現場診断に着眼する 
 
データ改ざん,未資格者による検査など様々な問題が指摘されています. 
これらの問題を避けなければなりません.では,どうしたらよいか? 
 
日本の品質管理の特徴の一つに現場診断が挙げられます. 
日本品質管理学会規格「品質管理用語」(JSQC-Std 00-001:2018)では,現場診断を「現場で総合的品質管理の結果系と要因系の運営管理状況を評価し,指導する活動.」と定義し,次の3点を注記しています. 
1. 現場診断では,組織の上位者と現場の責任者とのコミュニケーションを通じて,現場で行われている活動に関する情報を収集して,指導が行われる. 
2. 現場診断は,学習(教える,教えられる)の機会である. 
3. 現場診断は,改善のきっかけとすることで総合的品質管理の改善活動につながる. 
 
現場診断は,トップマネジメントが第一線職場において,実務者である従業員との直接的な対話やコミュニケーションを行い,方針管理,日常管理,人材育成などの実情・課題を事実・データだけでなく五感(視覚,聴覚,触覚,臭覚など)も含めて現場の真実を認識できる場になっています. 
 
現場診断は,方針管理の一環として実施される場合もあり,問題を早期に発見して未然に防止する施策として,経営層や経営幹部などによる現場診断をうまく活用することが有益と思われます. 
 
■期末レビューで処置事項を明らかにする 
 
方針が総花的で,経営資源を重点的に充当できなかった結果,方針管理の有効性が削がれたという現象を見かけます. 
これを避けるには期末レビューにおいて方針管理にかかわる課題を摘出し,重点指向で重点課題を絞り込み,次期方針に反映することが不可欠です. 
 
期末レビューにおいて留意することを次に例示しますので,参考にしてください. 
‒ 自らの方針または下位に展開した方針ついて期末の報告書を作成し,レビューする. 
‒ 期末の報告書では,目標の達成状況と方策の実施状況の対応関係を先に述べた4つのタイプの視点から分析する. 
‒ レビューでは,期末の報告書の結論と結論を得た過程について適切性,妥当性,有効性,効率などを評価し,重点課題を明らかにする. 
‒ 方針管理の仕組み・プロセスの問題を摘出して分析し,次期以降の方針管理の仕組み・プロセスに改善策を反映する. 
 
これらを行うことによって,方針管理の処置段階におけるCheck→Actのサイクルが回り始め,方針管理の有効性と効率を継続的に向上していくことができます. 
 
 
このメルマガでは,方針管理の評価と処置の取組みを紐解きました.
メルマガが経営に寄与するツールとして方針管理の実効を高めるヒントになることを願っています.
 
 
(村川 賢司) 

一覧に戻る