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メルマガ⑧ TQM/品質管理 こんな誤解をしていませんか?

TQM/品質管理 こんな誤解をしていませんか? 第31回『品質管理と品質保証は同じことですよね』(その2)  (2019-12-02)

2019.12.02

 
4.品質を保証するとは
 
品質管理と品質保証の関係について、先週に引き続き、今週は品質保証の名のもとにどのような活動をするのか考えてみます。私たちは、ときに「業務の品質保証」とか、「仕事の質を保証する」なんてことを言いますが、それが何を意味しているのか、きちんと考察してみたいと思います。 
 
「広辞苑第6版」で「保証」の意味を調べてみると、「大丈夫だ、確かだとうけあうこと」とあります。他の手ごろな辞書を引いてみると「あかしを立てること。引き受けること」、「間違いないということを請け合うこと。将来の行為や結果について責任を持つこと」などとあります。すると、日本で品質管理のドーナツ化現象のなかで「品質保証」という用語を使い始めたとき、「品質が良いと請け合う。製品使用の段階においても責任を持つ」という感覚を持っていたであろうと思われます。「証」という文字には「あかしを立てる」という意味が含まれますが、「実証する」という意味を込めていたかどうかはよく分かりません。 
 
ISO 9000での「要求が満たされるという確信を与える」、あるいは以前の版での「要求を満たす製品を提供できる能力があるという信頼感の付与」という定義を考えてみても、「品質を保証する」とは、「品質が良いと請け合う」、あるいは「品質が良いという信頼感を与える」ことと考えてよさそうです。 
 
ISO 9000の世界では、確信を与えるために、また信頼感を与えるために、要求通りの製品を提供できることを「実証」することに力点を置きます。そして、手順の存在の証拠としての手順書、実施した証拠としての記録など文書類が重要視されます。自分がまともであることを証明・説明が基本です。 
 
日本で「品質保証」という用語が広まる契機になった、何とも誠実な品質保証のために何をすべきかという点ではどうでしょうか。品質が良いと請け合い、将来についても責任を持つためには、「はじめから品質の良い製品・サービスを提供できるようにすること」と、「もし万一不具合があった場合に適切な処置をとること」の2つからなると考えられます。 
 
はじめから品質の良い製品・サービスを提供できるようにするには、「手順を確立する」「その手順が妥当であることを確認する」「手順どおりに実行する」「製品・サービスを確認する」という4つの活動になるでしょう。何かあった場合の対応は、「応急対策」と「再発防止策」に分かれます。これらを以下にまとめておきます。 
 
品質を保証するとは 
 
1.信頼感を与えることができる製品・サービスを顧客に提供するための体系的活動 
1-1 顧客が満足する品質を達成するための手順の確立 
1-2 定めた手順通りに実施した場合に顧客が満足する品質を達成できることの確認 
1-3 日常の作業が手順通りに実施されていることの確認と実施されていない場合の
フィードバック 
1-4 日常的に生産されている製品・サービスが所定の品質水準に達していることの
確認、および未達の場合の処置 
2.使用の段階で供給側責任の問題が生じた場合の補償と再発防止のための体系的活動 
2-1 応急対策としてのクレーム処理、アフターサービス、製造物責任補償 
2-2 再発防止策としての品質解析と品質保証システムへのフィードバック 
 
2.の方は、「応急処置・影響拡大防止」と「再発防止・未然防止」という2つの対応のことを言っていることはすぐに理解できるでしょう。それでは、はじめから品質の良い製品・サービスを提供する仕組みについての1-1~1-4は何を言っているのでしょうか。 
 
1-1は、手順、プロセス、システムを構築するようにと言っています。1-2はその手順でまともな製品・サービスが提供できることを確認しておくようにと言っています。実は、これは難しいことです。論理的にこの手順で良いということを言うか、過去の経験から致命的な問題が起きていないことを言うか、手順・プロセスの要素として、良いと認められているモデルを適用していることを言うか、あるいはそれこそISO 9001に適合していると言うか、いろいろ考えられます。 
 
1-3は、決められた通りに実施するようにと言っています。そして、本当にルール通り実施していることを確認しなければなりません。「(A)当たり前のことを、(B)バカにしないで、(C)ちゃんとやる」というABCをご存じでしょうか。PDCAにおける、Plan通りのDoの重要性を言っています。1-1、1-2でその通りに実施すれば良い製品・サービスが生み出される仕組みができているはずですから、その通りに実施すべきである、ということです。 
 
1-4は、要するに実物で確認するようにと言っています。正しいはずの仕組み通りに実施して生み出されたものが期待通りかどうか、現物で確認するということです。製品・サービスの監視・測定がそれに当たります。 
 
5.品質保証の全社的運営
 
品質保証には、全組織を挙げた上述したような体系的な活動が必要だということです。普通の組織には、どの部門がいつ何をするかの概略フロー図のような感じの「品質保証体系図」があります。通常の工業製品であれば、マーケティング、研究開発、商品企画から、開発・設計、生産準備、購買、生産、販売・サービス、市場評価などに至る一貫したシステムの大要を図示したものがあると思います。この図には、各ステップで実施すべき業務を各部門に割り振ったフロー図として示されるのが普通です。関連規定や主要な標準の種類を示してあるものも多く、提供する製品・サービスが組織的にどのように品質保証されるのか、その全貌を可視化するものとして有効です。 
 
品質保証のための全社的運営として実施していることにはどんなことがあるのでしょうか。品質保証の意味と目的について自分なりに考えてみればよいのですが、世間相場がどうなっているか、ご紹介しておきます。 
 
まずは、経営者層が、品質方針、組織構築、レビュー(監査、診断、マネジメントレビューなど)に直接的に関わるような仕組みが必要です。品質に関わる明確な方針を打ち出し、方向づけを示し、組織全体のベクトルを合わせることです。これはISO 9001の基本的考え方でもあります。 
 
品質保証体系とは、結局は、組織構造・運営、仕事の仕組み、それに経営資源です。経営者は、品質に関わるすべての要員の責任、権限、相互関係を明確にし、会社全体として品質を達成できるような組織を作らなければなりません。また、品質保証体系が期待どおりに機能しているかどうかを確認し、必要な処置をとるために、自らが定期的にレビューすることも必要です。最小限のQMSモデルと位置づけされるISO 9001でも、このことが明確に規定されています。 
多くの組織では「品質会議」というような会議を毎月1回程度開催し、品質について横断的に検討しています。品質というのは、当然のことながら、全社各部門に関わります。普通の組織は、技術、生産、販売というような機能的組織形態をとっていますので、これらの組織を横断的に運営する仕組みがないとうまく機能しません。そのため、会議体や委員会を設置するのが普通です。 
 
品質保証の全社的運営のために、品質会議以外にも、例えば、体系的・定期的な品質評価、品質監査、品質報告書、重要品質問題管理システムなどがあります。もちろん、品質クレームの処理、検査体制の設計・運営などもあります。 
 
6.品質保証の公式性
 
「品質保証」において忘れてならないことの一つに「公式性」があります。例えば、確認をしなくても品質が良いことが分かっていても決められた品質確認を行うとか、ルール通りに実施していなくても品質が達成できるときでも決められた通りに実施しその記録を残すというように、たとえ形式的と言われようとも、資格を有した人・組織がルール通りに実施すべきことを実施し、「間違いがないことを保証する」ということの重要性です。 
 
私(飯塚)の苦い経験をご紹介します。原子力安全規制が、現在の体制になるより前、まだ経産省の保安院が規制を行っている時代、私はその一つの部会の委員でした。品質保証分野の専門性を期待されてのことです。英国のBFNLという会社から、原子力発電用のMOX燃料を輸入していました。そこで品質保証データの改竄問題が起きたのです。 
 
保証特性は燃料の寸法でした。製造工程で全数を自動検査するのですが、全く同じ方式の検査を一部のロットについて実施し、検査成績書を添付して出荷していました。この品質保証検査を一部実施せずデータ改竄していました。改竄の方法は、以前の検査ロットのデータをコピーし、一部の数値を適当に操作するという簡単なものでした。 
 
保安院が原子力規制を行っている時代、その一つの部会で疑念があると問題になりました。私はデータの性質から、まず間違いなく改竄していると言いましたが、他の委員は誰も取り上げてくれず、そのまま了承となりました。私が行ったチェックは簡単なもので、下一桁の数値の前ロットの数値との類似性でした。一致している割合が異常に高かったのです。改竄するにしても、何とも芸の無い方法だと苦笑してしまいました。 
 
燃料を積んだ船はすでに出航していて、これを途中で止めるとなったら多額の取引に影響がでます。品質特性は寸法で、容器に入る大きさなら、機能上重要な特性というわけでもありません。製造で全数検査していますので、改めて品質保証データとして測定しても、たぶん問題はないはずです。その燃料を購入する日本の電力会社の担当の方も、私の大学の研究室にまでやってきて、「間違いない。大丈夫」と、私を説得しようと懸命でした。 
 
私も、改竄してはいるだろうが実質的には大丈夫なのだから、と強弁はしませんでした。それが間違いでした。そうこうするうちに、BFNLの担当者が不正をしていたと白状しました。このとき私が学んだのは、良いということが分かっていても、正規の手続きで正しいということを公式に証明して見せることの重要性でした。委員会で、このことの意義をもっと説いて、止めるように強く言うべきだったと深く反省しました。 
 
私にとっては、長く携わってきた品質分野での痛恨の失敗です。品質保証には「お客様が安心して使っていただける」という点に加え、「良いということを公式に認める」という重要な側面があることを痛感した次第です。 
 
昨今の品質不祥事には、様々な背景要因が想定されますが、一つの事象は品質保証における「公式性」の軽視ではないかと思います。実際、顧客との契約より厳しい社内基準で運用しているという理由で、契約に定めている検査を経ずに出荷していたという事案がありました。「実際には合格しているのだから、改めて検査することもない」という論理なのでしょうが、正規の検査を経て正式に確認されたという「公式性」が重要だという認識をしていなかったのが問題です。 
 
「形式・公式より、現実・実態の方が重要だ」とか、「実態が適切であれば、形式にとらわれることなく効率的に運営する方が賢い」というような、ある種の合理主義(私は軽薄なエセ合理主義と思います)が組織運営の原則になっていては、真の品質保証はできないと思います。 

 

(福丸典芳、飯塚悦功)

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