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TQM/品質管理 こんな誤解をしていませんか? 第28回『TQMは方針管理とQCサークル、QAをやれば良いのでしょうか?』(その1)  (2019-11-11)

2019.11.11

 
今回と次回(第29回)執筆を担当する松本 隆です。 
現在、ISO 9001/14001の審査、並びにISO 9001、TQM等に関するコンサルの傍ら、ビジネススクールで(標準化や品質管理をビジネスに活かすための)「標準化経営戦略」や「問題解決図解演習」という科目を、高専で「品質管理」という科目を担当しています。 
 
これから、TQM(総合的品質管理)と方針管理や小集団活動(QCサークル活動)との関係を考えてみたいと思います。 
 
 
1.はじめに  
 
ずっと昔の話ですが、私が企業(非鉄金属加工メーカー)の生産技術部門や品質保証部門のスタッフとして勤務している時には、全社的な品質管理の活動としてのTQM(総合的品質管理:私の勤務会社では、当時TQCと言っていました)は、①トップダウンとしての方針管理と②ボトムアップとしてのQCサークル活動、それに③(顧客の立場で)品質を確保する品質保証(QA)体制があれば、必要十分でなないかと考えていました。 
要は、「TQM=①方針管理+②QCサークル活動+③QA体制」と考えていました。 
 
それでは、まずTQM(総合的品質管理)とはどんなものかを考えてみましょう。 
 
 
2.TQMとは? 
 
TQM(Total Quality Management)とは、戦後日本がアメリカから学び、日本的な改良を加えて体系化したものです。 
<TQM(Total Quality Management)は、 
“総合的品質管理”とも呼ばれており、品質を中核とする経営管理のことで、 
製品の品質向上はもとより、業務の質改善、企業競争力の向上など、 
品質を重視した“品質経営”の方法である。 
第2次世界大戦後、わが国産業の発展に大きく貢献してきた。 
 
TQMは、 
 
1)顧客の要求にあった商品(製品・サービス)を 
2)経済的に提供する 
 
ための活動の体系で、 
 
① 顧客指向 
② 継続的改善 
③ 全員参加 
 
により展開されるものである。>と定義されます。 
(以上の< >内は、「2019 QCダイアリー」p.2 日科技連出版社 から引用) 
 
TQMは、単なる概念ではなく豊富・多彩な道具(手法)を含むことが大きな特徴だと思います。TQMの3つのキーワードは、上記①~③に対応する、「品質(顧客指向)」、「全員参加」、及び「継続的改善」だと言えますが、その3つは、現在のISO 9000の「品質マネジメントの7原則」のうちの3つにもなっています。これは日本の品質管理の専門家がISOの規格制定時に提案した結果だと言われています。 
 
なお、日本における総合的品質管理は、以前はTQC(Total Quality Control)と呼ばれていましたが、1995年ごろからTQM(Total Quality Management)と呼ぶ企業が増えてきました。 
 
TQMの全体的な構造(構成要素)をどう考えるかは、学者や専門家によって多少異なりますが、以下の①~④のようなものです。 
 
① 基本的な考え方:QC的ものの見方・考え方 
② コアとなる管理システム:方針管理、日常管理、経営要素管理(機能別管理)、品質保証システムなど 
③ 手法:問題解決法、QC七つ道具、新QC七つ道具、統計的手法、QFD、FMEA、FTA、DRなど 
④ 運用技術:導入・推進方法、組織・人の活性化、QCサークル活動など 
 
上記のように、方針管理やQCサークル活動は、TQMの代表的な「管理システム」や「運用技術」ではありますが、その一部に過ぎません。 
方針管理は,上記②の一つですが,そもそも②には方針管理,機能別管理,日常管理があり,方針管理を進めるにはその前に方針管理を整備しないといけないと思います.それが整備されていないと方針管理は絵に描いた餅になります. 
QCサークルも,運用技術の一つで従業員による全員参加と人材育成の面がありますが,他にも提案制度,社内大会の開催などがあります.また,最近はQCサークルを方針管理の達成手段の一つとして活用している場合もあります. 
 
 
3.「方針管理」と「日常管理」の関係  
 
ここで、上記②の「コアとなる管理システム」を構成する「方針管理」と「日常管理」の関係について、多くの企業で策定、取り組んでいる「事業計画」で、考えて見ます。 
企業における「事業計画」とは、事業目的を達成するために組織として行うべき全ての計画であり、中長期計画、それを達成するための事業戦略、年度事業計画、各部門がそれぞれの日常の業務を行うための実行計画なども含まれます。
事業計画を実現するための活動が「日常管理」と「方針管理」からなると言えるでしょう。 
すなわち、事業計画の目標を達成のために、下記の1)~2)の活動が必要で、 
 
1)すでに実現できている部分を確実に担保する活動(維持活動) 
2)不足している部分に新たに取り組む活動(改善・革新) 
 
このうち、1)に対応するのが「日常管理」であり、2)に対応するのが「方針管理」と考えると良いでしょう。 
 
・「方針管理」とは、経営環境の変化への対応、経営ビジョン達成のために、「日常管理」の仕組みだけで実施することが難しいような全社的な重要課題を、組織を挙げて確実に達成していくための経営管理の方法論と言えます。 
 
・「日常管理」とは、組織内のそれぞれの部門で日常的に実施されなければならない業務について、その業務目的を効率的に達成するためのすべての活動の仕組みと実施に関わる管理であり、その基本は、部門が果たすべき業務のPDCAを適切に回すことです。 
 
「日常管理」には「効果的・効率的な標準(ルール)を作って、それを確実に守る」という「標準化」が欠かせません。その意味で、「日常管理」では、PDCAのP(Plan)をS(Standardization)に変えて、「SDCAを回す」ことが重要と言われることがあります。 
「方針管理」の活動の中で、決めたことを標準として「日常管理」化するというサイクルと,「日常管理」の中で慢性的に解決できないような重要課題を「方針管理」として取り上げるといった両者の関係があります.
つまり,方針管理と日常管理は車の両輪的な役割があるように思っています. 
 
「方針管理」をやりたければ、その前に足元の「日常管理」をしっかり整備することが欠かせませんが、「日常管理」とは何をやることでしょうか? 
 
 
4.「日常管理」とは?  
 
「日常管理」においては、PDCAの各ステップのこれらの項目に当たることを、以下のように実施します。 
 
<Plan> 
① それぞれの部門の分掌業務(組織の各単位に配分された、一定範囲の責任職務)が何であるか(どんな入力を得てどんな出力を出すのか)を確認する。 
② それぞれの分掌業務の目的が何であるかを明確にする。 
③ その目的の達成度合を測る尺度としての管理項目、管理水準(目標)を明らかにする。 
④ その目的を達成するための手順を明らかにする。 
 
<Do> 
⑤ ④で規定された従事者、部品・材料、設備、計測器についての要件を満たす活動を行う。 
⑥ ④で規定された手順に従って実施する。 
 
<Check> 
⑦ ⑥の結果を③で規定された管理項目で把握し、管理グラフなどに記入する。 
⑧ ③で規定された管理水準内にあれば⑥に従って業務を継続する。 
 
<Act > 
⑨ 管理水準外にあれば、しかるべき応急処置をとる。同時に原因を究明する。管理項目、目標、手順に問題があれば③、④に戻り修正する。実施に問題があれば⑤、⑥に戻り、しかるべき対策をする。 
⑩ 重要な管理項目については、月次(または3ヶ月、6ヶ月)ごとに上記の管理状況を月報などの形で把握し、特に慢性問題についての改善活動を計画的に推進する。 
 
【引用文献】 
・飯塚悦功(2009):「現代品質管理総論」朝倉書店 
・「2019 QCダイアリー」日科技連出版社 
・日本品質管理学会「方針管理の指針」(JSQC-Std 33-001:2016 ) 
 
 
(松本 隆)

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