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TQM/品質管理 こんな誤解をしていませんか? 第16回『1回,2回と言わず,PDCAをとにかくジャンジャン回せ!』(その1)  (2019-8-19)

2019.08.19

 
これから二回にわたって、PDCAサイクルに関わる「誤解」について考えてみます。 
 
「1回、2回と言わず、PDCAをとにかくジャンジャン回せ!」・・・この考え方は正しいのでしょうか。 
 
〝PDCAサイクルとは、目標を明らかにしたら(Plan)、直ちにそれを実施に移し(Do)、目標との差異がないか確認して(Check)、差異があればすぐに処置を行うことで(Act)、目標を達成させるというマネジメントの方法である〟・・・仮にこのような考え方に立てば、なんらかの「目的」の実現を目指すマネジメントにおいて「PDCAを回す」というのはごく当たり前のことであり、あれこれ「理屈」を言わずとも「とにかくじゃんじゃん回せ」というのも当然のことでしょう。ここで言われている〝PDCAを回す〟とは、なんらかの特別な方法の適用を意味するものではなく、〝目標をどんどん達成しよう〟ということに他ならないのですから。 
 
では、「PDCAサイクル」とは、このような「当たり前」のことを言っているに過ぎない考え方なのでしょうか。 
 
このような「PDCA」を「じゃんじゃん回して」よいのか 
 
例えば「PDCA」が次のようなレベルであった場合、じゃんじゃん回したら組織はどうなるでしょう。 
 
Plan:計画が練り上げられていない。 
1)目標が十分に絞り込まれておらず、日常管理事項や研究課題レベルのものなどが混在し、多くの「目標」が設定されるために、十分に進捗管理されていない。
2)プロセスの担い手の世代交代により、かつては自明であった「目的と目標とのつながり」が不明確になり、目的の実現に向けて毎期の目標にチャレンジするのではなく、「上から降りてくる目標」に追われているだけのメンバーも少 なくない。 
3)目標を達成させるための手段・方法の具体化、必要な資源の明確化、点検方法・結果の評価方法などの「計画化」が不十分で、目標の水準が向上しているのに方法は前期同様、あとは各自の頑張り(量的努力の積み重ね)で達成するしかない。 
 
Do:実施が各自まかせ・各自の責任となっている。 
1)目標は伝達されているが、共有化し、各自のコミットメントを引き出すことはできていない。 
2) プロセスの担い手の若返りや外部化によって実践力が低下しているが、それに対応できていない。 
  例:手順書等の整備・改善、必要な教育訓練の実施 
3)上記の人的資源を含めて、資源の不足(人、モノ、場所、時間、知識・技能)に適切な処置がなされていない。 
 
Check:有効な確認となっていない。 
 1)達成方法の見直し・修正などが可能なタイミングでなされていない。 
2) 確認が単なる「詰め」の場になっている。目標達成状況だけの点検で、(必要に応じて)達成のための計画の実施状況などのプロセスの点検がなされていない。結果、目標未達成の原因を明らかにして対策を立てることが「各自任せ」になっている。 
3)確認のために作成しなければならない帳票類が膨大で、中には仕事の中で活用されていないものも含まれている。「重すぎる点検」になっている。 
 
Act:「何としても計画を達成する」ための帳尻合わせになる場合がある。 
1)ある目標を達成するために、他の仕事を後回しにしたり、安全や環境面への配慮などがおろそかになる場合がある。臨時に多くの人時を投入することで、全体としての生産性が低下している。 
2) 応急処置のために、一部の「仕事ができるメンバー」により多くの負担が集中しがちである。 
3)今期の「失敗」を次期の計画に生かすことができていない。 
 
少々極論ですが、上記のような「PDCA」は、〝十分に練り上げていない計画(Plan)を、各自任せで実施(Do)し、確認という名の詰め(Check)を通じて、帳尻合わせの処置(Act)で目標を達成させている〟にすぎません。仮にこのようなPDCAサイクルを「ジャンジャン回す」ならば、間違いなく組織は疲弊します。短期的には計画を達成できたとしても持続的に達成し続けることは困難です。目先の計画に追われるだけの状況が延々と続くならば、人材の不定着、思わぬ事故やトラブルの発生、果ては帳尻合わせのための「偽装」すら発生しかねません。 
 
PDCAサイクルは確かなマネジメントのための方法論 
 
ISO 9001:2015の序文につぎのような記述があります。 
 
「この国際規格は、Plan-Do-Check-Act(PDCA)サイクル及びリスクに基づく考え方を組み込んだ、プロセスアプローチを用いている ・・・ (中略) ・・・ 組織は、PDCAサイクルによって、組織のプロセスに適切な資源を与え、マネジメントすることを確実にし、かつ、改善の機会を明確にし、取り組むことを確実にすることができる」 
 
前回、前々回のメルマガで村川さんが、「プロセス管理」の重要性について解説されていました。ISO9001では、PDCAサイクルを〝(期待する成果を得るために)プロセスを確実にマネジメントし、改善するための方法論〟と位置付けていると考えてよいでしょう。その意味では、PDCAサイクルは、〝1回、2回とは言わず〟継続的に回し続けるものであり、そのことで計画達成の確実性が向上するとともに、組織の成長を通じてより高度な計画へのチャレンジも可能になります。 
 
但し当然のことながら、PDCAサイクルがそのようなものとして効果を発揮するためには、Plan、Do、Check、Act各々の要素が適切に組み立てられ、連動して機能することが必要です。PDCAサイクルとは、〝計画を立て、実施し、確認し、必要な処置をとる〟という当たり前の考え方を述べただけのものではなく、確かなマネジメントのための基本的な方法論を明らかにするものなのです。 
 
では、基本的な方法論としての「PDCAサイクルを回す」とはどのようなことなのでしょうか。次回のメルマガ(8月27日)では、そのことについて検討します。 
 
PDCAについては、多くの参考書が出版されており、様々な解説がなされていますが、このメルマガでは、超ISO企業研究会のメルマガ第二弾「基礎から学ぶQMSの本質」の第9回と10回で、会長の飯塚先生が解説している品質管理の基本的方法論としての「PDCA」の考え方に基づいて、検討を進めたいと考えます。 
 
飯塚先生は、下記のように「PDCAを構成する4つの活動を、それぞれを2つずつに分解」する考え方について解説しています。 
 
Plan  
P1:目的・目標の明確化 
P2:目的達成のための手段・方法の決定 
 
Do  
D1:実施の準備・整備 
D2:(計画・指定・標準どおりの)実施 
 
Check 
C1:目標達成にかかわる状況確認 
C2:副作用の確認 
 
Act  
A1:応急処置、影響拡大防止 
A2:再発防止、未然防止  
 
メルマガ第二弾は研究会のホームページで閲覧可能です。興味のある方は、次回メルマガを待つのではなく、直接、飯塚先生の解説を読まれることをおすすめします。 

 
 
(土居栄三)

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