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TQM/品質管理 こんな誤解をしていませんか? 第9回『最近は管理,管理って周りがうるさいね.締め付けるばっかりで,仕事がどんどんやりにくくなって困るよ.』(その2)  (2019-6-24)

2019.06.24

 
「最近は管理,管理って周りがうるさいね.締め付けるばっかりで,仕事がどんどんやりにくくなって困るよ」の誤解を解く2回目です。 
管理の要素、ポイントは次の3つであると前回説明させていただきました。 
 
 1.目的は明確か 
 2.効率は良いか 
 3.継続しているか 
 
ポイント1について、管理をしていても目的が明確になっていない事例は、我々の周りに数多くあります。例えば、職場で週毎の出勤率をグラフにし管理していますが、掲示するだけでそれに対するアクションがあった試しはありませんでした。その職場では、出勤率をグラフにする目的をはっきりさせていなかったと思います。はっきりさせるということは、管理水準を決めることに繋がりますが、その職場では明確な管理水準を持っていなかったか、持っていても何らかの理由でアクションに繋げていなかったのでしょう。 
 
別の事例は、時計部品の切削後の寸法をコンパレータ(計測器の一種)で測定し、グラフにする検査職場で経験しました。検査職場で見ると、きれいに横一列に並んでいる折れ線グラフが作成されていました。こんなにも精度良く加工できるものなのか、と驚いた記憶があります。しかし、ある時このグラフが事実を表していないことが判明しました。市場から時計が止まるというクレームが多発しました。原因は針を動かす歯車が、ある姿勢において他の部品に触れてしまうことでした。さらに調べると部品の切削後の寸法が規格外であることが分かりました。なんと、寸法を検査している作業者はグラフにする目的を理解していませんでした。測定した寸法を正確にグラフに描くのが目的であるのに、管理限界線の中に綺麗に描くことが彼女の目的でした。何とも信じがたい話ですが、私が実際に経験したことです。 
 
ポイント2番目の「効率」についての話に移ります。 
管理は「目的を効率よく継続的に達成するためのすべての活動」と理解されている、と申し上げましたが、この「効率よく」が一歩間違えると強制的で、最悪の場合ノルマを課すということになってしまう場合があります。日本品質管の世界では、管理についての悪いイメージは全くありませんし、「効率よく」はあくまでも合理的で理性的に行うことであることは論を待ちません。 
 
よく「入りを図り、出を制す」と言いますが、入りをAと表し、出をBと表しますと効率はB/Aという分数で表すことができます。効率を良くするには分母Aを小さくし、分子Bを大きくすればよいのですが、分母Aを減らさずに分子Bだけを大きくしようとすると、今回の誤解である「管理とは締め付けのことである」ということになってしまいます。 
家計も、事業採算も同じで、分母と分子はそれぞれが持つ構成要素が異なるので一律に論じることはできませんが、両者を対象にしてアクションを取らなければバランスの取れた管理とは言えないでしょう。企業の組織論では、よく「小さい本社」ということを言いますが、これなどは分母Aを小さくして効率を良くすることを意味しています。 
 
総てのことに言えますが、効率よく行うには、繰り返し作業を行わない、もし失敗してもその場で発見し素早く直すなどの活動が大切になります。そのような活動を組織的に行おうとして工夫されたのが、品質管理界で行われてきた「日常管理」です。日常管理の前提は、標準化であり、結果に影響のある要因系のエレメントを明確にして、一定の範囲に保つようにし、安定した品質の製品を得るようにしてきました。日本の製造業が世界で誉めたたえられた1980年代にはこの日常管理が活躍しました。 
 
標準化のねらいは、例えば作業の要素をSOP(手順書)にして、作業者に訓練してできるだけ作業がばらつかないようにすることですが、人間の知識が完全でない以上、 作業以外総ての要素を適切に標準化することは不可能です。特性要因図を眺めながら結果に大きく影響を与える要因を管理することになりますが、どのエレメントが重要な項目であるかは、いままでの品質データ、その他の種々の経験値から判断するしかありません。もちろん、経時的に結果を解析して、管理する項目を変更するという改善も必要となります。管理する項目が決まれば、管理する水準を決めます。管理水準とは、日常監視する項目データの容認範囲のことをいいます。 
 
日常管理で主に対象とすべきものは「異常」です。プロセスの結果はさまざまな原因 によって変動しますが、管理水準から外れたものを「異常」として、発見したらすぐに工程を止め、応急処置をとることが重要です。その後、同じことが起きないように原因を究明することになりますが、通常の状態から外れた原因の追究はなかなか困難な場合が多くあります。比較的重要度が低く、技術的あるいは絲済的に突き止めて取り除くことが困難な原因は無視をし、作業標準を守らなかった、機械の性能が低下していた、材料が変わった、方法が悪かったなどの4Mを中心に異常原因を取り除くことで再発防止に努めることが必要になります。 
これまた、効率化を求める管理には「締め付ける」というニュアンス、要素は無いことをお分かりいただいたと思います。 
 
3番目のポイントは「継続性」です。一度だけの行動には管理は不要で、担当する人の力量さえ確認できれば後はその人に任せておけばよい、と思っていませんか。本当に今回だけの行動であれば、担当者の選定を間違えないようにすることに重点を置けばよいと思います。ただ、この世の中たった一度の目的達成行動は考えにくく、従来の経験が生きる類似性のある行動がほとんどです。このように認識をすると、管理の一要素として従来との「継続性」が上げられます。 
次の3Hという標語は、ある組織から習ったものです。 
 
・初めて(はじめて、Hazimete) – 初めてやる作業 
・久しぶり (ひさしぶり、Hisashiburi) – 久しぶりに行う作業 
・変更 (へんこう、Henkou)- 手順や方法が変更された作業 
 
「初めて」は、新規性のある仕事ですが、組織内で行う仕事に全く新しいということはなく、今までの経験から最も適切な方法を探り当てることになります。「久しぶり」、「変更」の作業は言うまでもなく、従来との「継続性」の管理が重要になります。 
 
管理/マネジメントは、上述の3要素が重要であることを分かっていただけたでしょうか。管理が、もし「締め付ける」というニュアンスで運用されていたとしたら、それは正しい品質管理/マネジメントが行われていない証左と言えるでしょう。 
 
 
(平林良人)

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