超ISO企業研究会

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活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第2弾 第17回 金子雅明(その2)

2019.03.18

 

前回のつづきです。

 

2.大学教育の質評価指標

 

上記1の基本的枠組みに基づいて,大学教育の質評価指標について検討してみます.

 

ご承知の通り,質評価指標には結果系と要因系の指標がありますが,前者の結果系としては“今の時代の企業・社会のビジネス・経済の活性化や生き残りに対応できる人材(学生)を(量,質の両面で)いかに輩出できているか”をどう測るか,になります.

量的な側面としては,日本大学や近畿大学,3万弱の学生がいる東海大学はいわゆるマンモス大学であり,かなりの学生数を社会に輩出しています.問題は,その質はどうかということになるでしょう.

 

就職を希望した学生のうち,実際に就職できた割合である「就職率」はその代表例です.輩出した学生を企業や社会がどの程度受け入れてくれた程度を示しています.また,その学生が入社後にいかにその企業に貢献したかという意味での企業の満足度・期待度を表すものとしては,ある特定の大学・学部の学生を〇名推薦してほしい,という企業からの「推進枠人数」もあります.単に,「就職率」「推薦枠人数」だけでなく,有力企業(または,ある特定の業種・業態)における・・・という限定修飾語を付ける場合もあるかもしれません.より直接的な評価としては,各企業の人事部による人気大学ランキングもよく見かけます.

近年,入社後3年以内に辞めてしまう新入社員が多くなっていることが問題視されており,もしかしたら「入社3年後在籍率」もひとつの指標としてはあり得るかもしれません.

 

要因系の評価指標はまさに製品を生み出す企業活動の評価になりますから,この場合,“講義型の授業や演習・実験等の教育・訓練”の出来栄えやその仕組みを評価することになります.

 

有名どころでは,

(1)The 世界大学ランキング日本版(https://japanuniversityrankings.jp/)

(2)JABEE(日本技術者教育認定機構)による大学認定制度

 

などがあります.(1)は主に教育力の評価に重点が置かれ,具体的には「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の4分野13項目で構成されているようです.日本版ではない世界版では,先ほど述べた大学が持つ2大機能(教育と研究)の「教育」だけでなく「研究」を非常に重視した評価となっています.

 

(2)は,主に技術系(理工系)の学部・学科単位の教育の仕組みを対象とした認定制度です.私が卒業した早稲田大学の経営システム工学科もこれの認定を受けています.具体的な審査・認定基準(https://jabee.org/about_jabee/accreditation_system)は以下の通りです.

 

〇基準1:学習・教育到達目標の設定と公開

〇基準2:教育手段

2.1 教育課程の設計

2.2 学習・教育の実施

2.3 教育組織

2.4 入学、学生受け入れ及び異動の方法

2.5 教育環境・学生支援

〇基準3:学習・教育到達目標の達成

〇基準4:教育改善

4.1 教育点検

4.2 継続的改善

 

これを見てわかりますように,いわゆる教育におけるPDCAをちゃんと回す仕掛け,仕組みがあるかどうかを審査します.また,基準1の学習・教育到達目標の設定においては,以下の(a)~(i)を具現化したものかどうかを審査します.これらの9項目は,技術者教育の国際的協定であるワシントン協定が示している12項目の知識・能力(Graduate Attributes)をもとに,我が国の教育の特質も加味してまとめたものです.

(a)地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素養

(b)技術が社会や自然に及ぼす影響や効果、及び技術者が社会に対して負っている責任に関する理解

(c)数学及び自然科学に関する知識とそれらを応用する能力

(d)当該分野において必要とされる専門的知識とそれらを応用する能力

(e)種々の科学、技術及び情報を活用して社会の要求を解決するためのデザイン能力

(f)論理的な記述力、口頭発表力、討議等のコミュニケーション能力

(g)自主的、継続的に学習する能力

(h)与えられた制約の下で計画的に仕事を進め、まとめる能力

(i)チームで仕事をするための能力

 

いずれにしましても,(1)と(2)の両者ともに外部機関による評価・認定となります.

 

一方で,大学内部でもいろんな評価が大学独自で行われています.多くの大学で実施しているのが授業アンケート評価です.東海大学でも実施して,授業・演習・ゼミ等の科目ごとの性質ごとに分けて,全学部全科目の平均と自分が担当した科目での評価の差異も示してくれます.

それ以外にも,卒業率(ある年に入学した学生100名が,4年後に何人卒業できたか),留年率などもあります.一概に,“講義型の授業や演習・実験等の教育・訓練”の質をきちんと評価しているといえない指標もあるのですが,いろんな側面から評価を試みています.

 

また,大学における授業の質改善活動の代表的なものに「ファカルティ・ディベロップメント=Faculty Development」,略して「FD活動」とういものがあります.授業の進め方・やり方に関する研究会や研修会を実施していることが多いです.私個人も学部FD委員会のメンバーとなっていますが,最近の流行りは“アクティブ・ラーニング”というキーワードです.要は,教員による一方的な講義による受け身的な授業でなく,学生自らが主体的・自律的に考え・発言し,教員と学生の双方向な授業をしなさいということであり,文科省も最近はかなり推奨しています.例えば,タブレット端末を使った教育や,グループワークで検討した結果をすぐにプロジェクターのスクリーンに映してその結果を発表してもらったり,他のグループや教員からフィードバックをもらったりなど双方向なコミュニケーションを容易かつ迅速に可能とする教育支援システムも開発されてきています.

したがって,近年の大学の講義室は,いわゆる小学校・中学校の教室ではなく,オープンスペースで机,椅子が容易に移動可能で,複数のグループワークができることも考えたレイアウト設計に変わってきているように感じます.

 

ちなみに,東海大学では「Teaching Award」という表彰制度があり,学生による授業アンケート評価で上位の成績を取った教員を表彰し,高評価のポイントや秘訣を冊子にしてまとめて全教員に配布することを毎年実施し,これが教員の業績評価にも結び付いています.

 

このように,大学において教育の質評価をそれなりに行っていることがわかります.私自身がいくつかの大学を経験してきて足りないと思うところは,次の2点です.

ひとつは,結果系の指標と,要因系の指標を設定して評価を実施していますが,両者の関連付けが弱いです.要因系は要因系で活動し,その効果がどのような結果系の指標に表れるかを十分に確認しているとは言えません.その結果,要因系に関わる教育活動は増える一方で教員の負担は増え続けており,その活動の質や効率についての吟味が足りません.また,両者を関連付けて評価する仕組み自体も確立されていないように感じます.

 

ふたつめは,個々の授業科目に対する授業アンケート評価の活用についてです.現在は,授業アンケート結果は各担当教員に返されますが,その後のアクションは各教員任せです.何にもしなくても,誰からも何も言われません.学生による評価結果には様々なノイズが入っていますから100%に真に受ける必要はないとは思いますが,何らかのアクションをもっと確実に促すような仕掛けがあってもよいのではないでしょうか.毎年,履修学生数が多い科目とそうでない科目はほぼ決まっており,履修学生が多い授業はやはり非常に参考になる良い授業をされていると感じます.教員による教育のばらつきが大きいことは否めませんし,それをゼロにするのは困難ですし,そうする必要もないとは思いますが,大学としての最低限の教育の質保証は確かに重要であると感じます.

 

次号へつづく

 

(金子 雅明)

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