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活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第2弾 第16回 金子雅明(その1)

2019.03.11

 

 

『大学教育の質を考える』

 

筆者は品質管理分野の大学教員であるため,大学教育の質について日頃考えていることを述べたいと思います.読者の皆さんにはこれから3回にわたってお付き合いいただければ幸いです.

 

1.大学教育の質とは?

 

最初は,大学教育の質の一般論についてです.大学の質を語るためには,当然ながら大学における「製品」と「顧客」をまず明確にしておきましょう.

 

一般的な総合大学では,教育と研究の二つの機能を有していますが,今回は前者の教育に焦点を当てますが,そうすると読者の皆さんがすぐに思いつくのは,大学の授業風景ではないでしょうか.そこでは,“講義型の授業や演習・実験等の教育・訓練”を学生に提供していることになり,これが大学の主要な「製品」ということになるでしょう.

 

その流れで,この教育・訓練サービスを直接的に受け取っている学生が大学における「顧客」であると多くの方がイメージするでしょう.しかしながら,学生の多くは残念ながら“楽単科目”,つまり楽に単位が取れる授業科目を選びがちです.また,課題レポートが少ないほど,嬉しがります.最近では,高額なテキストを使用する授業よりも,大学教員が自分で製作する(無料の)レジメを配る授業のほうが人気であるという残念な傾向も見受けられます.つまり,大学全入学時代と言われる今の日本においては,学生は大学の顧客のひとりではありますが,顧客は学生のみと考えないほうが良いように思います.

 

では,他に誰を顧客と考えるか.このことは既にだいぶ前のメルマガの中でも少し述べたこともありますが,その学生が卒業してそれを受け入れる「企業・社会」を主要な顧客と考えたほうが良いと筆者は考えます.企業・社会は何らかのビジネス・経済によって成り立っていますが,それは時代によって求められる内容が大きく異なります.今の時代の企業・社会のビジネス・経済の活性化や生き残りに対応できる人材(学生)を,大学がいかに輩出できているかどうかが,大学教育の質となるのではないでしょうか.

 

このように考えますと,「企業・社会」という顧客に対して,“あるスキル・能力を有した人材(学生)”という「製品」を大学が輩出(提供)していることになり,上述した“講義型の授業や演習・実験等の教育・訓練”は「製品」であるというよりは,“あるスキル・能力を有した人材(学生)”を輩出するために行う「企業活動」と考えたほうがよいことになります.

 

では,学生の「両親」はどうなるでしょうか.多くの大学が「顧客」と捉えているようです.また,学費という投資を行っているという点からは株主と捉えることもできそうですが,私自身はそうは思えません.なぜなら,4年間という大学生活において,大学教員が学生本人に関われるのは多くて1週間に数時間程度であり,両親とは比べ物にもなりません.“あるスキル・能力を有した人材(学生)”を確実に輩出するためには,「両親」の積極的な協力は欠かせず,大学と両親が一体となって学生の指導・教育に当たるべきです.その意味で,「両親」は大学におけるパートナであると考えたほうが良いのではないでしょうか.

 

つまり,筆者が考える大学教育の質を語る上での基本的な枠組みは以下の通りです.

・顧客:企業・社会

・製品:あるスキル・能力を有した人材(学生)

・質:今の時代の企業・社会のビジネス・経済の活性化や生き残りに対応できる人材(学生)を(量,質の両面で)いかに輩出できているか

・製品を生み出す企業活動:“講義型の授業や演習・実験等の教育・訓練”

・パートナ:学生の両親

 

(金子 雅明)

 

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