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活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第2弾 第15回 平林良人(その2)

2019.03.04

 

 

最近の品質不祥事に関連して標準文書の管理及び運用について「つぶやき」ましたが、今回はその2のつぶやきです。

 

前回は

 

1. 標準文書の管理

2. 必要な資源及び情報

3.  文書管理プロセスの監視、測定及び分析

4. プロセス改善に伴う標準文書の最新化

 

についてつぶやきました。

ではその2、

 

5.~9.までのつぶやきもお聞きください。

 

 

 

 

5.  標準文書承認のポイント

 

標準文書を承認することについて考えてみたいと思います。

標準文書はその対象についてよく知っている人が作成します、いやよく知っている人が作成しなければなりません。

標準文書を承認するとなると、それを作成した人よりもその対象について知っていなければならないと思いがちですが、そのようなことはありません。

標準文書の承認者は対象業務に通じていることに越したことはありませんが、作成担当者より詳しい承認者は普通いません。

 

標準文書の審査者が心得ているべきポイントは、標準文書の作成者が陥る可能性を知っていることです。そのためには、標準文書のレビューで作成者の陥りやすいことをチェックする手順を理解しておくとよいでしょう。

 

標準文書の作成者が陥りやすいこととは何なのか考えてみたいと思います。

よく言われることですが、人は自覚していないと木を見て森を見ないということがよくあります。

森を見ないということは、作成する標準文書の目的をしっかりと理解していないことから起きます。

 

 

標準文書作成の目的は一般に次の3点です。

 

1.期待される結果を得るための手順、手段を明確にする。

2.実施する人によって結果がばらつかないように判断基準を定める。

3.実施後に起きるかもしれない問題に備える。

 

標準文書の審査者(承認者、レビュー者)は、この目的に沿わない標準文書になっていないかをチェックする役割を担っています。

 

 

作成の目的が明確である標準文書であれば、標準文書審査はパスできますが、ここでレビュー及び改訂の手順を説明したいと思います。

 

①期待される結果を明確にする。

②期待される結果の最終アウトプットの形を明確にする。

③最終アウトプットの形を得る直前には何をしなければなら ないかを明確にする。

④その前には何をしなければならないかを明確にする。

⑤順次その前、その前と確認し、最初の着手まで明確にする。

 

この手順では、「何をしなければならないか」、すなわち一つの活動がポイントになりますが、活動の大きさがここで問題になります。

あまり大きく捉えて活動を記述すると実施者の力量を超えてコントロールできなくなります。標準文書の審査者は一つの活動が実施者の力量の範囲に入っているか確認する必要があります。確認のポイントは、管理できる大きさ、意味のある小ささです。

 

組織のマネジメントシステムの根幹である標準文書が現実の姿を反映して的確に管理されることは必要不可欠のマネジメント要素です。

この組織のルールである標準文書の最新化を怠ると品質不祥事の温床を作ることになります。

 

 

 

 

 

6.  標準文書の識別と活用

 

標準文書を改訂、変更した時に、組織の関係者にどのように周知するかは仕組みとして明確にしておくことが大切です。

ルールを変更したとき、この変更を関係者に知らせないと、これまた、品質不祥事の温床を作ることになります。

周知する内容は、

 

①文書名

②発行部署名

③変更内容

④変更の目的、理由、背景

⑤変更日時

 

などです。

 

標準文書がPCネットワークで管理されている組織が多くなっていると思いますが、社内ネットで変更周知するには工夫が必要です。

該当文書の配布先の確認を行い、配布先の最新部門を確認してから変更実施のお知らせを発信します。

変更に関して事前に内容について協議をすることが多くありますので、事前検討に参加していた部門へのお知らせはについて心配ありませんが、参加していない部門へのお知らせについてはネット発信だけでは周知されないことが心配されます。

ネット発信の最後に受領確認の返事を貰う工夫をすること、もし返事が無ければこと個別に確認を行うことが必要です。

 

 

PCネットワークで文書管理がされていることを前提にお話しします。

必要な標準文書が必要な時に使用できることは日常の業務に必要不可欠な要件です。ISO9001:2015 も箇条7.5.3.1において、

 

「a) 文書化した情報が,必要なときに,必要なところで,入手可能かつ利用に適した状態である」と要求しています。

 

現在有効な文書は当然のことですが、組織では時々過去の標準文書を必要とすることが起きます。

記録及び廃止された規定文書も必要となることがあります。

どこまで遡って廃止文書を観ることができるのかは組織が事情により個別に決めることですが、遡る期間は規定された内容に依るでしょう。

 

 

 

 

 

7.  標準文書の容易性

 

読む人の立場に立って作成された標準文書は活用され易いのですが、読みづらい標準文書、内容が理解しがたい標準文書は、敬遠され活用されなくなります。

 

①目的が書かれている。

②主語が明確になっている。

③5W1Hが書かれている。

④平易な言葉を使用している。

⑤表、チャート、図などが使われている。

 

などに心がけて標準文書を作成するとよいと思います。

 

 

標準文書が何時、何の目的で、誰が作成したのか、誰が活用しなければならないのか、何時改訂されたかなどを識別できるようになっていることが必要です。

 

ISO9001:2015箇条7.5.2には次の要求があります。

「文書化した情報を作成及び更新する際,組織は,次の事項を確実にしなければならない。

  1. a) 適切な識別及び記述(例えば,タイトル,日付,作成者,参照番号)
  2. b) 適切な形式(例えば,言語,ソフトウェアの版,図表)及び媒体(例えば,紙,電子媒体)
  3. c) 適切性及び妥当性に関する,適切なレビュー及び承認」

 

組織は守るべきルールを標準文書に規定しますが、そのほかに守るべきルールが多くの外部文書に規定されています。

外部文書には次のようなものがあります。

 

①契約書

②仕様書

③法律

④規格

⑤協定など

 

これらの外部文書の規定も容易に理解できるように記載されていることが望ましいのですが、作成が外部で行われることから、外部文書を理解するには、超えなければならないハードルがありえます。

組織は、自己業務に関係する外部文書はきちんと確認しなければなりませんが、外部文書に規定されていることを知らず知らずのうちに破らないように、その理解が的確か自問自答することも重要でしょう。

 

さらに外部文書は、どのような考え方で必要な部門に配布されているかも確認しましょう。外部文書の配布方法もチェックするとよいでしょう。

 

 

 

 

8. 廃止文書の取扱い方法

 

今般毎月勤労調査で問題となっている厚労省にも業務の標準文書は当然あったと思いますが、その標準文書は在っても無い同然の扱いになっていたということが今回明らかになりました。

今回の厚労省の問題に直接関係しませんが、組織では標準文書を廃止せず、いつまでも標準文書を有効な状態にしている例があります。

標準文書の整理整頓がされていないということになりますが、廃止文書の考え方は明確にしておく必要があります。

また、廃止と決めた標準文書の処理はどのようにするのかも決めておかなければなりません。

 

日常の仕事で、人々が廃止文書を「廃止されている」と判断できるようになっているか、も大切な要素です。

廃止文書を保管してあるならば、それらをどのような方法で区別するのかも決めておくことが必要です。

 

 

 

 

9. 記録

 

今回の毎月勤労調査に関して、毎月勤労調査結果は記録になっていますか、と聞けば答えはYesだろうと思います。

官庁には厳格な文書管理規定がありこの種の基幹調査の記録は必ず保管対象になっており、保管期間も決まっているはずです。

 

今回の毎月勤労調査に関して、記録の内容を要員が理解できているかといえば、これも答えはYesでしょう。

しかし、理解している内容、程度については疑問があります。

記録の使われ方、使用目的、精度、ルール逸脱の結果のダメージなどについて、担当者がきちんと理解していたとは思えません。

保管されている記録がそれぞれ識別されているか、ということですが、厚生労働省でも当然保管用段ボール、あるいは電子情報に名前を付けて記録を識別していると思います。

さらに、記録の種類が明確で区分できているかといえば、答えはこれもYesだと思います。

今回の毎月勤労調査に関して、記録の保管、保護がきちんとしていたかというと、冒頭述べたように一部の記録が廃棄されたり、紛失していたということから、標準文書の管理システムは不完全であったと言わざるを得ません。

 

(平林 良人)

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