超ISO企業研究会

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メルマガ③ メンバーのつぶやき

活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第2弾 第7回 土居栄三(その2)

2019.01.07

 

 

新年明けましておめでとうございます。

2019年も毎週の情報配信を続けて参ります。

引き続き超ISO企業研究会をどうぞ宜しくお願い致します。

 

 

さて、本日は年末に第1回目をお届けした土居委員の2回目になります。

 

 

 

新年早々〝ボヤキ漫才〟モードで申し訳ありません。今回の「つぶやき」は、〝PDCAサイクルの受けとめ方に誤解があるのではないか〟ということに関するものです。

 

 

1)「PDCAは当たり前の考え方」というけれど

 

ISO9001:2015の序文には「この国際規格は、Plan-Do-Check-Act(PDCA)サイクル及びリスクに基づく考え方を組み込んだ、プロセスアプローチを用いて」おり、「組織は、PDCAサイクルによって、組織のプロセスに適切な資源を与え、マネジメントすることを確実にし、かつ、改善の機会を明確にし、取り組むことを確実にすることができる」と書かれており、PDCAサイクルを品質マネジメントシステムにとって重要な方法論であると位置づけています。

しかし、私が知る限りでは、PDCAサイクルの活用については否定的な受けとめが少なくありません。

 

例えば、マネジメントシステムのお手伝いをする際に、「PDCAサイクルを事業経営に活用しましょう」と言うと、「PDCAはごく当たり前の考え方で、いまさら取り上げるようなことではない」という意見が返ってくることがあります。

かつて、私が事務局担当者としてマネジメントシステム構築に携わっていた時もそうでした。

また私は、マネジメントシステム研修を担当する際に、参加者がPDCAをどのように考えているのか質問することがありますが、おおむね1/3~半数程度が「PDCAなんて当たり前」というご意見をお持ちのようです。

〝PDCAという考え方は古い〟というご意見もあるようです。

 

仮に〝PDCAサイクルは当たり前の考え方〟であるならば、事業経営のマネジメントの中で実践されているはずです。

そこで、PDCAサイクルの確立状況を測るための設問を用意しました。

まずは、下記の10項目について、自組織の現状がどうなっているのかチェックしてみて下さい。

 

a)ほぼこの状態(3点) b)ややこれに近い(2点) c)あまりこういうことはない(1点) d)こういうことはほぼない(0点)で点数を計算して、10点以上なら「要注意」、15点を超えていたら「赤信号」です。

 

 

《Planについて》

1.そもそも実行に移せるPlanが作成されているか。

目標が十分に絞り込まれておらず、日常管理事項や研究課題、単なる「願望」レベルのものなどが混在していないか。

 

2.具体的な実行計画はあるか。

単なるスケジュールや責任分担だけでなく、実施事項・必要な資源・結果の評価方法(いずれも規格要求事項)などは明確になっているか。

 

 

《Doについて》

3.Planは共有されているか

伝達しただけ(一方通行の報告のみ)ではないか。メンバーのコミットメントはあるか。

 

4.手順は確立されているか

前期以上のゴールをクリアするために手順の見直し・改善はなされているか。前期と同じ手順ではないか。

 

5.手順はみんなが実践できるか

必要な力量が確保されているか

 

6.手順を支える資源は確保されているか

人、モノ、時間、場所、設備、知識・技能など

 

 

《Checkについて》

7.適切なタイミングで必要なポイントの点検が実施されているか

意図した結果を達成できるタイミングでプロセスの点検がなされているか

 

8.「点検のための点検」は存在していないか

点検結果は必要な人に伝達され、活用されているか

 

 

《Actについて》

9.修正処置、再発防止処置が適切に実施されているか

是正処置報告書で「是正計画」を書いただけになっていないか。レビューされているか。

 

10.今期のPDCA各々の改善ポイントが次期のPlanに活かされているか。同じ失敗にならないか。

 

 

 

仮に、一部の部署であっても、組織の現状が上記の設問に対して「a)ほぼこの状態」や「b)ややこれに近い」という状態であったとして、それが「d)こういうことはほぼない」に改善されたら、仕事をすすめる上でどれほど力になることでしょうか。

 

「PDCAを事業経営に活用」するとは、そのことに他なりません。

 

 

 

2)解説書がいっぱい ・・・ PDCAの難しさとは

 

その一方で、書籍を検索すると、タイトルに「PDCA」と明記されているものだけで数十冊がヒットします。

これだけの解説書・参考書が出版されているということは、PDCAサイクルをどのように確立するのかについて悩んでいる、あるいは学ばなければならないと考えている人も少なくないということでしょう。

 

たしかに、PDCAが「サイクルとして回る」ためには、「計画」「実行」「点検」「改善」の各々に、それにふさわしい内容が求められます。

しかし、その考え方自体は難しいものではありません。

例えば、それは以下のようなものです。

 

Plan :1)目的を明確にする 2)管理項目を決める 3)目標(管理水準)を定める 4)目的達成手段、実行手順(作業目標)を定める。

Do   : 1)教育訓練を行う 2)実行手順どおりに実行する

Check : 1)目標が達成できたか 2)他に不具合はないか(副作用)

Act   : 1)応急対策(現象を取り除く) 2)再発防止策(根本原因を除去する)

(「現代品質管理総論」飯塚悦功著より)

 

ところが、この〝特段難しくない考え方〟が、実践に移されると様相が変わります。

例えば、「計画」の「1)目的を明確にする」について ・・・ 目的・目標の設定はマネジャーなら誰しもが当然行っている行為ですが、先の「設問」でも示したように、マネジャー全員が、目的・目標が備えるべき要件(例:経営全体の目標や中期的目標とのリンク、重点課題の絞り込みなど)をクリアできている組織は、私の知る限りそれほど多くありません。

 

「当たり前のことを当たり前に実行し続ける」ということは簡単なことではなく、それができる組織こそが優れた組織ではないでしょうか。

「PDCAサイクルを確立することの難しさ」とは、「考え方の難しさ」ではなく、「当たり前のことを当たり前に実践し続ける組織を築くことの難しさ」ではないか ・・・ 私はそのように考えています。

 

 

 

3)PDCAサイクルの確立のために ‐ その一例

 

誌面の都合上、今回はPlanの問題に論点を絞ります。

事業経営の現実は「Pのステップが完全に確立されてからDのステップに移行する」という単純なものではありません。

「目標」の大枠がきまり、「達成のための計画」がある程度形になった時点ではすでに実行がスタートしており、計画の仕上げと共有、必要な手順書の作成や教育訓練は「走りながら実施」というのが普通の組織の姿でしょう。

であるが故に、PDCAサイクルは、常に「場当たり主義」に取って代わられる危険性があります。

ある程度の「精度」で作成された計画であっても、あれこれの変化や突発的事象の発生によって「変更」を余儀なくされ、「計画」そのものが実質的に「棚上げ」される ・・・ 当初予定していたあれこれの課題の中で、当面の事業経営課題とは直接結びつかない課題(例:中期的な事項への準備、教育研修や安全課題など)を捨てて、〝なにがなんでも当面の事業経営課題を優先させる〟 ・・・ こうしてPDCAサイクルが崩壊していきます。

(今回は触れる余裕がありませんが、2015年版で明記された〝リスク対応〟は、「場当たり主義」を防止し、PDCAサイクルを確実に回すためにも重要な考え方です)

 

「PDCAサイクルの確立」のためには、そのことを意識したマネジメントシステムの確立と運用が必要です。

「PDCA各々の要素が備えるべき要件」と「PDCAの各要素をつなぐためのルール」を仕組みとして明確にして、それらの「運用状況の点検・改善」を通じて「運用に習熟」することが必要なのです。

 

年頭にあたり、PDCAという「当たり前の考え方」を「当たり前に実践できる組織」がより広がる年となることを祈念します。

 

(土居 栄三)

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