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活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第2弾 第4回 松本 隆(その1)

2018.12.10

 

つぶやき第4回を担当する松本 隆です。

 

現在、私は以下の1)~3)のように“3足の草鞋”を履いていますが、全体を通じて、ISO 9001に関連する仕事が大きな比重を占めています。

1)学校(ビジネススクール、高専)の非常勤教員
2)QMS/EMSの審査員
3)フリーのコンサルタント

 

今から数10年前、新入社員の私は、非鉄金属加工工場の製造現場スタッフとして生産技術課に配属されました。そこでの仕事は、現場作業・工程の効率化・標準化、製品の品質・歩留り改善のための現場実験等でした。その時以来、ものづくりにおける品質管理と標準化の考え方・手法を(多くの失敗に)学んで実践してきました。この過程で、後にTQM(Total Quality Management)と呼ばれるようになった日本的品質管理の良さを体得したと考えています。

 

このような経験を踏まえて、ISO 9001に関連して、普段考えていることを
断片的になりそうですが、これから2回に分けて、少しつぶやいてみます。

 

 

■1. ISO 9001とTQM

 

ISO 9001には、要求事項として 「shall: ~しなければならない」すなわち“What to do ?” はありますが、実現方法としての“How to do ?”はなく、それは実はTQMにあります。“ What to do ? ”を示すのがISO 9001であり、「解決策」として“ How to do ? ”を提供するのがTQMだと考えられます。その両者の共通のベース(基盤)は「社内標準化」であると言えるでしょう。TQMは、単なる概念(考え方)ではなく豊富・多彩な道具(手法)を含むことが大きな特徴です。

 

上記のTQMとの関係を考えると、TQMの考え方、手法がISO 9001の運用に大変役に立つと思います。もちろん、このような考え方は特別なものではなく、それが出来ている組織も少なくありません。しかし多くのISO 9001認証取得の組織では、いまだにTQMの考え方・手法の有用性は認識されてないし、活用されていないのが現状でしょう。

 

 

◆TQMとは?
TQM(Total Quality Management)とは,戦後日本がアメリカから学び、日本的な改良を加えて体系化したものです。
『TQM(Total Quality Management)は、
“総合的品質管理”とも呼ばれており,品質を中核とする経営管理のことで,
製品の品質向上はもとより,業務の質改善,企業競争力の向上など,
品質を重視した“品質経営”の方法である。
第2次世界大戦後,わが国産業の発展に大きく貢献してきた.

 

TQMは、
1)顧客の要求にあった商品(製品・サービス)を
2)経済的に提供する
ための活動の体系で,
① 顧客指向
② 継続的改善
③ 全員参加
により展開されるものである.』と定義されます。
(以上の『 』内は、「2019 QCダイアリー」p.2 日科技連出版社 から転記)

 

TQMは、単なる概念ではなく豊富・多彩な道具(手法)を含むことが大きな特徴だと思います。TQMの3つのキーワードは、上記①~③に対応する、品質(顧客指向)、全員参加、及び継続的改善だと言えますが、その3つは、現在のISO 9000の「品質マネジメントの7原則」のうちの3つにもなっています。これは日本の品質管理の専門家がISOの規格制定時に提案した結果だと言われています。

 

TQMの全体的な構造(構成要素)をどう考えるかは、学者や専門家によって多少異なりますが、以下の①~④のようなものです。

① 基本的な考え方:QC的ものの見方・考え方
② コアとなるマネジメントシステム:方針管理、日常管理、品質保証システムなど
③ 手法:問題解決法、QC七つ道具、新QC七つ道具、統計的手法、QFD、FMEA、FTA、DRなど
④ 運用技術:導入・推進方法、組織・人の活性化、QCサークル活動など

 

ISO 9001における「品質目標」の展開やフォローアップには、上記のTQMの「②コアとなるマネジメントシステム」の一つである「方針管理」の進め方が役に立ちます。また、ISO 9001における「プロセスアプローチ」全般については、やはり上記のTQMの「②コアとなるマネジメントシステム」の一つである「日常管理」の進め方が使えます。
多種・多彩な「③手法」の有効性については、言うまでもありません。

 

 

■2. ISO 9001と標準化

 

次に、ISO 9001とTQMの両者の共通のベース(基盤)としての「社内標準化」について、考えてみます。
以下に「社内標準化」の元になる「標準化」の国際的な定義と、旧JISの定義、そして日本品質管理学会の定義を示します(下線は、私が強調のために施したものです)。

 

1)国際的な定義-JIS Z 8202:2006(ISO/IEC Guide2:2004)標準化及び関連活動―一般的な用語
与えられた状況において、最適な秩序を達成することを目的に、活動又はその成果に対する規則、指針又は特性を規定する文書であって、合意によって確立し、一般に認められている団体によって承認されているもの。

2)旧JISの定義-旧JIS Z 8101:1981(1999年廃止)
関係する人々の間で利益又は利便が公正に得られるように統一・単純化を図る目的で、物体・性能・能力・配置・状態・動作・手順・方法・責任・義務・権限・考え方・概念などについて定めた取決め。

3)日本品質管理学会(JSQC)の定義-『品質管理用語』
関係する人々の間で利益又は利便が公正に得られるように統一・単純化を図る目的で定めた取決め。

 

 

旧JISや日本品質管理学会の定義に含まれている“統一・単純化”という表現は、国際的な定義にはありませんが重要です。“統一・単純化”という観点が抜けてしまうと、関係者の利益・利便や効果的・効率的な運営が得られないからです。

 

ISO9001では、決めるべき項目(what)は要求事項として明確になっているが、どのように・どの程度まで(how)決めればいいかは、その組織に任されているといえます。上記の「標準化」の考え方を抜きにして、「文書化」してしまうと、不必要に過重であったり、ルールとして機能しない「文書」だらけの品質システムができてしまいます。

 

例えば、品質マニュアルのような総括的な規程に簡単に記載すれば十分な場合でも、その下位文書としての「規程」を制定する。あるいは、フローチャートだけの手順書で必要・十分な場合でも、文章過剰の読みづらい「文書」となっていることがあります。
「文書化」(実は「文書過」)=「文章化」=「規定化」=「標準化」という誤解が多いと思います。

 

 

■3.品質保証体系図

 

製品の設計・開発からアフターサービスなどまでの一連の製品のバリューチェーンの中で、全社の各部門が果たすべき役割を明確にし、品質保証活動を確実に実施する道具(帳票)として品質保証体系図が作られます。
“品質保証体系図”とは、製品の設計・開発から製造、検査、出荷、販売、アフターサービス、クレーム処理などに至るまでの各ステップにおける品質保証に関する業務を各部門に割りふったもので、通常、フローチャートとして示されます。横軸に品質保証に関係する各部門および必要に応じて会議体、関連帳票類、標準書などの記入欄を設け、縦軸に品質保証活動を進めるためのPDCAサイクルを業務の流れとして書き表します。

 

この体系図の書き方は“業務フロー図”と同じ要領であり、個別の“業務フロー図”を全社的な品質保証活動全般に広げたものが“品質保証体系図”といえます。この図を縦横に見ることによって、手順の流れと部門間の分担・連携が明確になり、その組織の品質保証のやり方の“見える化”が実現できます。この品質保証体系図は、製造業だけではなく、サービス業においても、作成・活用ができます。

 

私は、ISO9001の仕組み構築を支援する時には、最初にその組織の品質保証体系図を時間をかけて作成してもらいます。それは、その会社固有の品質保証のやり方がこの品質保証体系図に集約されており、ここから基本的な組織としての品質保証上の特徴と問題点も出てくるからです。
私の審査においても、規格(ISO9001)の要求事項のオウム返しの様な品質マニュアルの場合は、品質保証体系図が、品質保証の仕組み・やり方を確認する重要な資料になります。認証取得後かなり経った組織でも、そのようなものはなく、規格(ISO9001)の4.4.1 b)「これらのプロセスの順序及び相互関係を明確にする。」ものに対応したものとしては、万国・全業種共通のISO9001の「図2-PDCAサイクルを使った、この規格の構造の説明」を少しだけ細かくアレンジしたものを提示され、「えっ?!」と思うことがあります。

 

 

以上で、今回の「つぶやき」は、終ります。
従来から私が考えていた、ある意味では当たり前の常識的で基本的な3項目でしたが、次回は、視点を変えた別の3項目の「つぶやき」をお伝えします。

 

(松本 隆)

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