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昨今の品質不祥事問題を読み解く 第14回 日本品質管理学会はどう考えているのか?(1)  (2018-8-13)

2018.08.13

 

今回から,2回にわたって連載を担当します.

 

私は,現在,一般社団法人日本品質管理学会(略称JSQC)の副会長を務めております.

JSQCでは,平成29年11月に,一連の品質不祥事に対する声明を発しました.

また,声明を出しっぱなしでは学会の意図が伝わらない,ということで,日本科学技術連盟,日本規格協会との共催で,緊急シンポジウム「”品質立国日本”を揺るぎなくするために~品質不祥事の再発防止を討論する~」を,平成30年2月21日(水)に早稲田大学小野記念講堂で開催しました.

 

今回は,この声明について,JSQCの副会長としての解説を行います.

次回は,私個人の見解を述べてみたいと思います.

 

以下に,JSQCの許諾を得て,声明の全文を掲載します.

原文は,http://www.jsqc.org/kinkyu.html#h291108を参照してください.

 

また,緊急シンポジウムのルポルタージュが,JSQCの学会誌である「品質誌」Vol.48,No.2に掲載されていますので,そちらもご参照ください.

 

 

 

 

■一連の品質不祥事に対する一般社団法人日本品質管理学会声明

 

平成29年11月(第58回品質月間)

一般社団法人日本品質管理学会

 

今般の(株)神戸製鋼所,日産自動車(株),(株)SUBARUによる品質管理に関わる不祥事について,(一社)日本品質管理学会(Japanese Society for Quality Control,以下JSQC)は,平成29年11月2日に開催した理事会で議論し,その総意をもって,わが国品質管理活動に関与する産官学全ての人々に,以下の3つの声明を発することとした.

 

 

1.(株)神戸製鋼所品質関連データ改ざんに関する声明

 

(株)神戸製鋼所並びにその関連会社で,着実な品質管理活動を行うべき企業としてあってはならない基礎データの改ざんが行われ,国内外の顧客に大きな不安と不信とを与えた.

(公財)日本適合性認定協会によれば,(株)神戸製鋼所アルミ・銅事業部門 大安工場,(株)神戸製鋼所鉄鋼事業部門 鉄粉本部 鉄粉工場,(株)コベルコ マテリアル銅管秦野工場,(株)コベルコ科研ターゲット事業本部はISO9001を認証取得している.

 

このように,国民からは着実な品質管理活動を行っているとみえる企業が,品質に関わるデータを改ざんしたことは,企業倫理にもとることはもちろん,わが国産業競争力の重要な源泉である産業界の着実な品質管理活動の信用を失墜させる行為である.

この70年間わが国の品質管理活動は,正しいデータに基づく品質改善の企業文化の確立に尽力し,今日の日本品質ブランドを築き上げてきた.今回の品質データ改ざんは,神戸製鋼グループのみならず,わが国において品質管理活動に尽力した多くの先人の努力を,無に帰す恐れのある行為で,残念でならない.

 

JSQCは,(株)神戸製鋼所に対して強い遺憾の意を表明するとともに,神戸製鋼グループが全社的品質管理活動を再構築し,グループの信頼回復はもちろん,わが国の品質管理活動の信頼回復に資する企業グループとして復興することを,強く要請することとした.

さらに,虚偽の品質データが顧客に報告されるというようなことが,わが国モノづくりの中で再発させないように,わが国の全企業の全役員・全従業員に対して,正しい品質管理活動と正しい品質文化を定着させることを,改めて要請するものである.

 

 

 

2.日産自動車(株)及び(株)SUBARUの無資格者による完成車検査に関する声明

 

日産自動車(株)および(株)SUBARUが,完成車検査を社内資格の無いものに任せたということを表明し,その品質管理活動に関して国民からの信頼を損なう状況を発生させている.

 

今般の不適合事象は,わが国品質管理活動のトップランナーの一つともいえる企業ですら,過度の生産性・コスト重視の環境下では,品質管理活動の基本である日常管理活動,定められた標準に基づく品質管理活動をないがしろにする危険性を示したものである.

決して,2社だけの問題ではなく,わが国産業界全てが総点検すべき問題と考える.

 

JSQCは,日産自動車(株)ならびに(株)SUBARUに対して強い遺憾の意を表明するとともに,2社に限らず,わが国産業界全てが初心に戻り,自社の品質管理活動を再点検することを切に要望するものである.

 

 

 

3.今後のわが国品質管理活動に関する声明

 

JSQCは,近年繰り返されているこの種の不祥事の再発防止に向けた取り組みを学会として進めることとした.

さらに,わが国の品質管理活動に関わる産官学全ての方々に対しても,わが国品質管理活動自体の品質向上に向けて,新たな行動の開始を呼びかけるものである.

品質重視は,先人達が苦労して築き上げ,世界からの信頼を得てきたわが国の貴重な文化であり,将来世代に継承しなければならない.

 

 

 

 

 

以上が,JSQCから発せられた声明です.

 

(株)神戸製鋼所に対するものと,日産自動車(株),(株)SUBARUに対するものの二つに分けています.

いずれもルール違反であることに変わりはありませんが,罪の重さ,逸脱の質の違いから,二つに分けることにしました.

直接的には3社に対する声明ですが,日本の全企業に対して,品質マネジメントの総点検をすべきであることを強く要求すること,そしてJSQCとしては,このような事態を防ぐための方法論の開発はJSQCにとっての重要な課題であり,今後それについて取り組んでいくことの2点をJSQC理事会で確認して,理事会の総意としてまとめたものです.

 

この声明を受けて,先の緊急シンポジウムを開催したわけですが,現JSQC会長の小原好一氏と私がパネルディスカッションに参加し,一連の不祥事に関するJSQCの考えを述べました.

その要点を以下にお示しして,JSQCの考え方の解説としたいと思います.

 

 

 

「品質経営の重要性」

 

・今回の件は品質問題かコンプライアンス問題か,が議論されることがありますが,「よい品質の製品」を出すためのマネジメントには,当然逸脱行為が起こらないようにするためのマネジメントも含まれます.

 

・広義の品質経営(逸脱行為を発生させたマネジメント・組織・ひとの質を重視する経営)を疎かにしてはいけません.

スピード感を伴う時代の変化に対応するためには,革新的な戦略を推進することに目が行きがちですが,品質経営を推進する組織やひとの育成が後回しになると,徐々に組織力は衰退し,気がつけば修復不可能なダメージが生じます.

 

・品質経営を実践していけば,品質不祥事が発生する可能性は低くなります.

それは,経営者から最前線の社員まで価値観を共有し,問題を顕在化させて自発的に解決していく力を個人個人が養っているので,リスクを低減できるからです.

また,問題を組織的に解決することに加えて,コミュニケーションと連携の仕組みを構築しているので,リスクをさらに低減できます.

 

・今回の品質問題の本質は,経営層のリーダーシップの有無にあると思います.

経営層は,マネジメントの質,組織の質,ひとの質,ものづくりの質を高める品質経営を,経営戦略の基本と考えなくてはなりません.

 

 

「問題を防ぐために取り組むべきこと」

 

・自動化・機械化すべき部分は進め,社員が注力すべき業務に専念できる環境を構築することが求められます.

ただし,自動システムを開発するのも,品質経営を機能させるのもひとですから,AIやIoTが進化しても,それはあくまでも道具であり,それを使いこなすのはひとの技能・スキル・知恵です.

 

・経営戦略には,社会の変化を先取る革新戦略と,時代を問わず不変の基盤戦略があります.これらを両輪として推進することが,経営層の役割です.品質経営は,基盤戦略に位置づけられます.

 

・不正が起こらないように監視する仕組みは必要です.

外部監査員による監査や,各種データの複数名での確認など,少し外の目,複数の目が入る工夫が必要です.

ただし,これらは,問題が起きないようにしようという意志を,トップから最前線の社員までの活動の共有が前提となって機能します.

 

・品質経営において,経営層は,「個の力と組織力の向上」(小集団改善活動,品質管理教育など),「プロセスで問題を発見」(プロセス保証),「問題が発生したら報告」(日常管理)等の仕組みを奨励する必要があります.

また,不正をしてはいけないという姿勢を,自ら示す必要もあります.

 

 

「JSQCとして取り組むこと」

 

・全国各支部の行事において,上記取り組むべきことの要諦を伝え続け,普及を進めます.

・上記の内容について,品質経営の志を共にする団体との連携を深め,経営層に訴求する活動を展開します.

 

(棟近 雅彦)

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