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昨今の品質不祥事問題を読み解く 第9回 品質不祥事問題と中小企業(1)  (2018-7-9)

2018.07.09

 

今回から3回にわたって、“品質不祥事問題”を中小企業からの視点で考えていきたいと思っています。

 

 

 

1.はじめに

 

2017年12月22日の日経新聞電子版には、2014年1月~2017年6月の4年半の間に上場企業によって公開された調査報告書120件を分析した結果として、28件は意図的ではない不祥事で、残る92件は意図的な『不正』で、そのうち15件が品質偽装などの『コンプライアンス違反』だった、という記事が出ていました。

 

さてそんな状況下、2017年には、2月の東洋ゴム工業のデータ偽装に始まり、日産自動車やSUBARUの無資格検査、神戸製鋼所のデータ改ざんに続けて、三菱マテリアル、東レ子会社などのデータ改ざんなど思いつくだけでも10件近くも数えられ、最近の品質不祥事発生の異常さが浮き彫りになった感があります。

 

そんな最中の、神戸製鋼所の品質不祥事が発覚した直後に、筆者がある中小の部品メーカーに行ったときの社長との会話です。

 

 

筆者:また今回も品質不祥事が発生しましたね。

社長:おかげさまで、うちは大丈夫です。

筆者:そうですか、注文に影響がなくてよかったですね。

社長:いやそうじゃないんです。

筆者:ああ、やっぱり社長のとこは、しっかりと品質管理をやって、“しつけ”も良いんですね。不祥事とは無縁ですね。

社長:いやそういうことじゃないんです。うちの材料はちゃんと入ってきて仕事ができています。

続けて社長は、(気のせいか)半ばなじるように語尾を上げながら言いました。

社長:うちもISO9001を10年前に取りましたが、ISOってこういうことが無いように、審査に来てくれているし、行っているんですよねー。

 

 

こんな会話をして、改めて感じたのは、中小企業にとって大手企業の品質不祥事は、顧客と供給者の両側面として、経営に多大な影響を及ぼしているという実態と、中小企業の抱くISO審査に対する不信の本音でした。

今回は、こんな会話を足がかりにして話を進めていきましょう。

 

 

 

 

2.品質不祥事は、本当に大手企業の問題だけなのか

 

新聞紙上で取り上げられているのは、その影響の大きさから、確かに大手企業の不祥事ばかりですが、数年前には、中小の食品会社でも食品偽装事件で、社会から非難の声が上がったのは記憶に新しいことです。

それが人の健康や安全に関わることであれば、会社の規模には関係ないことは誰にでも分かることです。

また、中小企業の供給する製品やサービスが、顧客企業の提供する製品の重要品質に影響する時には、新聞に出るのは顧客の企業名であっても、当該組織は取引が停められて、資金力の無い中小企業では廃業となり、むしろ、影響は甚大なものとなってしまいます。中小企業にとっても、決して対岸の火事ではないのです。

 

むろん、そのことは他人が心配しなくても、中小企業の経営者はだれよりもよく分かっています。

多くの中小企業の経営者は、連続する大手企業の品質不祥事をまのあたりにして、「うちは大丈夫なのか調査しなさい」という指示を品質保証部門に出しました。

本来は、品質保証部門も調査対象に出来るような組織単位に依頼するのが適切なのですが、中小企業にはそのような監査機能を持った組織はなかなか持ち得ませんので仕方ないでしょう。

 

依頼された品質保証部門は、製造現場や、検査部門の調査をして、問題の無いことを確認し、経営者にその旨を報告して、経営者は安心をする、というのが多くの場面です。

ところが、中には次のようなヒヤリとする例もありました。

 

A社では、社長から調査指示を受けた品質保証部は、はたと困りました。

実は、調べるまでもなく、あったのです。

品質保証部では、自部署で最終製品の特性検査をして、この結果を「試験成績表」に記載して、これを提供することを要求する顧客には、製品の納入時に添付していました。

ところが、5年ほど前に、顧客からの要求でその材料を変更することになりました。

この変更により、当該の特性値は時々、規格値を外れるようになってしまいました。

当初は「特別採用」の手続きにより、都度、顧客の許可を得て納入していましたが、そのうちに面倒になり、この手続きもしなくなり、お客様からの苦情もなく迷惑も掛けていないようだからと、虚偽報告の道をたどってしまったのでした。

 

B社では、顧客に製品を提供する時に、品質保証部が、顧客と取り決めをした特性値の検査結果を「検査結果報告書」として報告しています。

また、その報告書の一部の検査結果は、現場で検査した結果を転記して報告をしていました。社長からの指示を受けた品質保証部は、現場の検査結果を改めて確認をしたところ、実際の測定値は規格を逸脱しているものがあるにもかかわらず、だいぶ前から「合格」としていたことを発見しました。

なぜそのようになっているのかを聞くと、たいした逸脱でもないこと、先輩からちょっとくらいの逸脱は入ったことにして良いと聞いていること、現実にこれまでお客様からクレームを受けたこともないことなどを挙げて、その正当性を説明しました。

 

A社もB社も、結果として顧客へ虚偽の報告をしてしまいました。

幸いにして、いずれも顧客に報告して大事となることもなく解決した事例ではありますが、ひとつ間違えば顧客からの信用を失墜して、取引は停止されることも大いにあり得て、場合によっては会社の存亡に係わる重大事です。

 

今回は「品質不祥事」の代表的なものである、データ改ざんに焦点を絞って考えてみます。

このような例から見えてくるものはどんなことでしょうか?

このあたりを少し分析して、中小企業に必要な対応(ひょっとしたら中小企業だけではないかも知れませんが)について、話を展開していきましょう。

 

 

次回に続けます。

 

(丸山 昇)

 

 

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