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メルマガ⑥ QMSの大誤解はここから始まる

QMSの大誤解はここから始まる 第27回 ISO 9001認証を受けた会社は市場クレームを起こさないんですよね。(6)  (2018-4-16)

2018.04.16

 

いよいよ、本シリーズも最後の項目になりました。

 

『IS0 9001認証を受けた会社は、市場クレームを起こさないんですよね?』

 

のテーマは今回で6回目になりますが、今回から3回に分けて「認証審査」について取り上げます。

本シリーズの最後を締めくくる内容として、お読みいただければ幸いです。

 

 

 

(3) 認証審査

 

先週まで、「システムで結果を保証する」ことの限界について考えてきました。

それが、ISO 9001認証を受けていても、市場クレームを発生させてしまう可能性を残している一つの理由でした。

もう一つの理由があります。

それは「認証されていても」にあります。

システムで結果を保証するのが難しいのに、そのシステムを審査して認証するというプロせずに綻びあったら、認証されたQMSの結果はますます信じられません。

この誤解を誤解と言いたくない思いのうち、認証の信頼性に関わる課題について考えてみます。

 

 

 

■良い認証制度とは.....?

 

いつのことだったか、QMS認証機関の方に「第三者審査における良い審査とはどのような審査でしょうか」とお聞きしたことがあります。

お答えは、「もちろん、顧客組織のためになる審査です!」というものでした。

自明なことなのに、改まってつまらないことを聞かないでほしい、という感じでした。

 

 

私は言葉を失いました。

 

「いま顧客組織とおっしゃいましたか?」

「はい、私どものお客様である、認証されている組織です」

「認証制度の顧客は、認証結果の利用者であって、認証組織の顧客組織やもっと広くは社会と思いますが……」

「はあ? でも認証機関は認証組織から認証に関わる費用をいただいて、認証サービスを提供しています」

 

「QMS認証というのは、ISO 9001というQMSの基準に照らして組織を評価し、適合していたら認証を与えるというものですよね」

「ええ、そうですが、それが何か?(飯塚さんは、何をつまらないことを言っているんだ!)」

「同じような評価として、人の資格について考えてみました」

 

私は「○○士」というような資格制度において、良い評価、良い資格制度がどんなものか考えていただこうとしました。

少し性格が異なるかもしれませんが、良い「入学試験」についても、どのような試験が良い入学試験と言えるのか聞いてみました。

良い資格制度、良い入学試験とは、応募者、受験生のためになる制度、試験なのか、と聞いたのです。

私は、そうではなくて、資格制度なら資格があるかどうかを的確に判断する制度、入学試験なら入学に必要な学力があるかどうかを的確に判断できる試験が、良い制度、良い試験だろうと言いたかったのです。

 

その認証機関の方は、資格制度、入学試験については、分かってくれました。

でも、QMS認証、EMS認証は少し違うというのです。

 

「認証」と「認証サービス」の違いを分かっていただけませんでした。

認証機関は認証サービスの提供者ではなく、認証という社会機能を果たす機関のはずです。

 

 

 

 

■認証制度の質

 

「質」について考えるためには、何を(製品)誰に(顧客)提供するのかを明らかにし、その上で、顧客の視点・価値観でのその製品に対する評価こそが「質」と考えるのがよいと思います。

少なくもと品質論ではそのように考えてきました。

 

第三者認証制度における製品とは、審査結果(判定結果)、その結果がもたらす状態(認証されている状態、あるいは認証結果を利用する社会の状態など)と考えるべきと思います。

適合性評価制度の第一の目的は「能力証明」にあります。

 

良い能力証明とは、まずは的確な判断でしょう。

その判断の利用者は、第一義的には認証結果の利用者です。

認証の副次的目的として評価対象の「能力向上」があります。

その意味で、認証組織も制度の顧客と考えたくなるのでしょう。

認証機関の方が、QMS認証やEMS認証が、入学試験とは「少し違う」と言ったのは、このあたりに理由がありそうです。

 

さて、認証制度の質とは何であるか整理しておきましょう。

まずは、基準に照らし、適合・不適合の的確な判断をする制度かどうか、認証されている間は能力が保持されていると信用できる制度かどうかというような、制度の公正性、中立性、独立性に関わる性質があると思います。

透明性の観点から、関係者の属性、活動、結果について適時適切な説明のある制度かどうか、ということもあるかもしれません。

 

こうした性質の結果として、認証結果を信用し利用・活用できる制度(評価・判断の委託ができる制度)かどうか、国内外に広く通用する制度かどうか、認証組織にとって学習・成長の機会となる制度かどうか、というような認証制度の「価値」が議論されることになると考えます。

 

ところが、認証される組織にとっては、邪念も欲も頭をもたげかねません。「とにかく、安く、早く、簡単に認証してほしい」とか「お金を支払うのだから、わが社の経営に役立つ指摘をしてほしい」などと考えたくなるのも無理はありません。

 

 

 

■認証制度のビジネスモデル

 

そうなのです。

認証制度というのは、健全に機能させることが非常に難しいビジネスモデルになっているのです。

質の良い審査、制度の目的に沿った認証をする機関が発展するような制度運営構造には、必ずしもなっていないのです。

 

認証に必要な費用は申請組織が支払います。

その申請組織は認証されることを希望しています。

できれば、楽に認証されたいと思っているし、認証後は苦労なく認証を維持したいと思っていることでしょう。

認証費用を払うからには組織に役立つ審査をしてほしいと思っているに違いありません。

この結果として、安価にして甘い審査で合格にし、認証基準にあろうがなかろうが経営に役立つことを少し指摘してやれば、申請組織も認証機関もhappyになるという構図ができあがりやすいのです。

 

ここで忘れられているのは、認証結果の利用者のことです。

このことを、TC176/SC2の議長を辞めたばかりのNigel Croft氏は、本当の顧客の意向が入らず健全なフィードバックループが構成されていないという意味で“Missing link”と言いました。

私は経産省の専門委員会での議論を踏まえて「負のスパイラル」と言いました。

 

「不適合トラウマ」「不適合アレルギー」もまた、不健全な認証制度に誘導する要因となりかねません。

不適合の指摘があると、組織はもちろん認証機関もフォローが大変です。

時間もお金もかかります。

 

「是正が難しい不適合の指摘はやめてほしい……」と思いたくなります。

ついには、これが目的化してしまい、「そこを何とか観察事項に」とか、「不適合と言える確たる証拠と論理を説明してほしい」と迫る、ということになりかねません。

 

 

 

認証の信頼性を考えるにあたり、その基礎となる「適合」についての考察を次回で深めていきたいと思います。

 

(飯塚 悦功)

 

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