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QMSの大誤解はここから始まる 第15回 ISO 9001認証・維持に手間が掛かり過ぎて,本業が疎かになってしまう(2)   (2018-1-22)

2018.01.22

 

前回は、ISO 9001の認証・維持に手間がかかる、という組織の誤解を3つの視点で説明しました。

本日は、その誤解を解くための説明をしていきます。

 

 

 

 

その2 誤解を解く

 

 

(a) ISO 9001の運営管理の目的を明確にする

 

ここで以下に示すISO 9001の序文と4.1、6.1.1を確認してみましょう。

 

 

品質マネジメントシステムの採用は,パフォーマンス全体を改善し,持続可能な発展への取組みのための安定した基盤を提供するのに役立ち得る,組織の戦略上の決定である。(序文0.1)

 

組織は,組織の目的及び戦略的な方向性に関連し,かつ,その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える,外部及び内部の課題を明確にしなければならない。(4.1)

 

品質マネジメントシステムの計画を策定するとき,組織は,4.1 に規定する課題及び 4.2 に規定する要求事項を考慮し,次の事項のために取り組む必要があるリスク及び機会を決定しなければならない。(6.1.1)

 

 

これからわかるように、ISO 9001は企業戦略・経営方針とのつながりがあることが明白です。

したがって、ISO 9001はマネジメントシステムの中で一体化して運営管理することが大切です。

 

 

 

次にISO 9001の適用範囲を確認してみましょう。

 

 

この規格は,次の場合の品質マネジメントシステムに関する要求事項について規定する。

a) 組織が,顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供する能力をもつことを実証する必要がある場合。

b) 組織が,品質マネジメントシステムの改善のプロセスを含むシステムの効果的な適用,並びに顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項への適合の保証を通して,顧客満足の向上を目指す場合。

 

 

これを見ると分かるようにISO 9001のねらいは、品質保証活動を行うための能力の運営管理を行うことと品質保証活動を行うことで顧客満足の向上を図ることだと分かります。

このことをもう一度考えてみることが大切ではないでしょうか。

 

 

したがって、この目的を達成するための活動を行うことを再認識して、QMSを運営管理することが大切になります。

このことはトップから担当者に至るまで理解させることで誤解を解消することになります。

何事も目的志向に基づいた仕事を行うことが大切なことは言うまでもありません。

 

 

 

(b) 品質マニュアルの構造を自組織にあったものにする

 

品質マニュアルやその他の標準類に関しては、ISO 9001の序文では次のことが規定されています。

 

この規格は,次の事項の必要性を示すことを意図したものではない。

様々な品質マネジメントシステムの構造を画一化する。

文書類をこの規格の箇条の構造と一致させる。

この規格の特定の用語を組織内で使用する。

 

したがって、品質マニュアルの構造は、規格要求事項の改正に影響を受けないような構造にすることが効果的です。

 

この例として、次に示すような構造にします。

 

まず、品質マニュアル活用の本質を考えてみましょう。次に示す3つが考えられます。

 

1.自組織のQMSの概況を示し、組織内で活用する(社員のQMSに関する役割の認識向上)

2.顧客が組織の品質保証体制を評価するものとして活用する(B to B)

3.第二者監査や第三者の審査で活用する

 

このためには、組織のQMSの構造及びその活動状況が理解しやすいものにする必要があるので、次に示す方法を採用するとよいでしょう。

- 組織の事業運営に適した構造にする。(ISO 9001の箇条構成にしない)

- 組織で使用している事業活動の用語で記述する。

 

このことを考えて品質マニュアルの記述の仕方は、次に示す2つの方法があります。

 

方法1:QMSの基本的な仕組みを記載する方法

詳細は関連規程で明確にする

方法2:QMSの仕組みを詳細に記載する方法

小規模企業の場合

 

また、構造はISO 9001の構造にとらわれないで、方針展開プロセス、製品実現のプロセス、支援のプロセスの順番に分けて、プロセスの機能に着目して記述します。

このような方法を採用することで、ISO 9001の要求事項が改正されても品質マニュアルを改訂する際には、余分な手をかけないで維持できるという効果があります。

 

例えば、品質マニュアルは次のような構造にします。

 

1.組織概要

経営理念、戦略、経営課題など

2.提供している製品・サービス

3.品質保証体系

品質保証体系図

4.QMSの運営管理の目的

5.QMSの適用範囲

組織図、部門の役割・責任・権限、製品群名

6.適用規格及び自社固有の用語

適用規格:ISO 9000、ISO 9001、自社固有の用語及び定義

7.QMSを構成するプロセスの活動の概要

方針展開プロセス、営業プロセス、設計・開発プロセス、工程設計プロセス、購買・外部委託プロセス、製造プロセス、梱包・保管・輸送プロセス、生産管理プロセス、設備管理(社内システム含む)プロセス、測定機器管理プロセス、人材開発(教育訓練)プロセス、知的財産管理プロセス、安全管理プロセス、内部監査プロセス、改善活動管理(QCサークル活動、提案活動)プロセス、文書管理プロセスなどについて、プロセスフローと主な活動を記載する。

 

 

 

(c) 標準化についての方法を確立する

 

ISO 9001では、標準化の考え方についての要求事項は次のように規定されています。

 

7.5.1 一般

組織の品質マネジメントシステムは,次の事項を含まなければならない。

a) この規格が要求する文書化した情報

b) 品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した,文書化した情報

注記 品質マネジメントシステムのための文書化した情報の程度は,次のような理由によって,それぞれの組織で異なる場合がある。

組織の規模,並びに活動,プロセス,製品及びサービスの種類

プロセス及びその相互作用の複雑さ

人々の力量

 

これを見る限り、自社の活動に合わせて標準化をすることが基本であることが分かります。

ところが、文書と記録をどの程度まで明確にすればよいのかが分からないので、詳細に記述している場合があります。

これも誤解から生まれたものです。

 

標準化とは、効果的かつ効率的な組織運営を目的として,共通に,かつ繰り返して使用するための取り決めを定めて活用する活動のことであり,標準を設定し,これを活用する組織的行為のことです。

このことをもう一度考えて標準を作り直したらいかがでしょうか。

 

標準を作成するためには、プロセスのアウトプットが安定して要求事項を満たすようプロセスの要因(プロセスへのインプット,プロセスにおける作業,担当者,使用する経営資源)の条件を一定の範囲内に維持するための方法を確立する必要があります。

 

例えば、品質機能展開の一つである業務機能展開を活用し、次のステップで標準を作成することが効果的で効率的です。

 

手順1: 基本機能の明確化

手順2: 1次機能の明確化

手順3: 2次機能以下の明確化と単位作業(最終機能)の明確化

手順4: 単位作業のインプットの設定

手順5: 単位作業のアウトプットの設定

手順6: 単位作業の実施者の設定

手順7: 単位作業の管理項目(管理点・点検点)および管理時期の設定

手順8: 管理項目の管理責任者の設定(業務機能展開の完成)

手順9: 手順1~手順8に関する品質,コスト,量・納期,時間などに着目したリスクアセスメントの実施

手順 10: リスクへの対応

手順 11: 手順10の結果に基づいた手順8で作成した業務機能展開の修正

手順 12: 文書の制定

 

注)単位作業:一つの作業目的を遂行する最小の作業区分(JIS Z 8141)

 

また、標準は制定したら終わりではなく、事業活動の環境変化に合わせて常に改定し、作業しやすい方法を構築していくことが大切です。

したがって、自組織の運営管理にあったものにするような仕組みづくりが大切です。

以上のような活動を継続することで、真のQMSの運営管理を効果的で、効率的に行うことができ、ISO認証・維持に手間がかかり過ぎて、本業がおろそかになるという考え方を払しょくすることができるようになります。

 

(福丸 典芳)

 

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