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超ISO企業研究会メルマガ 番外編(4) (2017-10-2)

2017.10.03

 

 

ISO9001:2015版の活用について考える第3回目は、箇条4.3に規定されている「適用可能性」について述べたいと思います。

 

適用可能性という用語は「品質マネジメントシステムの適用範囲の決定」という重要な規格要求事項に関する規定の中に次のように出てきます。

「組織は,品質マネジメントシステムの適用範囲を定めるために,その境界及び適用可能性を決定しなければならない。」

 

 

適用可能性はいろいろな状況においていろいろな解釈が可能です。

適用可能性は組織の実態に合わせて規格要求事項を適用するというQMS の有効活用に一番必要になる概念です。

例えば、個人的な状況で考えてみましょう。

 

世の中には物事のハウツー本が溢れています。

記憶する方法、人と仲良くなる方法、上司に評価される方法、整理整頓する方法、試験に合格する方法、雑談の方法、効果的コミュニケーションの方法、ストレス解除の方法など数え上げたら切りがありません。

しかし、個人には個人の状況があり必要以上のことを実施しようとしても三日坊主で終わるのが落ちです。

自身の置かれている状況、何を達成したいのか、それに対処する能力、周りの環境、関係者のサポートレベルなど、そもそもこの方法を採用することは(自身の目的、目標と関連して)妥当なことのなのか、採用するにしてもどの程度そこに書かれていることを自分のものとして応用するのかなど、決める前に一歩踏み止まっていろいろと考えなければならないはずです。

 

 

適用可能性を一番広く解釈するならば、規格要求事項の組織への効用、影響、実効性などを考慮して、組織のどのプロセス、どの部署、どのマネジメントシステム要素に応用するのか、活用できるのかを分析することであると思います。

適用可能性を論じる場合、幾つかの切り口があります。

 

まず規格の規定の仕方に起因する適用可能性について述べたいと思います。

 

ISO9001:2015 には、「考慮しなければならない」、「該当する場合には必ず」、「必要に応じて」など組織の状況に応じて適用範囲、適用方法を考えなければならない表現が出てきます。

 

 

 

①考慮しなければならない

 

-4.3品質マネジメントシステムの適用範囲の決定

この適用範囲を決定するとき,組織は,次の事項を考慮しなければならない。

a)~c) 3項目

 

-6.3変更の計画

組織は,次の事項を考慮しなければならない。

a) ~d) 4項目

 

-7 支援、7.1 資源、7.1.1 一般

組織は,次の事項を考慮しなければならない。

a)、b)2項目

 

-8.3.2設計・開発の計画

設計・開発の段階及び管理を決定するに当たって,組織は,次の事項を考慮しなければならない。

a)~j) 10項目

 

-8.3.3設計・開発へのインプット

組織は,次の事項を考慮しなければならない。

a)~e) 5項目

 

-8.5.5 引渡し後の活動

要求される引渡し後の活動の程度を決定するに当たって,組織は,次の事項を考慮しなければならない。

a)~e) 5項目

これらの「考慮しなければならない」は、組織が考慮した結果適用するかしないか決めるという意味で「適用可能性」の対象となります。

 

 

②該当する場合には必ず

 

-7.2 力量

―7.5.3 文書化した情報の管理

-8.2.3 製品及びサービスに関する要求事項のレビュー

―8.4 外部から提供されるプロセス,製品及びサービスの管理

―8.6 製品及びサービスのリリース

―10.2 不適合及び是正処置

 

 

③必要に応じて

 

-5.2.2 品質方針の伝達

―6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定

―7.1.5.2 測定のトレーサビリティ

―7.5.3 文書化した情報の管理

―8.1 運用の計画及び管理

-8.3.5 設計・開発からのアウトプット

 

 

これら②「該当する場合には必ず」、③「必要に応じて」も適用する前に一歩踏み止まって考えるべき規格要求事項です。

 

 

次に更に本質的な適用可能性について述べます。

 

規格要求事項は適用可能性の観点から2分類できます。

一つは、規格要求事項が明確に組織のプロセスを示している場合です。

例えば、箇条8.3は明らかに設計プロセスに適用すべき要求事項を記述しています。

同様に8.2は営業プロセス、8.4は購買プロセス、8.5、8.6、8.7は製造プロセス(サービス実現プロセス)、9.2、9.3は経営プロセス、10は品質管理プロセスなどと言えます。

 

もう一つは、特定のプロセスに対してではなく、組織全体プロセス(すべてのプロセス)に対して要求している規格要求事項です。

例えば箇条7に要求されていることは総てそう言えます。

資源、力量、認識、コミュニケーション、文書化などは組織のすべてのプロセスに適用可能です。

しかし、経営プロセスに関与するトップ、役員、管理者の人々に力量、認識などの要求事項を適用する必要があるでしょうか。それは組織によって異なるかもしれませんが、一般的には力量、認識のある人が経営プロセスに付いていると考えてよいでしょう。

 

コミュニケーションについても、コミュニケーションの悪さが品質問題の要因として上がってきますが、それはどことどこのプロセス、どことどこの部門、どことどこの活動におけるコミュニケーションの悪さでしょうか。

すべてのプロセスでコミュニケーションを良くする活動を行うということは、どこのプロセスでもコミュニケーションを良くする活動が行われないことに繋がります。このように後者に属する要求事項は、組織が特定の状況、課題、文化、風土などから規格要求事項の適用可能性を吟味することによってより有効なQMSの構築に寄与することになります。

 

(平林 良人)

 

 

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