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ここがポイント、QCツール 第42回 管理指標(2) (2017-8-28)

2017.08.29

 

 

前回に引き続き,管理指標の第2回目の解説となります.

 

 

2.管理指標の本質的な意味

 

2-1.管理指標とそれに対応するアクションのタイプ

 

前回(第1回目)で,管理指標とは何らかのアクションを打つための物差しであることを述べましたが,アクションのない測定というのは現実的には何も価値を生みだしません.

したがって,今測ろうとしている管理指標がどのようなアクションを伴うものなのか,もう1度考えてみることをお勧めします.

そのためには,“アクション”にはいろんなタイプがあることを理解しておくことが有用だと思います.

 

アクションのタイプは,アクションを取るべき対象である“個々の製品・サービス”と“プロセス・システム”,そして“結果系”と“要因系”のどちらに重きを置いたアクションかの2×2の組み合わせの計4タイプあります.

以下,各アクション・タイプについて説明していきます.

 

 

(1) 処置(個々の製品・サービス×結果系)

 

ある一つの製品・サービスが出来上がった結果に対する直接の追加的処置を指します.

例えば,対モノについては,“使えないようにしておく,使えるように修正・修理する”,対情報については“使えないようにしておく,使えるように修正する”などがありえます.

 

 

(2) 修正(個々の製品・サービス×要因系)

 

当該個別製品・サービスの提供に必要なプロセスの条件(インプット,場所,タイミング,人,モノなど)に対する一時的な修正を行ったり,プロセス自体を再実施することを指します.

例えば,対インプットについては“生産計画,作業指示内容の変更”,対人では“作業者の変更,役割分担・責任権限体制の変更”,対モノにおいては“使用する材料の追加・変更,機器・機械の交換”などがあります.

 

 

(3) ベンチマーク(プロセス・システム×結果系)

 

プロセス・システムとしての結果を用いて,自組織で設定した目標値と実績値を比較したり,他の組織・施設・工場との比較による自組織の位置づけやレベルを把握することに意味します.

 

 

(4) プロセス/システムの改善(プロセス・システム×要因系)

 

製品・サービスを提供するメインプロセスの流れ,プロセス条件そのものの恒久的な改善を行ったり,それを支えるサポートプロセス,マネジメントプロセスの仕組み=QMSを改善することを指します.

例えば,サポートプロセスにおいては,教育システム,材料の購買管理,機器・設備のメンテナンスの仕組み,マネジメントプロセスでは病院方針の作成,QMSの計画策定プロセス,QMS改善プロセスなどを指します.

 

皆さんが既に取っている,またはこれから取ろうとしている管理指標が,上記の(1)~(4)のどのようなアクションに結びつく(べき)ものなのかをよく考えてみてください.

 

 

 

 

2-2.管理の対象と側面

 

管理指標とはある業務のアウトプットの達成度合いを測る尺度である,と説明しました.

では,その業務のアウトプットをどのようにとらえればよいかを説明します.

 

ある業務のアウトプットとしてわかりやすいのは,目に見える物的な(最終)製品の場合です.

これの良し悪しは,まさに出来上がったその最終製品に備わった機能・性能,信頼性・安全性,見た目などの品質要素がいかに顧客ニーズに合致しているかで決まりますので,“製品の品質要素”という形で捉えることができるでしょう.

もちろん,最終製品ができる前の途中の業務プロセスであれば,その中間製品をアウトプットとして捉えます.

 

また,業務のアウトプットが情報を扱う場合(例えば,情報を分析するという業務)では,そのアウトプットは“分析・加工された情報”であると捉えればよいでしょう.

また,運搬業務(ある場所からある場所への移動)のような,モノを扱ってはいても特に物理的な加工はしない業務では,そのモノが置かれている状況(またはその変化)がアウトプットとなりますし,機械・設備のメンテナンス業務のアウトプットは,その機械・設備がいつでも使えるような状況であることがアウトプットになります.

 

例えば,大学においては学生たちが大学教育における製品,顧客を就職先企業や社会であると捉えれば,大学卒業後において学生が習得しているスキル・能力が何であるかを考えることが大学教育のアウトプットを考えることになるでしょう.

もちろん,この場合,大学教育の質はその学生の能力・スキルがいかに就職先企業や社会のニーズに合致しているかで決まることになります.

 

さらに,そのアウトプットが良いか悪いかを捉える側面にもいろいろとあります.その有力な視点として,既に皆様もご存知の

 

Quality:品質

Cost:生産性・効率性

Delivery/Quantity:量・タイミング,スピード

Safety:職員安全

Environment:(地球)環境

 

があります.

 

これらは,業務のアウトプットは多面的な視点から捉えることができることを示しています.

これら5つの視点に加えて,近年ではMoral(モラル,倫理,法律順守)を逸脱するような事故,不祥事が起きているので,このような視点も追加してもよいかもしれません.

 

 

例えば,医療における(採血を伴う)検査業務を考えてみると,

 

Q・・・対象患者の必要な検査項目の情報が欲しいタイミングで把握できる,検体採取の傷みが少ない

C・・・検体取り間違え(取り直し)がない,作業量が少ない,設備稼働率が高い

D・・・早く検査項目が挙がってくる,1日に最大で1000件処理できる

S・・・職員への感染がない,設備の取り扱いミスによる怪我がない

E・・・感染性廃棄物を適切に処理している,1件当たり廃棄量が少ない,電気使用量・CO2排気量が少ない

M・・・検査前に患者に同意をとっている,検査機器は然るべき外部精度管理を行っている

 

と挙げることができます.

 

皆さんが既に取っている,またはこれから取ろうとしている管理指標が,どのようなアウトプットを想定し,上で示すQCDSE+Mのどの側面に着目したものであるか,考えてみてください.

これによって,今取っている管理指標が妥当なものであるか,また別のあらたな管理指標を取るべきかなどが見えてくるはずです.

 

(金子 雅明)

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