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ここがポイント、QCツール 第38回 製品安全(2) (2017-7-24)

2017.07.24

 

製品安全についての続き(2回目)です。

 

 

 

安全設計

 

使用の場における3つの要素、製品・人・使用環境に着目して実際の製品事項を分析した研究報告によると、使用段階での製品事項発生メカニズムは以下の3つに類型化できるとされています。

 

(1) 発生メカニズム 1: 使用環境や使用時のストレスの作用により製品そのものに亀裂・破損などの経年変化が生じ、これが原因となって製品事故に連鎖し発生する

(2) 発生メカニズム 2: 安全ガードなどの取り外しなどによる使用段階での製品改造の行為が生じ、これが原因となって製品事項へ連鎖し発生する

(3) 発生メカニズム 3: 製品とユーザーのインタフェイスに誤認識やモード選択の誤りが発生し、これが原因となって製品事故が発生する

 

発生メカニズム 1による製品欠陥には、信頼性設計のアプローチが必要になります。

信頼性設計とは、使用環境条件と目標寿命などの限界に対して適切な余裕を確保することであり、ロバスト設計と経年変化に対する配慮が要求されます。

 

発生メカニズム 2による製品欠陥では、製品が使用される中で意識的・無意識的に関わらず、製品の構造を変化させる改造が問題となります。

使用の場で改造が必要或いは生じうるプロセスに着目すると、

 

a) 物理的・化学的変化による機能劣化や故障などの使用可能な状態への復元、

b) 安全ガードを取り外す例のような使いにくい状態の改善、

 

の2つに類型化できます。

 

a)については、製品信頼性に、b)については、次に述べる発生メカニズム 3に還元でき、設計や指示・警告表示による対応を進めることで、事故を防ぐことができます。

 

発生メカニズム 3による製品欠陥では、ユーザーと製品のインタフェースが関連します。ユーザーインターフェースは、下記の2つに分けることができます。

 

(1) 製品の表示系などから情報を受け入れる目や耳などの感覚器官、及び人の意思を伝える手足の運動器官、との情報や意思の伝達に関わるインターフェース

(2) 感覚器官を通して取り入れる情報が人の脳で処理しやすいように流されているかどうかという認知インターフェース

 

 

前者のインターフェースには、計器の形状やレイアウトが目に見やすいように配慮されているか、操作系ではペダルやスイッチの形状、強度、剛性、レイアウトが操作しやすいように考慮されているかが影響します。

後者の認知的インターフェースは、製品にコンピューターが内蔵され自動化機構の進展とともに重要性を増しています。

感覚器官からの情報は、人の場合には中枢神経系である脳で処理されます。

脳における情報処理の特徴を理解して、人に親切でやさしい自動化を進めることが、認知的インターフェースの要点となります。

 

 

 

製造物責任法(PL法)

 

損害賠償責任には、契約関係の有無により、契約責任及び不法行為責任の2つの考え方があります。

歴史的には、当初は製品起因の事故で生じた損害賠償責任は売買契約による契約関係に基づいて判断されており、購入者自身でなければ製品事故による損害賠償が認められませんでした。

現在では、製品の種類を問わず、購入者から借りて第三者が使用していて製品事故による損害を受けた場合も、損害賠償責任を問う権利が認められるようになっています。

民法709条では、損害と製品欠陥の因果関係、欠陥が故意または過失により作りこまれたことを立証条件とする、損害賠償請求権が認められてきたが、立証条件が消費者に不利と言う事で、故意または過失の立証条件を削除し、製品欠陥要件のみで製造業者などの賠償責任を問うことを可能とする製造物責任法が1995年7月1日に施行されました。

 

 

製品の欠陥

 

製造物責任法の適用には、以下の3つの要件が満たされる必要があります。

 

(1) 損害賠償が問われる客体は、製造物

(2) 製品欠陥による拡大損失が発生

(3) 損害賠償が問われる主体は、製造業者

 

第1の要件の製造物とは、製造業者が引き渡した時点で「製造又は加工された動産」即ち製造物であり、第2次産業に関わる製品が対象となります。

製造物責任における製品欠陥は、製品の単なる品質上の瑕疵の問題ではなく、人的損害や当該製造物以外の物的損害の発生を前提としています。

製造物責任法2条2項で、「欠陥とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者が、当該製造物等を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう」と規定しています。

欠陥の判断に際しての考慮事項として、a)効用・有用性、b)表示、c)価格対効果、d)通常使用期間・耐用期間、e)被害発生の蓋然性とその程度が挙げられています。

また、通常予見される使用形態には、意図しないが合理的に予見可能な使用形態が含まれます。

 

 

製造物責任防御

 

安全にかかわる問題が発生しないように、また発生した場合に事前に備えることは、製造物責任予防と呼ばれています。

製造物責任予防は、製品事故による損害賠償が提起された場合に備える製造物責任防御と、消費者に安全な製品を提供する製品安全の2つに分けらます。

製品欠陥による損害賠償訴訟に備えた活動が、製造物責任防御です。

製造物責任防御は、さらに、訴訟が提起された場合の応訴方針決定と訴訟に備えた活動の2つになります。

訴訟に備えての具体的な対応としては以下の3点が挙げられます。

 

(1) 製造物責任に関わる相対交渉や訴訟対策としての文書管理

(2) 製造物責任訴訟での敗訴に備えた損害賠償金の履行確保

(3) 製品事故発生への迅速で組織的な対応を可能とする体制の構築と整備

 

文書管理においては、保存のみでなく廃棄したことが客観的に証明できることも重要です。

損害賠償金の履行の確保には、製造物賠償責任保険が一般的です。

 

製品事故発生時には、組織として迅速に対応することが影響を最小限にする基本です。企業のトップは、対応方法によっては組織の存続にかかわる問題と認識して迅速・的確な対応を取る事が重要です。

 

 

参考文献:

「安全設計の基本概念」日本規格協会、監修:向殿政男

「新版 品質保証ガイドブック」日科技連出版、(社)日本品質管理学会編

 

(住本 守)

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