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ここがポイント、QCツール 第35回 統計的手法(2) (2017-7-3)

2017.07.03

 

前回より始めた統計的手法についての第2回目です。

 

 

 

■統計的ものの見方

 

前回申し上げましたように,品質管理においては様々な統計手法が使われます.

こうした手法の内容に関する知識はそれ自体たいへん有用ですが,同時にその底に流れる「統計的ものの見方」の理解こそが,手法を適用する際にはより重要となります.

なぜなら,品質を管理するにあたって,その根底にある科学的方法論の基礎となる考え方を身につけることが,その考え方の具現化としての手法よりもずっと重要だからです.

 

それでは,「統計的なものの見方」とは,一体どのようなものの見方を指しているのでしょうか.私は以下の3つに整理しています.

 

(1)事実とデータに基づくこと

(2)ばらつきを認めること

(3)傾向は真実の現れと思うこと

 

第一項については,言うまでもないと思います.主観的な感じではなくて,客観的観測手段によって得られた情報を数量化した「データ」に基づくという態度です.

 

 

第二項では,2つのことを言っています.

 

第一は,私たちが対象とするものに全く同じというものはなく,必ず「ばらつき」があるということ,言い替えれば「母集団はばらつきをもつ」という認識のことを言っています.

 

第二は,観測し得るものは知りたいことのすべてではなく,私たちが知り得たことは全体の一部であって,観測の機会が異なればいま手にしたものとは違った情報を得たであろうという認識を持つことを言っています.

 

 

第三項においては,第二項で挙げた「ばらつき」によって本物を見ることができないからといって悲観することはなく,ばらついてはいても多数を観測してある傾向を見いだすことができたら,それは真実として一応受け入れようという態度のことを言っています.

 

統計的方法について少し詳しい方なら,第二項の第一は,母集団を構成する要素の分布のこと,第二は,観測データから計算される統計量がばらつくことを言っているとお気づきのことでしょう.

また第三項は,仮説検定や推定のことを言っているがお分かりと思います.

 

 

 

 

■統計的方法の利用目的,使われ方

 

さて,こうした統計的なものの見方を基礎として,科学・技術において統計的方法はどのように使われるのでしょうか.

うまく整理できていないかも知れないのですが,次の4つと言ってよいと思います.

 

(1)対象の理解

(2)因果関係の推測

(3)妥当な予測

(4)妥当な制御・管理方式の導出

 

第一に,「ばらつき」があるゆえに確実には見ることのできない対象についての,真の値,真の構造などの本質的部分を抽出し,理解し,説明するために統計的方法が用いられます.

例えば,観測対象を何回か測定して,それらの測定値の平均を取ることによって,真の値に対するより精度の高い推定値を得ようとします.

 

第二に,対象の挙動を支配する因果メカニズムを理解するために統計的方法が使われます.

ばらつきゆえに見えにくくなっている「関係」を浮き彫りにし,対象に固有の分野の知識を援用して,現象間の因果関係を推測します.

例えば,ある特性の値を左右していると思われる要因を挙げ,それらの要因の水準を変えたとき特性がどう変化するかを調べた実験データを取得し,その特性がそれらの要因によってどう変化するかその因果関係を推測します.

あるいは,特性値とその原因と思われる変数群の間の対応のあるデータの回帰分析によって,その特性値を左右する因果構造を探ろうとします.

 

第三に,対象に関する過去の状況,他の対象に関する状況との関係を,ばらつきに邪魔されながらも定量的に推測し,将来を予測したり,失われた情報を推量します.

例えば,回帰分析,時系列データ解析などは,このための代表的な手法と言ってよいでしょう.

 

時間的・空間的に起きていないことを推測するわけですから,観測したときと同じ構造が予測をしようとする世界にも成立するという仮定が必要なことは言うまでもありません.

 

第四に,因果関係メカニズムの推測,予測方式の確立を基礎として,工学的な目的に合致するように,制御方式を導いたり,管理方式を設定したりします.

実験計画法,応答局面法,重回帰分析などによって得られた,因果メカニズムの推測・予測式をもとに,制御や管理の方式を導くなどです.

 

科学の方法論によって,私たちは,自然現象や社会現象を支配する法則を,観察とそれに基づく論理的思考によって知ろうとします.

工学において,私たちは,自然科学法則を利用して,社会的に有用なものを生み出そうとします.

一つとして同じものがないこの宇宙で,その本質を理解し,活用しようとするとき,上述した「統計的ものの見方」がその根幹をなすことは疑いようがありません.

そしてこれら統計的ものの見方を基礎として,対象そのものの理解,因果関係の理解,制御・管理方式の設定,予測方法の確立などを合理的に行おうとするのは,自然な行動様式と言えます.

 

品質管理においても,統計的方法がその基盤として重要なことは,品質管理が科学的方法論を採用している限り,当然のことなのです.

 

(飯塚悦功)

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