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ここがポイント、QCツール 第32回 FTA (2017-6-5)

2017.06.05

 

今回はFTAについて説明していきます。

 

FTA(Fault Tree Analysis)は 、火災・事故などの好ましくない事象の原因をたどってその因果関係を論理記号と事象記号を用いてFT図を用いて解明していく解析手法です。

その特徴は、論理の厳密性と定量的な解析、視覚的な表現方法にすることです。

 

以下にFTAを使いこなすためのポイントについて説明します。

 

 

 

1.はじめに

 

FTAは、1962年にミニットマンミサイルの信頼性評価・安全性解析を目的として、協力先であるベル研究所のH・A・ワトソンのグループが開発した手法です。

この手法は安全関係を中心に使用されてきましたが、その後信頼性の分野でも使用されるようになっています。

 

ここでは次に示す方法で展開されています。

 

① 失敗状況をテレメトリーデータ(制御モード履歴、加速度、角速度などの姿勢角履歴、推進計圧力履歴など)をもとに、事象の履歴、挙動についての定性的・定量的に把握する。

 

② 失敗状況の把握に基づき、ETA(Event Tree Analysis)の手法を併用して失敗の内容を時系列で表現して明確に定義し、これをFTAのトップ事象とする。

 

③ トップ事象について、解析対象についての機能と原理・方式、配置と構造などのコンフィグレーション、類似の蓄積情報などを活用して、逐次論理的に展開する。

 

 

 

 

2.FTAの定義と活用

 

FTAとは、下位アイテム又は外部事象、若しくは、これらの組合せのフォールトモードのいずれかが、定められたフォールトモードを発生させ得るかを決めるための、フォールトの木形式で表された解析手法のことです 。

FTAは、信頼性又は安全性上、その発生が好ましくない事象に対して、論理ゲートを用いながら、その発生の経緯を遡って逐次下位レベルに展開し、発生経路および発生原因、発生確率を解析することによってトップ事象が発生するメカニズムを解明する技法であり、例えば、信頼性の設計、製造設備の故障分析に使用します。

 

 

 

 

3.FTAの目的

 

FTAの目的は、次に示すとおりです。(JIS5750-4-4参照)

 

−  トップ事象を発生させる原因又は原因の組合せの明確化

−  特定のシステム信頼性尺度が、所定の要求事項を満たすか否かの決定

−  システム信頼度の実現可能な改善策を明確化するために、どの潜在的な故障モード又は要因が、システムの故障発生確率(不信頼度)又はシステムが修理可能な場合はアンアベイラビリティに最も強く影響しているかの決定

−  システムの信頼性を改善する様々な設計代替案の解析及び比較

−  他の解析[例えば、マルコフ及びFMEA]で行った仮定が妥当であるという実証

−  安全問題を引き起こすことがある潜在的故障モードの明確化、対応する発生確率の評価及び低減策の可能性の評価

−  共通事象の識別

−  トップ事象の発生を最も高い可能性で引き起こす事象又は事象の組合せの探索

−  トップ事象の発生確率に対する基本事象の発生の影響の評価

−  事象の発生確率の計算

−  定常状態を仮定でき、かつ、実施する修理が互いに独立している(成功パス図/信頼性ブロック図に関する制約と同じ制約である)場合の、FT 図によって表すシステム又はその構成品のアベイラビリティ及び故障率の計算

 

 

 

 

4.FTAの実施時期

 

FTAは、次の状況に応じた時期に実施すると効果的です。

 

① 故障の事前解析としてのFTA

これは設計時に信頼性を作り込むためのFTAです。

FTAの実施時期には、次の二つがあります。

a) 重要故障モードが分かっていない場合

例えば、構想設計⇒FMEAの実施⇒重要な故障モードの選定(トップ事象の選定)⇒FTAの実施

b) 重要故障モードが分かっている場合

例えば、構想設計⇒FMEA及びFTAの実施(どの故障モードが重要であるか既にわかっているので,FMEAをスキップしても良いが,その故障モードがどのぐらい重要かを再度評価して確認したい場合もある)

 

② 故障の事後解析としてのFTA

ユーザー(セットメーカー)、エンドユーザー(市場)で発生した重要原因の問題を論理的に究明するためのFTAです。

例えば、市場などで問題が発生(トップ事象選定)⇒FTAの実施⇒機器分析による解析

 

 

 

 

5.FTA で用いる事象記号と論理ゲート

 

FTAを実施する際には,トップ事象が起こり得る発生メカニズムをツリー構造で記述するFT図を作成することになります。

FT図の作成に用いる事象記号と論理ゲートを説明します。

 

① 事象記号には、次に示すものがあります。

・事象:個々の事象を表す。通常は故障事象を示し、論理ゲートの入力または出力となり、望ましくない事象(爆発や火災などの安全上の致命的な事故)、「パソコンが起動しない」などのシステム上の不具合が該当します。

・基本事象:もうこれ以上展開されないような基本的な事象を示し、常に論理ゲートの入力であり、出力となることはなく、スイッチの不良、電池の液漏れや操作ミスのヒューマンエラーなどが該当します。

・非展開事象:情報不足、解析技術の不十分などのため、現時点では、それ以上展開できない事象を示し、FTAを比較的早い時期に実施した場合に、故障事象ではあるが、その時点では情報不足のため原因が追究できない場合などが該当します。

・移行事象:FT図上の関連する部分への移行または連結を示し、三角形の頭上からの線のものは入る移行を示し、横からの線は出ていく移行を示します。

 

② 論理ゲートには、次に示すものがあります。

・ANDゲート:すべての入力事象が起きたとき出力事象が起こることを示します。AとBの両方の入力事象が存在しなければ、出力事象Xは存在しないです。(論理積)

・ORゲート:入力事象のうち少なくとも1つが起きると出力事象が起こることを示します。AあるいはBの入力事象のうち、いずれか1つ存在すれば出力事象Xが発生します。(論理和)

・制約ゲート:このゲートは、入力事象が起きるとともに、ある条件を示す事象が起きたときのみ出力事象が起こることを示します。Aの事象が存在し、かつCの条件事象が満足されると、はじめて出力事象Xが発生します。

 

 

 

 

6.FTA の手順

 

FTAの手順は、次の通りです。

 

手順1 チームを編成し、FTA実施に必要な資料を入手します。

FTAは故障解析であり、その製品に関する知識、固有技術、故障に関する経験をもっていなければ解析することが難しいので、関係者の知見を結集することが大切です。このため個人で解析するのではなく、それぞれの専門家でチームを組むことでその成果を上げることができます。

資料の入手では、次の事項に着目します。

(1)設計標準の整備または収集

・新製品企画書

・製品、部品仕様書、回路図

・材料リスト

・設計構想図

・部品展開図

(2)その他関連資料の整備または収集

・前もって実施したFMEAの結果

・信頼性ブロック図

・アセンブルユーザー、エンドユーザーでの使われ方、要求品質、目標品質のわかる資料

・類似故障に関する資料

・品質改善資料、失敗の記録

・使用材料の特性に関する資料

 

手順2 解析の対象となるシステムの編成・機能・作動を確認します。

 

手順3 システムについてのトップ事象を選定します。

トップ事象は漠然とした事象ではなく、具体的に示すことが大切です。このために、トップ事象は、次に示す事項を考慮して選定することが効果的です。なお、ハードウエアの場合には、FMEAで区分する致命度の高い結果に相当する場合が多いです。

・システムダウンのような業務が遂行できない又は機能を果たせないもの

機能を果たせない例として、石油ファンヒータの場合では、「温風が出ない」ことをトップ事象とします。

・人命の損失や財産の重大な損失(火災や爆発など)のような安全に対する脅威

・通信機能の中断などのような収益に重大な影響を与えるもの

なお、新製品設計の場合には、トップ事象の選定では次の事項を考慮することが大切です。

(1) 類似製品のない場合

FMEAを実施し、その中で評価点の高い事象

(2) 類似製品のある場合

① FMEAを実施し、その中で評価点の高い事象

② 類似製品での過去の市場、工程での故障(事故)

なお、トップ事象の条件は、次の通りです。

・明確に定義することができること(測定可能であることが望ましい)

・下位レベルの事象を包括するものであること

・設計その他の方法で対処できる性質のものであること

 

手順4 手順3で定められた事象(故障)につながる1次要因(サブ・システムレベル)を列挙し、 それらに関連する外部要因を吟味します。

例えば、電気シェーバーで、「刃が回転しない」というトップ事象に対して、その原因となる事象を考えるには、刃を回転させるための機能を考えます。このためには、機能ブロック図や信頼性ブロック図を利用することが大切です。機能ブロック図から電気シェーバーの各機能がどのような役割を果たしているかを考えることで、抜けや見落とし防止につながります。

「刃が回転しない」一次要因は、電池の不具合、制御器の故障及びメインスイッチの故障が考えられます。

 

手順5 手順4で得られた要因と事象との因果関係について、論理記号を用いて結びつけます。

「刃が回転しない」の一次要因として明確にしたこれらの事象のどれか1つ存在しても刃が回転しないことになるため、ORゲートで結合します。

 

手順6 FT図の作成

手順4及び手順5を繰り返して、構成品レベルまたは部品レベルと展開し、もうこれ以上分解できないレベルまで続け、FT図を描きます。

 

手順7 解析

解析には、定性的解析と定量的解析があります。

(1)定性的解析

基本事象の発生確率を推定できない場合は、定性的解析を行います。この際には、潜在的に望ましくない結果の原因を調査します。この定性的解析では、基本事象群がどのようにトップ事象に影響を及ぼすかを決定するために、ミニマルカットセット(トップ事象を引き起こすために必要な最小限の事象から構成する集合、最小カット集合ともいう)を抽出し、対策を打つべき発生経路を検討します。

(2)定量的解析

基本事象の発生確率がわかっているか、推定できれば、確率計算法則を用いてトップ事象の発生確率を明確にすることができます。このためには、各基本事象の故障率データが必要です。これらのデータは、試験データ、故障データ、過去の経験の蓄積から得られます。これに基づいて各要因、条件の発生の確率 を故障の木の各部に割り付け、論理記号にしたがってトップ事象の発生確率を計算 します。

 

手順8 対策・改善処置の検討

トップ事象の発生を防ぐための効果的な改善対策を検討します。

 

 

 

 

7.FTA実施上のポイント

 

・関係部門、固有技術を保有している要員が参加して要因展開を進めること。

・過去の事故事例、不具合事例に関する知識を活用すること。

・FT図作成後は、各基本事象に対してどのような対策をとったかをフォローすること。

・FTAの結果はデザインレビューへのインプット情報とすること。

・FTAの解析結果は、知識として活用するため、データベース化すること。

 

 

 

(福丸 典芳)

 

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