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ここがポイント、QCツール 第31回 FMEA (2017-5-29)

2017.05.30

 

3回続いたプロセス分析のお話しから変わり、今回はFMEAを取り上げます。

 

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)は、新製品開発で使用される信頼性設計のための手法であり、これを活用することで製品の信頼性向上に役立ちます。

ところが、設計変更が多発する、販売後にクレームが多発するなどの問題が発生することがあります。

これらの原因の一つとして、設計段階における故障モードに関する検討不足があり、これらのトラブルを防止するための方法としてFMEAを活用することが製品品質の向上につながります。

なお、FMEAには工程FMEAもありますが、ここでは設計FMEAを使いこなすためのポイントについて説明します。

 

 

1.はじめに

 

FMEAのベースになるのは、1949年に制定された米軍規格MIL-P-1629(FMECAの実施手順)に遡ります。

これをもとに1966年アポロ計画の信頼性プログラム計画書にFMECAの実施が明確になっていました。

FMECAとは、FMEA表とCA(Criticality Analysis:致命度解析)表を用いたものです。

その後、防衛・航空宇宙・通信・放送・自動車などの国内基幹産業において、信頼性手法として活用されてきました。

 

 

 

2.FMEAの定義と活用

 

FMEAとは、あるアイテムにおいて、各下位アイテムに存在しうるフォールトモードの調査、並びにその他の下位アイテムおよび元のアイテム、さらに上位のアイテムの要求機能に対するフォールトモードの影響の決定を含む定性的な信頼性解析手法のことです。

FMEAは、製品設計、工程設計などの設計に起因する課題を、機能や作動状態に着目して検討し、故障モードや不良モードの概念により事前に明らかにするとともに、その発生頻度、影響度、検出難易度などの評価項目について、使用する立場から重要度を考慮し、優先順位を明確にして解決すべき課題を提示する技法であり、例えば、設計の故障モード分析、工程のリスク分析に使用されます。

 

 

 

3.FMEAの目的

 

FMEAを使用してはいるが形式的なものになっているので、成果を上げていない例があります。

このため、次に示すFMEAの目的を十分認識することが大切ですので、再度考えてみてください。

 

(1) 問題点の早期摘出及び未然防止

設計した後で問題が発生すれば、これに対応するための損出コストが増加します。したがって、新製品の材料、製造、輸送、使用、廃棄にあってどのようなリスクが発生する可能性があるかを事前に検討することで問題の先取りをすることが可能です。

 

(2) トップ事象モードにつながる要因の抽出

FMEAは故障のメカニズムを明確にしているので、例えば、プリンターで印字できないというトップ事象に対して、この要因がどのパーツ、パーツのどの部品に要因があるのかを見える化することができます。

 

(3) 重点指向による開発期間の短縮

事前にトラブル予測が出来るので、開発期間の短縮につながります。

 

(4) 信頼性試験・評価の効率化

後工程(設計検証・DR)への情報提供をすることで、どのような信頼性試験項目及び評価方法を行えばよいかが明確になります。

 

(5) 評価技術や情報の技術標準としての蓄積

FMEAの結果を固有技術に関する知識として蓄積することで、今後開発する製品に活用でき、設計開発のプロセス保証に役立ちます。

 

(6) 設計・工程計画等における思考過程の記録

どのような考え方で信頼性設計を行ったのかをトレースできます。

 

 

 

4.FMEAの手順

 

FMEAの手順は、次の通りです。

 

手順1 FMEA実施の準備

1)システム、サブシステムの構造、機能の把握

FMEAの様式に基づいて解析する前に、FMEAの対象としているシステム、サブシステムの構造、機能を明確することが大切です。これらを機能ブロック図及び信頼性ブロック図にまとめることで、システム及びサブシステムの機能は何か、どのような部品で構成されているかを理解することに役立ちます。

機能の検討が不十分の場合には、FMEAを実施しても機能が抜けたところに故障が発生する可能性がありますので、設計部門で保有している知識を活用することが大切です。

 

2) 信頼性要求の確認

開発する製品は、信頼性に関する要求事項を満足する必要があります。このためには、類似製品の耐用寿命、法令・規制要求事項及び使用環境条件に関する情報を収集すること が大切です。これらに漏れがあるとFMEAの実施結果を得ることができませんので注意が必要です。

なお、信頼性要求では、使用頻度、ストレスの種類・レベルを考えます。

 

3) FMEAの解析レベルの決定

FMEAの解析対象は、システムか、サブシステムか、部品かを決めます。

やみくもに解析すればよいものではなく、重点指向の考え方でターゲットを絞り込むことが大切です。

 

4)FMEAワークシートの準備

FMEA活用の目的に応じたワークシートを準備します。

ワークシートには、名称(システムか、サブシステムか、部品)、機能、故障モード、故障モードの上位・他システムへの影響、故障モードの重要度、故障の原因、是正処置、担当部署などを決め、表形式にします。

 

 

手順2 FMEA対策部位の選定

解析するシステム、サブシステム、部品などの名称を列挙します。

 

 

手順3 要求される機能の記述

解析対象に要求される機能を明確にして整理し、列挙します。

いつ、どこから、どんな入力を受けて、どのような原理で変換して、何に、どのような出力をだすかを明確にします。

例えば、制御器の機能は「異常時における温度上昇を防止する」ことです。

このように機能を明確に把握することは、故障モードとその影響の記述に関して極めて重要です。

 

 

手順4 故障モードの記述

対象部位に予想される不具合事象すべてを列挙する場合には、次の流れで考えます 。

 

1)  情報(図面、資料)受領

これらの情報からどのような故障が発生するかを推定します。

 

2)  機能・作動状態理解

どのような条件になるとどのような故障が発生するかを推定します。

 

3) 各種ストレス想定

どのような条件になるとどのようなストレス(例:熱的、機械的、電気的)が発生するかを推定します。

 

4)  劣化プロセス(故障メカニズム理解)理解

どのような条件になるとどのような劣化(摩耗など)が発生するかを推定します。

 

5)  故障状態の評価

どのような故障になるかを評価します。

 

6)  問題提起

故障モードを発想するとき には、過去のクレーム情報で分析した故障の現象が貴重な情報原となるのでこれを活用します。故障モードについては、部品ごとの故障モード一覧表などをシステム化しておくと効果的です。ただし、故障モード一覧表は常に最新版に維持することが大切です。

 

故障モードは、各設計段階で考えることが大切です。

 

(a) 基本設計段階

基本設計段階では、システムや機能の潜在的欠陥を検討することになります。このため、この段階の故障モードとは機能喪失状態になります。例えば、動作せず、停止せず、出力せず、異常出力、誤動作が該当します。

(b) 詳細設計段階

詳細設計段階では、詳細設計したものが所定の機能を果たし得るか否かを検討することです。このため、具体的な故障事象であり、例えば、変形、亀裂、破損、表面の傷、表面のあれ、ガタ、脱落、固着、焼損、異物混入、漏れ、浸蝕、解放、短絡、ドリフトが該当します。

 

なお、故障モードを抽出する際には、手順1にも示したように次の事項を考慮することが大切です。

・対象製品の理解

使用者の立場で考えて、製品仕様(環境・使用条件)、製品の機能・性能・構造、製品の安全性などを理解することが大切です。

・故障モードの収集

日頃のデータ蓄積を行うために、故障事例の収集、ブレーンストーミングによる抽出、故障メカニズムの追求などが大切です。

・FMEA手法の理解

解析目的を明確にするために、故障モード抽出の機器レベルの検討、信頼性ブロック図などを理解することが大切です。

 

 

手順5 故障の影響の厳しさの記述と重要度評価

1) 故障の影響の厳しさの記述

故障モードが発生した場合の上位システム、他システムへどのような影響を与えるかを検討します。

この際には次の事項に重点を置きます。

(1)  構造、機能的に隣接しているシステムへの影響

(2)  下位レベルの部品を共有しているシステムへの影響

(3) 上位レベルのシステムを共有しているシステムへの影響

 

2) 故障の重要度の評価

評価要素の例には次の項目があります。

・故障モードの厳しさ(Severity)

発生した場合の影響の厳しさはどの程度かを明確にします。

影響度の高い故障モードは、人的・物的な重要特性になります。

・故障モードの発生頻度(Occurrence)

問題がどの程度の頻度で発生しているかを明確にします。

・故障の検知難易度(Detection)

使用の段階に至るまでのどの段階(試作評価、受入検査、製造、中間・最終検査、使用)で未然に故障モードが検出されるかを明確にします。

 

これらのランク分けには、10段階、5段階、4段階などがあり、評価者によるばらつきを小さくするために判定基準を明確にし、総合評価を次式で決めます。

 

危険優先数:RPN(Risk Priority Number)=S×O×D

 

RPNの高いものほど重視する必要がありますが、厳しさの高い故障モードで、安全規則に該当するものは、全て重要特性にすることが大切です。

 

 

手順6 故障原因の記述

故障モードを引き起こすと考えられる全ての故障原因を列挙します。

 

 

手順7 対策事項・対策方法の記述

重要度の高い故障モードに対して、その故障モードを除去あるいは影響を緩和するために必要な対策事項・対策方法を記述します。設計部門だけで検討するのではなく、後工程につながる関連部門との調整を行うことが改善につながります。

なお、RPNで発生頻度の高い故障モードに対しては、設計段階で改善に取り組むことが大切です。

 

 

手順8 その他の必要事項(対策実施担当部署、対策実施期限等)の記述

その他の関連する必要な情報を記入します。

 

 

 

5.FMEA実施上のポイント

 

FMEAを実施する際には、次に示す事項に着目することが特に大切です。

 

・故障モードの予測では、起こり得る故障モードを全てあげること。

・故障モードの評価基準を明確にすること。

・同一製品におけるシステムレベルのFMEAと部品レベルの評価基準は同一にしないこと。

・法令規制に関する故障モードの厳しさのレベルは最も高いレベルにすること。

・是正処置は具体的に記述すること。

・故障モードは、時間をかけて十分検討すること。

・提供する立場だけで故障モードを検討せず、使用者の立場を十分検討すること。

・FMEAの評価を行う場合には、評価メンバーの専門性が偏らないように選定すること。

・あいまいな故障モードは信頼性試験を十分行うこと。

 

 

(福丸 典芳)

 

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