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ここがポイント、QCツール 第30回 プロセス分析(3) (2017-5-22)

2017.05.22

 

 

プロセス分析の3回目です。

 

2回目に続きプロセス設計について述べ、最後にプロセス分析の2番目の機会、プロセス管理とプロセス改善について説明します。

組織が日常行っている業務の結果が計画したとおりになっていない、即ち差異が生じている場合、その原因を明確にして改善することが必要ですが、そのツールの一つとしてプロセス分析を活用します。

 

 

3.2 プロセスの諸要素の決定

 

目標を効率的に達成するように、次のようなプロセスの一連の活動(サブプロセス)の諸要素の明細を決定します。

 

(1) プロセスの目的

(2) プロセス目標

(3) プロセスオーナー

(4) プロセスの判断基準

(5)プロセスの方法

(6) プロセスの監視及び測定

(7) プロセスのパフォーマンス指標

(8) プロセスに必要な資源

(9) プロセスの責任、権限

(10) プロセスのリスク及び機会

 

 

3.2.1 主要分野のプロセスの諸要素の決定

 

主要分野のプロセスは組織の中核に位置する活動ですので、常時組織に確実に存在しているものです。

主要分野のプロセスの計画、設計はまず現在行われている活動をスケッチすることから始めます。

このスケッチの目的は、プロセスが最新化されているかを確認するためです。

プロセスが最新化されているかを確認する唯一の方法は実務を観察することです。

実務を観察すると、この過程でプロセスと現実のギャップが発見されることがあります。

過去に誰かが設計したプロセスは2、3年もすると新しい視点から最新化する必要が出てきます。

 

例えば、2年前にある課長がA子さんにある資料を毎週作成するように指示しました。

課長はその資料を受理した後、B君に何かのデータ分析させているようでした。

以来A子さんは真面目に毎週指示された資料を作成し課長に提出をしています。

6ヶ月前に課長が変わりましたが、何の指示もないので相変わらず同じ資料を作成しています。

しかし、A子さんは少しおかしいなと思っています。

というのは、B君は最近新しい課長からデータ分析の指示を受けていないからです。

このようなケースは多くの組織に起っていることです。かつて、活動は繋がっていたのですが、いつのまにか切れてしまっているというケースです。

 

 

3.2.2 支援分野のプロセスの諸要素の決定

 

プロセスの目標が明確にされると、次にプロセスが効率的に目標を達成できるように設計することが大切です。

プロセスは、論理的で目標を達成する為の合理的な流れでなければなりません。

そのためには、プロセス最後の活動のアウトプットである目標から論理をスタートさせます。目標を達成させるために実施すべき項目を決めていくことがよいでしょう。

 

「教育・訓練」について考えてみます。

まずは目標を決めなければなりませんが、目標は組織の全体目標と部門要求事項から決まってきます。

例えば、「○○資格を10名に取得させる」となったとします。

論理的にはこの○○資格を取得させるためにはどのような教育・訓練の活動が必要かを考えることになります。

そして、その教育・訓練は誰が、どのような教材を使用して行うべきかを考えることに繋がっていくと思います。

次には、どのようにして講師を探し、講師のスケジュールを確保するのか、また教材はどのようにして作成するか等を考えることになるでしょう。

 

 

3.2.3 経営分野のプロセスの諸要素の決定

 

この分野では組織構造に焦点を当てます。組織構造とは、部門の境界線とか、誰が誰に報告するか、仕事がどのように行われるか、目的に適っているかということを含んでいます。

なかでも組織の部門間の境界をはっきりとさせることが重要です。

経営分野のプロセスの諸要素には2つのポイントがあります。

 

・事業戦略の目標を達成するに必要な機能は何か。

・インプット-アウトプットの関係は明確か。

 

もし、事業戦略目標を達成する機能が不十分、あるいは無いことがはっきりすれば、トップマネジメントは目標を達成するための組織構造を考えなければならず、組織の改組も視野に入れなければなりません。

そして、目標達成のためのインプットとアウトプットの論理的な繋がりから諸要素を決定しなければなりません。

 

 

 

 

 

4.プロセス管理とプロセス改善

 

組織は、プロセスのパフォーマンスを向上させるため、プロセス設計された諸要素について分析、評価をしなければなりません。

もし、プロセスが期待されたパフォーマンスを上げていないのであれば、プロセスを変更しなければなりません。

そのためには、日常的にプロセスを管理することが必要です。

 

組織が現在の課題を認識し何か行わなければならないと思った時、よく行われる活動は次のようなものです。

 

・中長期経営戦略を作る。

・変革プログラムを練り開始する。

・経営幹部に「リーダーシップ」教育を行なう。

・品質月間、顧客満足向上キャンペーンなどを展開する。

・従業員にQC教育をする。

・最新機械、設備を導入する。

・経費削減運動を実施する。

 

このような活動は、確かに何かを変えることになるのでしょう。

しかし、プロセスが管理されていないと、残念ながら小手先、対症療法の域を脱しないことになります。

 

21世紀の今日、組織は過去の経験に頼らず、新時代に対応した仕事のやり方を抜本的に構築することが求められています。

本質的な持続可能な変化を求めるならば、事業の本質すなわち事業プロセスに焦点を当て、日常的に仕事のやり方を改善していく必要があります。

 

事業プロセスは、製品及びサービスを生み出すために設計、計画された一連の活動です。

プロセスが、1つの機能(部門)の中に全て含まれることもあるかもしれませんが、ほとんどのプロセスはその活動が複数の部門にまたがる部門横断的なものです。

組織の顧客が受け取る製品及びサービスに直結しているのが、(ア)主要分野のプロセスであり、外部顧客の目には触れないが、事業の効果的なマネジメントに不可欠な要素を産み出しているが、(イ)支援分野のプロセスです。

経営にかかわる活動を行っているのが、(ウ)経営分野のプロセスです。

 

これらがすべて管理され、改善に向けて分析評価されることが重要です。

 

 

 

4.1 主要分野のプロセスの管理

 

主要分野のプロセスが論理的な構造として設計されていても、もし適切に管理されないならば、効果は期待できません。このことは、支援分野、経営分野のプロセスでも同様です。

 

a.目標管理 : プロセスの目標を管理すると同時に、プロセスを構成する活動の目標も管理する。この目標は、部門目標に繋がる。

b.パフォーマンス指標 : プロセスの目標(アウトプット)に関して、顧客フィードバックを定期的に入手する。活動に定められたパフォーマンス指標を追跡する。パフォーマンス指標が達成できそうもないときにはプロセスの欠陥を特定し変更する。

c.資源管理 : 主要分野のプロセスの目標を達成し、期待される貢献をするために必要な設備、スタッフ及び予算をプロセスごと支援、管理する。

 

目標とパフォーマンスの差異が大きい場合には、まず目標を達成するための資源が与えられていたかどうか(資源管理)を確認しなければなりません。

もし、目標を達成するための資源が不十分であったなら、これに手を打つことが経営として必要になります。

 

差異の要因が資源に無く、他にある場合はプロセス分析がツールとして有用になります。今まで述べてきたプロセス設計の「どこかに無理があった」ことを仮説にしてプロセスの見直しを行います。

その際、組織の要員がプロセス設計どおりに行わなかった(広義では資源が与えられなかったのもその一つ)ことも含まれていますので、次の2つの峻別が必要です。

 

a) 決めた通りに行われなかった。

b) プロセス設計に問題があった。

 

当然のことながら、a)の場合は日常管理を徹底します。

b)の場合はプロセス分析を行います。

以下にある、支援分野のプロセス、経営分野のプロセスも同様です。

 

 

 

4.2 支援分野のプロセスの管理

 

支援分野のプロセスの管理は、主要分野、経営分野からの評価をパフォーマンス指標により行うとよいと思います。

この支援分野のプロセスの管理は、支援分野の単独管理では不十分です。

その理由は、支援分野のプロセスは一つ又は複数の部門要求に整合していなければならないからです。

支援分野のあるプロセスが主要分野にサービス提供する場合、主要分野の関係部門はそのサービスが自部門ニーズを満たしているかどうかフィードバックしなければなりません。

支援分野のプロセスはこのような主要分野又は経営分野からのフィードバックを一つの指標として支援分野のプロセスの管理を実施していくことが必要です。

 

 

 

4.3 経営分野のプロセスの管理

 

トップマネジメントは、効果的かつ効率的に経営していくために、目標設定及びプロセス設計のとおりにプロセスを運営管理しなければなりません。

トップマネジメントによる経営分野での管理には次のものを含みます。

 

a.目標管理 : 経営分野のプロセスの目標を部門目標に展開する。組織全体の目標達成に貢献する部門目標の設定に失敗するとサイロ化(部分最適)に陥るので注意が必要である。

b.パフォーマンス管理 : 目標の達成はパフォーマンス向上に結び付くことが必要である。定常的に顧客からのフィードバックを入手し、目標に決められている指標に沿って実際のパフォマンスを追跡するなどの監視・測定をする。

c.資源管理 : システムを横断して、要員、設備及び予算の配分バランスをとることが重要である。適切に資源配分することで、各部門はその目標実現に近づくことができ、その結果、組織全体のパフォーマンスも向上していくことが期待できる。

d.インタフェース管理 : 部門間の「空白」部分(部門と部門の接点に出来るミスコミュニケーション)を管理することが必要である。部門間の「縄張り」争いを解決し、効果的で効率的な相互関係を確立する。

 

この経営分野のプロセスの管理においては多分いくつかの問題に直面します。

・部門目標の対立(例えば、営業では市場動向を重要視するのに対して、開発部門では自社技術に固執するなど)

・事業戦略目標と短期収益の二律背反

・資源配分の対立

・部門サイロの抵抗

 

経営分野のプロセス管理を成功させる秘訣は、全体最適を部分最適に優先させることの徹底にあるでしょう。

 

(完)

(平林 良人)

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