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ここがポイント、QCツール 第27回 デザインレビュー(3) (2017-4-24)

2017.04.24

 

先週に引き続き、デザインレビューのご説明、第3回です。

 

 

今回は、デザインレビューの実施方法とそのポイントを、事例を通してお話ししていきます。

DRは製品に応じてその内容が全く違います。そこでここでは、その基本的な事が分かりやすいように、比較的シンプルで、皆様にも身近な製品事例で説明をします。

 

次に紹介するのは、文具を製造販売するA社の“本体の後部に消しゴム繰り出し機構をもつシャープペンシル”の新製品開発時のDR実施の事例です。

紙面の都合上、一部のDRは割愛し、要点を抜粋した紹介となりますが、この事例を通して、DRの基本的な実施方法を読み取って下さい。

 

 

 

6.新機構シャープペンシルのDR事例とその実施ポイント

 

(1) DRの計画

 

A社では、企画~設計~生産準備の中で、設計の各段階で行うDRをDR-0~DR-6と呼び、その標準的な手順を「DR実施規定」として標準化しています。

また、新規開発する製品は、その技術的な新規性に応じたタイプ分けをしており、そのタイプによって選択(ショートカット)する段階のDRを決めています。

事例の製品は、新規性の高い製品タイプだったので、DR-0~DR-6まですべてを行うように計画されました。

また、それぞれのDRにおける、DR重点項目、参加する部門及び専門家、日程、必要なデータパッケージやチェックリストなどが、DR実施規定で決められていますので、これをベースとして、さらに当製品の独自性を加味して、当該製品のDR計画書が作成されました。

 

 

(2) DR-1(設計開始直前)

 

企画が承認され、設計が正式に開始される直前です。

ここでは、これから設計する製品について、

a. 仕様は明確になっているか、

b. 開発スケジュールは妥当か、

c. 投資方法は適切か、

d. 原価は十分に低いか、

などをDR重点項目としました。

 

この評価を適切に行えるためのデータパッケージとしては、企画書、モデル、品質表、開発日程計画書、原価のDR表、投資回収点データ、などが準備されました。

特にここでは、設計者は「品質表」を作成しており、その顧客要求事項を設計仕様に変換する過程を含めています。

例えば、消しゴムの出しやすさという品質が、ゴム保持体の回転トルクという代用特性に変換されるなど、仕様の妥当性が評価できるようになっています。

なお品質表は基本的なものは出来ているので、新規部分のみ追加又は変更すればよいようになっています。

 

 

(3) DR-2-1(基本設計終了後)

 

概略設計が終わり詳細設計に入る前であり、ここでは、

a. 目標品質は妥当か、

b. ネック技術の明確化と方向付け、

c. 特許の検討、

d. 部品公差、品質試験方法、

などをDR重点項目としました。

この評価を適切に行えるためのデータパッケージとしては、品質機能展開表、組立図面、業者選択一覧表、BNE(ボトルネック技術)表、設計事例書などが準備されました。

 

特にここでは、「BNE表」により、新規機能に対する技術や、未知部分の多い技術項目と、その対策案について設計者から提案され、専門分野からの意見を求めます。

また、設計事例書を参照して、過去の関連するあるいは類似する設計から取り入れた技術要素についても報告されます。

 

このDRには、生産技術、製造、検査の各部門の代表者が参加して、それぞれの専門分野からの意見を積極的に提案しておくことによって、量産段階で問題が発生することを防止しています。

ここでは、生産化チェックリストが作成されて、以後のDRも継続して評価されていきます。

 

 

(4) DR-2-2(詳細設計終了後)

 

組み立て設計図が、さらに詳細な部品図面へと完成した段階であり、ここでは、

a. シャープペンシル本体のメカニズム上問題がないか、

b. PL上問題がないか、

c. 信頼性は確保できるか、

d. 金型審議、

などをDR重点項目としました。

この評価を適切に行えるためのデータパッケージとしては、部品図面、FMEA表、設計事例書、試作評価項目一覧表、金型審議書、PLチェック表、環境チェックシートなどでした。

 

特にここでは、潜在化しているシャープペンシル本体のメカニズム上の問題点や、PL上の問題点を掘り起こし、未然防止対策をするためにFMEAが実施され、この結果が提出されます。

前のDR-2-1で指定された重要部品に対して行うようにしています。

 

このDRには製品に関連する法規制や、環境に関連する法規制に関する専門家が念入りに評価します。

特に、輸出品については、海外の法規制が複雑であるためにチェックリストにして対応もれを防止しています。

また、通常はこの後に金型の製作に入ります。

金型は品質だけでなく、コストその他の目標達成の要になるところです。

金型に関する専門家によって作成された金型チェックリストがあり、これが活用されます。

 

 

(5) DR-4(試作評価完了後)

 

詳細設計図に基づき試作品が製作され、その評価が終わった段階です。

ここでは、

a. 当初のねらい通りの品質及び原価が達成されているか、

b. 組立上、問題はないか、

c. 試験方法はよいか、

などをDR重点項目としました。

この評価を適切に行えるためのデータパッケージとしては、試作品、試作品評価結果、原価のDR表、金型審議書、金型チェック表、信頼性試験結果、モニタリング結果、などでした。

 

特にここでは、信頼性に関する試験結果が重要であり、例えば、多湿地域とか寒冷地とか沿岸地域とか、その使用環境・状況を想定した試験の結果が重要です。

時には、ワイブル確率等の統計的手法を利用した耐久性分析(故障解析)結果が提出される時もあります。

また、社内モニタリングを行って、設計の妥当性確認の結果も報告され、評価されます。

 

 

(6) DR-5(量産試作終了後)

 

量産のロット単位で、実機を使用しての試作が終了した段階です。

ここでは、

a. 工程能力は十分か、

b. 信頼性は十分か、

c. 工数は標準通りか、

d. 原価はねらい通りか、

などをDR重点項目としました。

この評価を適切に行えるためのデータパッケージとしては、量産試験結果報告書、完了仕様確認書、4M準備表、原価のDR表、信頼性試験結果、などでした。

 

特にここでは、4M準備表を作成して、最終的な生産準備状況を確認、評価します。

これは、計画した生産量をこなすことができるための作業者や設備機械が確保されているのかどうか、あるいは部品が調達できるようになっているのかどうか、正しい製造作業を行うための標準類が確実にそろっているのかどうかを確認します。

また最後の原価が確定する段階です。

ここで最終的な原価をはじき出し、当初に目標とした原価を達成できていない時には、その後の原価低減の対策を明確にしておきます。

 

さて、いかがだったでしょうか。

 

デザインレビューというのをあらためてまとめると、

このようにして、新製品の開発段階で、単に機能・性能だけでなく、コスト、安全性、信頼性、生産性、使い易さ、保全性、サービス性、周囲への影響、法規制などすべての要求事項を、出来るだけ完全に近づくように、関連する専門分野の人々の知恵を結集して、当該製品の評価をし、改善をする活動なのです。

そして、これらの活動を、組織的・体系的に行う手法であるということも、この事例を通して理解されたものと思います。

 

(丸山 昇)

 

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