ここがポイント、QCツール 第24回 新QC七つ道具(7):マトリックス・データ解析法 (2017-3-28)
2017.03.28
新QC七つ道具の第7回は,マトリックス・データ解析法を取り上げます。
新QC七つ道具のうちで,これらのアローダイアグラム法,PDPC法,マトリックス・データ解析法の3手法を実務で運用できることが,QC検定(品質管理検定)1級レベルとみなされることは前回もお伝えした通りです。
■□■ マトリックス・データ解析法 ■□■
・マトリックス・データ解析法とは,その目的
マトリックス・データ解析法は,「行列に配置した数値データを解析する,多変量解析の一手法であり,主成分分析とも呼ばれることがある」(文献1)手法です。
マトリックス・データ解析法は,新QC七つ道具の中で唯一の数値データを解析する手法です。通常,新QC七つ道具の1つであるL型マトリックスの各交点に数値データがある場合,それらのデータについて主成分分析法を用いて解析し,データが持っている多様な情報をできる限り少ない代用的な特性で表現するための手法として有効です。
この手法が新QC七つ道具に取り入れられたのは,スタッフや管理者が多変量解析法に馴染んでほしいという意図が含まれていると言われています(文献2,p28)。
・マトリックス・データ解析法の実施手順の本質
マトリックス・データ解析法の主体となる主成分分析法は,多変数(多項目)の多量データを見通しよく整理するために固有値などを求める計算が必要なことから,手計算による使用が難しい手法でした。
近年では,パソコンの性能向上や多変量解析法のソフト普及が進んできたことにより,マトリックス・データ解析法を理解し,積極的な使用が望まれる手法になりました。
マトリックス・データ解析法を使うときは,先ず分析対象のデータの構造を考察し,できる限り異なる側面の変数を選定します。
次に,分析対象となる母集団を代表するサンプルを採取してデータをとり,行列にサンプルと変数を配置したL型マトリックスにデータを整理します。
データに欠測値がないかを確認します。これらのデータがあれば主成分分析の計算が可能です。
計算後は,各変数の平均値と標準偏差,変数間の相関関係をよく見て,固有技術的な観点からデータが正しくとられているかをよく吟味します。
異常なデータがなければ,固有値が累積で70%~80%程度まで,第1主成分,第2主成分,…と主成分の数を選びます。
各主成分を軸に二元グラフを作成し,因子負荷量により各主成分の意味を考察し,また各サンプルの主成分得点を打点して散布状況から主成分に対する位置付けを考察します。
・マトリックス・データ解析法の適用場面と得られる効用・メリット
マトリックス・データ解析法の具体的な適用場面は,多量な市場データによる要求品質の分析,官能特性の体系化と分類,意識調査,満足度調査など,多量のデータがある要因の解析,要因が複雑に絡まる工程の解析,複雑な品質評価などです。
このように,マトリックス・データ解析法は,多量なデータの傾向をつかむことや,分類することができます。
・他の手法との関係
マトリックス・データ解析法は,L型マトリックス図を用いて整理したデータを,主成分分析法を用いて少ない代用的な特性(主成分)に集約し,その特性を軸にした二元グラフを用いて(例えば,散布図),分析対象の構造を単純化して分析することができます。
・実施・運用時の注意・留意事項
マトリックス・データ解析法を作成・活用するときの注意・留意事項を次に例示しますので,チェック項目として利用してください。
・マトリックス・データ解析法を用いて実施する課題(目的,テーマ)が明確ですか?
・課題に合った構造を設定してデータを収集し,マトリックス図に整理していますか?
・データの平均値,標準偏差,相関係数などから,データの状態を読み取っていますか?
・主成分分析法を用いて計算した固有値,固有ベクトル,因子負荷量,主成分得点が適切かどうかを確認していますか?
・主成分を軸にした二元グラフを用いて,因子負荷量や主成分得点からデータの意味を合理的に解釈できますか?
新QC七つ道具は,新しい時代の新しいQCツールをねらいに生み出されましたが,QC七つ道具などの従来のQCツールと背反するツールではありません。
相互に補完し合って活用していくことが大切です。
多くの方が実践的に活用し,企業の体質改善に役立ててほしいと思います。
■参考文献
- JIS Q 9024:2003「マネジメントシステムのパフォーマンス改善-継続的改善の手順及び技法の指針」
- 「全社的品質管理推進のための管理者スタッフの新QC七つ道具」,水野滋監修,日科技連,1979
- 「やさしい新QC七つ道具」,新QC七つ道具研究会編,日科技連,1984
村川賢司(前田建設工業)