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ここがポイント、QCツール 第18回 新QC七つ道具(1):概要,親和図法 (2017-2-14)

2017.02.14

 

今回から新QC七つ道具を解説します。

 

第1回は,新QC七つ道具の概要と親和図法を取り上げます。

 

 

 

■□■ 新QC七つ道具 ■□■

 

●新QC七つ道具は何故誕生したのか

 

 

新QC七つ道具はどのような意図をもって開発されたのでしょうか。

日本の企業は,総合的品質管理(TQM)の進展に応じて品質管理の適用分野を製造段階から企画・開発・設計などの源流(上流)段階へ,あるいは製品・サービス提供後のアフターサービス,廃棄,リサイクルなどの段階へ拡大しました。

さらに,製造部門だけでなく管理・間接部門へ,またサービス産業への適用を拡大することによって,顧客・社会のニーズ・期待をより確実に満たす品質の向上に努めました。

 

品質管理の適用分野が拡大するに伴い,パレート図,ヒストグラム,グラフ,管理図といった数値データを主体とするQC七つ道具や統計的手法を補完する形で,品質管理を支えるツール類が新しい発想のもとで開発されました。

この代表的なツールの1つとして,主に言語情報を整理し,複雑に要因が絡み合う問題を解ける形にしていく「新QC七つ道具」が提唱されました。

 

新QC七つ道具は,数値データに基づく統計的手法に馴染みにくい管理者・スタッフなどでも容易に,言語データを整理できること,計画の抜けや漏れを無くすこと,関係者に分かりやすく理解を得られやすいことなどを目指して,1972年に日本科学技術連盟内に発足した「QC手法開発部会」(部会長:納谷嘉信氏,工業技術院電子技術総合研究所・当時)などの研究活動により約10年をかけて集大成され,世に問われた手法です。

 

 

 

 

●新QC七つ道具とは

 

 

それでは,新QC七つ道具は具体的に何を指すのでしょうか。

新QC七つ道具は,「言語データを図に整理する方法として構成されたもので,問題解決・課題達成の計画段階において,問題・課題の整理,方策の創出・立案を効果的に行うために,言語データを図形化・視覚化するツールの集合。」(文献1)を言います。

 

新QC七つ道具は,

 

①親和図法,

②連関図法,

③系統図法,

④マトリックス図法,

⑤アローダイアグラム法,

⑥PDPC法,

⑦マトリックス・データ解析法

 

の7手法を指し,N 7(エヌ・ナナ)と略記することがあります。

 

 

 

●新QC七つ道具の役割と効用・メリット

 

 

新QC七つ道具は,主に定性的なデータに基づく設計的なアプローチを意図した手法が主体です。

管理者・スタッフや第一線職場のQCサークルなどが活用し,総合的品質管理(TQM)の実効を高めるためのQCツールとして用いられています。

 

新QC七つ道具は,総合的品質管理の領域拡大にあわせて活用が進展してきました。

例えば,方針管理の計画立案段階において,目標を確実に達成するための方策の検討とその確実な展開のために適用されています。

また,新製品・サービスの開発段階において,顧客や社会のニーズ・期待の把握・要求品質への展開,ネック技術の明確化と解決策の探索,開発日程計画の立案とその管理などで,新QC七つ道具をいろいろと組み合わせて成果を上げています。

さらに,総務・経理部門,営業部門などの数値データを捉えにくい管理者・スタッフが,言語情報などの事実を用いた設計的なアプローチによって未経験な分野の課題達成のために活用しています。

 

 

 

●新QC七つ道具の活用

 

 

新QC七つ道具をうまく活用するには,適切で質のよい言語データを収集することが基本となります。

 

収集された言語データは,新QC七つ道具のそれぞれの手法の目的と手順にあわせて,統合・展開・集約などの整理をしながら目に見える図形に形作られていきます。

この過程で,参加者の共通認識が育まれ,本質的な問題点も浮かび上がってきます。

また,暗黙知であった情報が目に見えるようになり,組織知として活かされるようになることから,ナレッジマネジメントとしての役割を担うことにもなります。

 

新QC七つ道具を適用する際は,対処しなければならない問題・課題に適した正確な言語データを,目的意識を持って収集し,問題解決・課題達成の趣旨に合った手法を選択して分析することが重要です。

新QC七つ道具の使い方を知らない,知っていても使わない,誤った使い方をしているなどが避けられるように,日頃から心がけてほしいと思います。

新QC七つ道具は,知っているだけではダメで,職場の管理・改善で自ら使いこなせることがとても大切です。

 

それでは,具体的に新QC七つ道具の各ツールを解説していきます。最初は親和図法です。

 

 

 

■□■ 親和図法 ■□■

 

●親和図法とは,その目的

 

 

親和図は,「混沌とした問題について,事実,意見,発想を言語データでとらえ,それらの相互の親和性によって統合して解決すべき問題を明確に表した図」(文献2)を言います。

 

親和図法は,問題が錯綜しどのように取り組んだらよいのかが分からないときに,多くの事実,意見,発想など収集した言語データを相互の親近感(親和性)によって共通の表題に整理し,少数の関連グループに統合することにより,混沌とした状態の中から問題を見つけ出し,解決すべき問題の構造,所在,形態などを明らかにするための手法として有効です。

 

 

 

●親和図法の実施手順の本質

 

 

親和図法を使うときの要点を次に例示します。

 

・本質を突き止めどうしても解決したい最重要な問題をテーマにします。

・言語データは,万遍なく周囲を俯瞰して高い視点から事実を見て,誰が読んでも意味が分かる独立した小文章にしてデータカード化します。

・意味が分かるか,2つ以上の意味にとられないか,などからデータカードの表現を再吟味します。

・データカードを寄せて親和カードを作るときは,言語データの心を読み,自然に寄り集まる感じを大切にします。表面的な文言やキーワードなどで無理に一緒にしないようにします。

・親和カードは,元のデータカードの意味以上のことは表現しないようにします。また,各データカードの足し算的な表現や,抽象的・包括的な表現は避けます。

・親和図の作図は,最も重要と思われる親和カードのグループを模造紙の中心に配置して相互の関係を矢印で結ぶと,解決したい問題の所在や形態が鮮明になります。模造紙の代わりにパソコンを用いて親和図を作成することもできます。

 

 

 

●親和図法の適用場面と得られる効用・メリット

 

 

親和図法の活用によって得られる効用・メリットを次に例示します。

 

・混沌とした事象の中から言語データを捉え,それらを整理・統合することができる。

・問題の本質や底流にある根本的な問題を,関係者が認識することができる。

・問題解決の方向性をつかむことができる。

・現状打破する新しい考え方の糸口を見出すことができる。

・参加者の多様な意見を反映することによって,全員参加の意識向上が図られる。

 

親和図法は,個々の発想又は項目の類似したものを統合し,最もよく要約又は統合した共通の表題の下にまとめていくことで,多数の項目を少数の関連グループに整理することができます。

 

 

 

●他の手法との関係

 

 

親和図法は,川喜田二郎博士が考案したKJ法を出所としていますが,KJ法が商標登録されていることや,独自の用途への拡大,他の手法との組み合わせなどを想定し,親和図法と名付けられました。

 

 

 

●実施・運用時の注意・留意事項

 

 

親和図法は,使用目的に応じて,個人でも,グループでも活用できます。

例えば,混沌としている未知の分野での事実を体系的に捉える場合,白紙の状態から新たに自分の考えを整理する場合,既成概念を打破した考えをまとめる場合などは個人での作成ができます。

また,QCサークルなどで共通目的を目指してチームワークや合意を形成したい場合などは,グループでの作成が効果的です。

 

言語データの収集は,直接観察,面談,ブレーンストーミング,個人思考などの方法で行えます。

言語データは,具体的なイメージが捉えられるように,最小限の文言(主語+述語)で表現し,データカード化します。抽象的になりやすい体言止めは避けます。

 

データカードをよく読み,最も自然に親近感(親和性)を感じる2枚を見つけ,それらを1枚の親和カードにまとめて書きます。

この場合,抽象化は避けます。

 

これを繰返し,親和性によってカードを寄せ,親和カードが5つくらいになるまで束ねていきます。

カード寄せが進むにつれて,親和性が薄くなり抽象度も高まるのが一般的ですが,元のニュアンスをできる限り残すことが大切です。

 

親和カードを束間の関係(構造)が分かるように模造紙(又はパソコン画面)に配置し,親和カードの束を解いて全体的な親和性を見ながらすべてのデータカードの位置関係を決めます。

そして,縁取りや相互関係を示す記号(矢印など)を用いて親和図を完成させます。

 

次回は,連関図法,系統図法,マトリックス図法を取り上げ,手法の定義,目的,適用の場面・効用・留意事項などを解説します。

 

 

 

■参考文献

  1. 「日本の品質を論ずるための品質管理用語Part2」,日本品質管理学会標準委員会編,日本規格協会,2011
  2. JIS Q 9024:2003「マネジメントシステムのパフォーマンス改善-継続的改善の手順及び技法の指針」
  3. 「新QC七つ道具-源流から今,そしてこれから」,二見良治,品質,Vol.40,№1,2010,pp.61-67
  4. 「やさしい新QC七つ道具」,新QC七つ道具研究会編,日科技連,1984
  5. 「全社的品質管理推進のための管理者スタッフの新QC七つ道具」,水野滋監修,日科技連,1979

 

村川賢司(前田建設工業)

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