ここがポイント、QCツール 第16回 QC七つ道具(6):層別 (2017-1-30)
2017.01.30
層別は,QC七つ道具に含めない見方もありますが,「分けることは分かること」,「層別しなければ解析も管理もできない」と言われるくらい重要な手法です。
QC七つ道具をうまく活用できるかどうかを左右する要件は,層別のうまさと言っても過言ではありません。
■□■ 層別 ■□■
●層別とは,その目的
層別は,「機械別,原材料別,人別,作業方法別などのように,データの共通点やクセ,特徴に着目して,同じ共通点や特徴をもついくつかのグループ(層という)に分けること。」(文献1)を言います。
JIS Z 8101-2:2015では,層別を「母集団を層に分ける分割。」(文献2)と定義しています。
層別の例として,猫又は犬の母集団を品種に分けること,人の母集団を性別及び社会属性で分けること,一つの国を幾つかの地域に分けることなどを挙げています。
●層別の実施手順の本質
品質管理の実施では,結果であるモノを見て判断し,行動・処置することが大切です。
結果を正しく見るためにはデータが不可欠ですが,データをただやみくもに,たくさん集めても,適切な処置を決めかねる場面を往々にして経験します。
例えば,発生した不適合品やクレームの原因を追究するときに,発生の仕方が機械によって違いがないか,材料・部品ではどうか,作業者別では?,作業方法では?など,グループ分けした(層別した)データをキチッと把握して比較し,考察しないと,適切な処置を意思決定することが難しくなります。
層別は,結果を正しく見て,適切な処置をとることを可能にする非常に重要な考え方であり,行為でもあります。
どのような層に分けるかが,層別の良し悪しに大きく影響します。
層別の目的によって層別の仕方は変わりますが,次に示す基本的な項目に着眼して層別することによって多面的な情報が得られます。
・部位・内容・場所別:不具合の部位・内容,工程,部門など
・作業者別:年齢,男・女,新・旧,熟練度,組・班など
・時間別:時刻,午前・午後,日,曜日,週,月,季節など
・機械・装置別:型式,号機,位置,治具,金型など
・原材料別:供給者,成分,ロット,部品・原材料メーカーなど
・作業条件別:温度,圧力,速度,回転数,気温,湿度,天候,方式など
・測定・検査別:計測器,測定者,検査員など
層別では,原因,素性・属性などが相違すると思われる異質の集団を一緒くたで扱わないように留意します。
統計的方法の活用において,ある集団からサンプルをとって測定し,得られたデータを解析してその集団に正しい処置・推論をするうえで,1つの均一な集団や1つの単純な分布を想定した方が統計的な判断の正確さが増すのが一般的です。
分布,時系列的な変化,因果関係などの内部構造が異なる集団に対しては,内部構造が同じになるように層別して考察することが重要です。
どのような層別をしたらよいかは,着目する特性についての技術的な知見や経験によるところが多くあります。
したがって,技術者や作業者など多くの関係者から意見を聞き,工程にある無数の要因から重要な要因を抽出できる層別を心がけてください。
●層別の適用場面と得られる効用・メリット
前記2の着眼点で層別がうまくできれば,各層間での分布の形態,時間的変化の傾向,関係性などの違いを明確に分けることができ,また原因,素性・属性などの相違に基づいた分類・整理が容易になります。
工程の管理において,工程の結果である品質がいかなる要因によってばらつくのかを突き止める場合,どの原料を使って,どの機械で,誰が,いつ作ったのかなどの層別したデータを的確にとることで主要な要因を見つけやすくなります。
また,工程の改善において,偏った層別だけで現状把握や原因追究を行うと,思い込みによる中途半端な分析に陥りがちです。層別の仕方を改めて調査・分析を多面的に行うことで原因を見極めやすくなります。
層別をうまく行えば,目的とする特性を正確に理解し,正しい結論を導くことができます。「層別しなければ品質管理は進まない」とまで言われるゆえんです。
●他の手法との関係-特にQC七つ道具
層別は,QC七つ道具をうまく使いこなすうえで基礎となる考え方と言えます。その例を幾つか次に挙げましょう。
・パレート図を作成したときに,第3順位くらいまでの累積和が約70%を越えないドングリの背比べのような図を見かけます。これは,取り上げた項目の層別の仕方が適切でない場合が多く,層別する項目の再考余地を示唆しています。
・ヒストグラムの形が,ふた山型のときは平均値の異なる2つの分布が混じり合っている場合が多く,また,高原状のときは平均値が異なったいくつかの分布が混じり合っている場合が多いなど,いずれも分布ごとの層別が望まれます。
・管理図では,郡内変動が偶然原因によるばらつきで構成されるように層別することが重要となります。
・散布図では,一見無相関のように見えても層別すると相関がみられることもありますし,反対に相関がありそうでも層別すると無相関ということもあり得ます。層別して,相関の有無を正しく見極めることが必要です。
・特性要因図,チェックシート,グラフでも,層別に基づいて事実・データを収集し,考察することになります。
このように,層別は,QC七つ道具と密接に関連し,これらの手法をうまく使いこなすうえでのカナメともみなせます。
●実施・運用時の注意・留意事項
層別を行うときは,次の事項に注意・留意をしてください。
・目的とする特性に関して,層内ができる限り均一になるようにグループ分け(層別,層化)をします。
・層別の実施が徹底するように,層別の重要性を関係者全員が認識し,層別したデータが適切かつ確実に収集・整理されているかを定期的にチェックします。
・層別したデータの収集・整理では,層を分けたもの同士が混在しないようにマーク,色分け,番号付など識別を工夫します。チェックシートなどを利用して層別したデータをとります。
QC七つ道具の各手法に対して,手法の定義,目的,適用の場面・効用・留意事項などを解説しました。
QC七つ道具に引き続いて「新QC七つ道具」を取り上げますが,QC七つ道具は古い手法であると誤解しないでください。
QC七つ道具の各手法には,それぞれ重要な目的があり,目的に合った正しい使い方をすることによって「会社の問題の95%はQC七つ道具で解決できる」とも言われています。
QC七つ道具は,職場の管理・改善を実践して成果を上げるうえで役立つ,基本的なQCツールであることを念頭に置き,各手法の本質を理解して使いこなしてください。
■参考文献
- 「実践力・現場力を高めるQC用語集」,細谷克也他,日科技連,2015
- JIS Z 8101-2:2015「統計-用語及び記号-第2部:統計の応用」
- 「QC七つ道具」,細谷克也,日科技連,1982
- 「新編 品質管理入門(A)」,石川馨,日科技連,1964
村川賢司(前田建設工業)