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ここがポイント、QCツール 第7回 作業標準(1):日常管理-標準化を基礎に業務のPDCAを回す (2016-11-22)

2016.11.22

 

 

今回から4回にわたって「作業標準」を取り上げます.

 

新シリーズとして「QCツール」を取り上げるとき,身の回りに数多くある解説書の二番煎じは避けたいと申し上げました.

「ここがポイント」に恥じぬよう,ツールの本質,その本質に由来するツール適用における留意点,有効活用のポイントに焦点を当てたい,申し上げました.

 

 

作業標準,少し広くは業務標準には,対象とする作業・業務において何をするか,どのようにするかが記述されます.

誰が書くか,どこまで詳細に書くか,作業者・業務担当者にどう教育・訓練するか,どのように改訂していくかなど,様々な議論があります.

こうしたことについて語っていく前に,その背景・根拠のようなことを説明しておく必要があると思っています.

 

 

ということで,「作業標準」のポイントを説明するのに,以下のような構成を考えました.

 

 

1.日常管理-標準化を基礎に業務のPDCAを回す

(1) PDCA:マネジメントサイクル

(2) 日常業務のPDCA

2.標準の深遠なる意味

(3) 標準と標準化

(4) 標準=計画

(5) 標準化=知識の再利用

3.組織運営基盤としての標準

(6) 標準=技術基盤

(7) 標準化=改善の基盤,独創性の基盤

(8) 標準化阻害因子とその対応

4.役に立つ作業標準

(9) 作業標準をどうつくるか

(10) 守ってもらってこその作業標準

(11) 分かってもらえる作業標準

(12) 標準の改訂

 

 

 

(1)PDCA:マネジメントサイクル

 

日常管理とは,それぞれの部門において,日常的に実施すべき業務を効率的・効果的に実施していくための管理です.

その基本は,標準化を基礎として,部門が果たすべき業務のPDCAを適切に回すことにあります.

すなわち,業務の目的を明確にし,管理項目を定め,目的達成手段を明確にして業務標準(作業標準)を定め,標準通りに実施し,実施状況を把握し,必要に応じてフィードバックを図ることによって業務目的を達成するとともに,管理のレベルアップを図ります.

 

 

そこで,まずはPDCAについて復習をしておきます.

PDCAは管理・マネジメントにおける基本的な方法論と言ってよいでしょう.

いうまでもなく,PとはPlan(計画),D とはDo(実施),CとはCheck(確認),AとはAct(処置)という意味です.

 

 

PDCAを構成する4つの活動を,それぞれを2つずつに分解してみます.これは私流であって,一つの説明の仕方です.

 

Plan  P1:目的・目標の明確化

  P2:目的達成のための手段・方法の決定

Do    D1:実施の準備・整備

  D2:(計画・指定・標準どおりの)実施

Check  C1:目標達成にかかわる状況確認

  C2:副作用の確認

Act    A1:応急処置,影響拡大防止

  A2:再発防止,未然防止

 

 

Plan(計画)においては,2つのことをします.

一つは,目的・目標の明確化(P1),もう一つは,目的達成のための手段・方法の決定(P2)です.

 

 

Planの第一の目的・目標の明確化(P1)では,まず管理の対象についての「目的」を明確にします.

例えば,「不良を減少したい」「売上を向上したい」「画期的新製品を開発したい」などです.

次に,「管理項目」すなわち目的達成の程度を計る尺度を決めます.例えば,市場クレーム件数,工程内不良率,売上高,利益,市場導入6ヶ月の売上などです.

第三に,その管理項目に関して到達したいレベル(管理水準,目標)を定めます.これが目標ということになります.

 

 

Planの第二の目的達成手段の決定(P2)では,方策・手段への展開,業務標準・作業標準の策定などを行います.

目的を達成するために最適な方法,手段,手順を明らかにして,実施する人がその最適な方法を適用できるように,作業標準,業務標準,ガイド,マニュアルなどの形にしておかなければなりません.

 

 

こうした標準類は,目的を達成するための実現手段として,推奨できる内容を記述したもので,その通り実施すれば,一応は目的を達成できるように十分に検討されたものであることが期待されます.

この手の標準類は,繰り返し使われることになる「目的達成手段を記述した計画書」ということになります.

 

 

PDCAの派生としてSDCAと言われることもあります.

“S”とは“Standard”(標準)ということです.

PlanのうちのP1(目的・目標)が与えられ,P2(目的達成手段)がすでに明確になっていて,標準(standard)として確立されている状況での管理の方法論の説明によく使われます.

 

 

この4回で説明しようとしている「作業標準」とは,ある作業目的を達成するために作成された,ここでいうP2の内容を書き表したものにあたります.

 

 

日常業務の管理,とくに維持活動では,日常業務の目的達成の手段としての作業標準・手順が確立しており,あらためて「何のために(P1)どのようにするか(P2)」について沈思黙考する必要がなく,とりあえずはそれを遵守(D)することから始まるような状況を想定してのことです.

 

 

前々回の最後の方で“management”と“control”を話題にしましたが,その“control”のための管理のサイクルと言ってもよいでしょう.

すなわち,標準が与えられた状況での目的達成活動のモデルとなります.

 

 

Do(実施)においては,まず実施の準備・整備(D1),すなわち,P2(目的達成のための手段・方法の決定)に従って,設備・機器,作業環境を整備し,実施者の能力の確保など,実施の準備・整備を行います.

 

Doでは次ぎに,計画・指定・標準どおりの実施(D2),すなわち,実施者がPlan(計画)で定めた実行手順どおりに実施します.

 

Check(確認)においては,当初の目標の確認とともに,いわゆる副作用,すなわち意図していなかった望ましくないことが起きていないかどうかを調べることも大切です.

 

Check において留意すべきことは「事実に基づく」確認を心がけることです.

「……となっているはずです」「……と聞いています」では不十分です.

思いどおりにことが進むものなら最初から確認など考える必要はありません.何かあるかもしれないと思って調べるのですから事実に基づかない限り意味がありません.

 

 

PDCAのサイクルのうち,Act(処置)に,品質マネジメントの特徴が現れます.

 

 

Act(処置)において,Check(確認)で目標とのズレが確認されたら何らかの処置をとります.

誰でも行う処置は,管理対象となった案件,ケースをとにかくやりくりをして所期の目的を達成することです.

それは望ましくない現象の解消であり,いまも事態が進行しているなら影響拡大防止の手を打つことです.

これらが「応急処置」と総称されるものです.

 

 

PDCAサイクルの第一の意味は,現在進行形の案件について,目標との乖離が認識されたら,修正や影響緩和処置など何らかの対応をとって,所期の目的を達成しようとするような,管理の直接的な目的達成行動です.

 

 

PDCAサイクルには第二の意味もあります.

それは,現象を好転させるための応急処置とともに,同様の問題が二度と起きないように原因を除去し,将来に備えることです.

この処置を「再発防止策」あるいは「未然防止」と称して,ことのほか強調しています.

 

 

原因に手を打つことによって,実は主にP2(目的達成手段)の改善につながります.

P2の内容が作業標準である場合,これは作業標準の改訂を意味します.

 

 

 

(2)日常業務のPDCA

 

日常業務の管理において,上で復習をしたPDCAの各ステップで,どのようなことを実施するのか,以下にまとめておきます.

 

 

Plan

(1)各部門が果たすべき業務が何であるか(どんな入力を得てどんな出力を出すのか)を確認する.

(2)それぞれの業務の目的が何であるかを明確にする.

(3)その目的の達成度合を測る尺度としての管理項目,および管理水準(目標)を明らかにする.

(4)その目的を達成するための手段・方法を明らかにする.

 

Do

(5) (4)で規定された従事者,部品・材料,設備,計測器についての要件を満たす活動を行う.

(6) (4)で規定された手順に従って実施する.

 

Check

(7) (6)の結果を(3)で規定された管理項目で把握し,管理グラフなどに記入する.

(8) (3)で規定された管理水準内にあれば(6)に従って業務を継続する.

 

Act

(9)管理水準外にあれば,しかるべき応急処置をとる.同時に原因を究明する.管理項目,目標,目的達成手段・方法に問題があれば(3),(4)に戻り修正する.実施に問題があれば(5),(6)に戻り,しかるべき対策を講じる.

(10)重要な管理項目については,月次(または3ヶ月,6ヶ月)ごとに上記の管理状況を月報などの形で把握し,特に慢性問題についての改善活動を計画的に推進する.

 

PDCAのP1(目的,目標,ねらいの明確化)に対応するのが,上述のPlanの(1)~(3)にあたります.

そして,Planの(4)が,目的達成のための手段となります.目的達成のために必要なプロセス条件の最適化を図り,この手順に従って実行できるようにします.

これらの手順は,作業標準(業務標準,マニュアル,手順書,要領,帳票など)によって明確にする必要があります.

 

この作業標準には,実施する前に満たされていなければならない要件(たとえば,業務担当者の資格とか必要な教育・訓練,部品・材料が満たすべき要件,設備・計測器の保守など)についても定めておきます.

 

これに従ってDoの(5)において,実施の準備がなされます.Doの(6)は,決められた通りに実施するだけなのですが,実は非常に重要です.このことについては,このテーマの4回目で触れることにします.いずれにしろ,Planの(4)で決めた通りに実施して満足な結果が得られるようにすることが管理のポイントになります.

 

Actの(9)では管理外れへの対応を行います.当面の目的を達成するため,管理外れが発生したとき,迅速・正確・誠実にその異常現象を除去し影響の拡大を防止します.同時に,それだけに終わらせず,固有技術,マネジメントシステムに対する異常原因の除去という再発防止のための是正処置をとります.その一部が作業標準の改訂となるでしょう.こうした活動によって,業務目的を達成するうえでの組織の管理能力をレベルアップさせることができます.

 

また,Actの(10)は,慢性不良への対応で,慢性的な問題の解決が主になりますが,個々の管理外れへの対応だけでは不十分な事象に対応するため,重要な管理項目について,毎月,あるいは3ヶ月とか6ヶ月ごとに管理状況を把握し,改善を推進します.

 

今回は「作業標準」のポイント説明の前段として,作業標準が使われる場面について確認をしました.次回と次々回は「標準,標準化」について,その深遠なる意味の理解の促進を図ります.準備3回・仕上げ1回という構成となり,待ちきれないかもしれませんが,作業標準の本質理解のための伏線の準備をご容赦下さい.

 

飯塚 悦功(東京大学)

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