超ISO企業研究会

最新情報

メルマガ④ ここがポイント、QCツール

ここがポイント、QCツール 第6回 QFDの第2の役割:品質機能の展開<後編>  (2016-11-14)

2016.11.14

 

 

第6回目はQFDの解説の最終回で,前回から引き続き第2の役割である「品質機能の展開(業務機能展開)」について解説したいと思います.

 

 

 

4.他の手法との関係

 

業務機能展開によって対象業務で実施すべきことが明確になります.

これを縦軸にして,横軸にその業務を担当する部署,担当者を置いた二元表を作成し,各機能の実施事項を特定してそれらがどのような順番,流れで,どの部門が担当するのかの関係を検討し,その検討結果を誰もが一覧してみることができるように記述した図が,品質保証体系図になります.

ISO9001においても,品質マネジメントシステムに必要なプロセスを特定することを要求しています.

したがって,プロセスアプローチにおける「必要なプロセスの組織(担当部門)へマッピング」を,このような二元表,品質保証体系図で表現する企業が多いでしょう.

 

また,業務機能展開はあるべき業務の姿を明らかにしてそれに照らして既存業務を大胆に見直すことができるとも言いました.

この意味では,一時期流行ったBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)ともその考えが似ています.

さらに,BSC(バランスドスコアカード)は財務→顧客→業務プロセス→学習と成長の4つの視点を提唱し,最終的な結果である財務とそれを生み出す要因系の間の因果関係が大切だと言っています.

これは,業務機能展開の実施手順の最初でまず業務の目的・目標を明確にし,それを達成するための手段(要因)として業務がどうあるべきかを明らかにするという思考とも共通しています.

 

このように見てみると,名前は違えど,業務機能展開の本質的な部分を活かした手法・ツールは世の中に多く出回っていることが分かります.それだけ業務機能展開が汎用性のある考え方,方法であるともいえるでしょう.

 

 

 

5.実施時の注意・留意事項

 

業務機能展開を効果的に行うためには,次の3点について理解しておく必要があります.

 

 

(1)重複なく,漏れのない展開

 

これは言葉通りの意味で,1次項目,2次項目,・・・と展開していく際に,重複なくかつ漏れのない展開をしなくてはなりません.

このためには,

 

・展開された複数の項目どうしが互いに重複ないかどうか

・展開された項目群のみでそれより上位の機能を必ず実現できるか

 

の2点を検討することが重要です.

1次,2次というように,左から右への一方向的に展開していくのではなく,上位と下位の対応関係,展開された下位の項目どうしの関係を考慮しながら展開していくことが重要です.

 

よく経営コンサルティングの分野ではMECE(ミーシー)という言葉が用いられていますが,これは

 

Mutually   (相互に)

Exclusive(排他的で)

and Collectively(集合的に)

Exhaustive(漏れがない)

 

という英単語の頭文字をとったもので,まさに“重複なく漏れのないこと”が重要であると示唆しています.

 

 

(2)業務機能展開の視点

 

残念ながら,業務機能展開を如何に行えばよいかをきちんと説明した名書は私が知る限りありません.

しかしながら,上で述べた業務機能展開の目的や適用場面・効用などを踏まえれば,以下のようないくつかの有用な視点を挙げることができます.

 

まずは,展開といっても①機能・目的そのものの分解(○○とは,すなわち何をすることか?)と,②目的を達成するための手段への展開(○○のために何をする必要があるか?)の2つがあることを理解したほうが良いでしょう.

 

次に,業務機能の捉え方にもいろいろあります.

機能という言葉はVA(value analysis),VE(value engineering),価値分析,価値工学の機能定義の考え方を業務に適用して業務機能(“名詞+動詞”で表現)を定義することになっていますが,具体的にどのように捉えるかは分析者自身で考えなければなりません.

言い換えれば,業務を捉えるための視点を多く持っておくことが重要になります.

そこで,以下にその代表的かつ有用な視点を列挙しておきます(詳細は,2012年に日科技連から出版された飯塚悦功先生,金子龍三氏の両氏による「原因分析: 構造モデルベース分析術」で述べられていますので,そちらを参照してください).

 

1) 業務プロセスの“構成要素”に関する視点

 

この視点においては,業務プロセスは以下の要素から成り立っていると考えます.

-プロセス・ネットワーク

複数のユニットプロセスがつながって一つのネットワークを形成する

  -ユニットプロセス

   -インプット,アウトプット

   -実施手順,タスク

   -経営リソース(ひと,インフラストラクチャー,知的資源,作業環境,パートナ)

   -監視・測定,即時対応

 

 

2)業務プロセスで考慮すべき“側面”に関する視点

 

-固有技術・・・その製品分野固有の技術

-管理技術・・・固有技術を組織として100%活用する技術

-いつでも,どこでも,誰でも実施できるための仕組み

・技術的に実施が難しいプロセスの容易化・ “ひと”の特性への配慮

・非定常時への適切な対応

-失敗の早期発見と適切な対処

・適切な段階での評価・検査・確認の実施

・見逃しのない検査の確立

・妥当で素早い対応策(応急対策・再発防止)の実施

 

 

3)業務プロセスの“運営”に関する視点

 

Plan

-P1:目的・目標の明確化

-P2:目的・目標達成の実行手順の決定

Do

-D1:実施のための業務環境整備

-D2:P2通りの実施

Check

-C1:当該事例・ケースに問題がないか

-C2:当該プロセスに問題がないか

Act

-A1:応急処置・影響緩和

-A2:再発防止

-A3:未然防止

 

 

4)業務プロセスの結果(アウトプット)を捉える側面に関する視点

 

Quality(品質)

Cost(コスト・原価,業務効率)

Delivery(量・納期)

Safety(安全)

Environment(環境)

 

 

これら1)~4)の業務プロセスを捉える多様な視点を理解した上で,対象とする業務プロセスの特徴や活用目的に合わせて,業務機能展開に用いる視点を組み合わせて実施することが求められるのです(この一つの例として,東京大学の下野僚子先生らによる“質保証を実現する手術プロセスを構成する標準モジュール導出モデルの構築”,品質誌,No.4,Vol.2, 232-242が挙げられます).

 

 

(3)業務機能展開のレベル

 

どのレベルまで展開すべきかについては,結局のところ自社にとって「管理の単位」として適切であるか,という視点で判断すべきです.

業務の目的だけを与えても,当該組織やそこに属する 実施者の能力・スキルがその業務を実施できるのに十分であれば,それ以上細かく展開する必要はありません.

逆に,細かいところまで展開しないと業務を確実に完遂できないのであれば,完遂できると思われる程度まで細かく展開しておくことが必要になります.

 

このことは,同じ業務であってもそれを実施する会社や実施者の能力・スキルによって展開のレベルが異なることがあることを意味します.

 

もう一つ留意すべきことは,すべての業務実施項目を同一レベルで展開する必要はない,という点です.一連の業務プロセスの中でも,当然ながら業務遂行が難しいところ,業務目的の達成に影響が大きいところ,すなわち“重要な”業務プロセスがありますので,その部分をより詳細に展開してくことが実用的です.

この際,その業務プロセスが重要かどうかの判断基準としては,以下の側面を考慮したほうがよいでしょう.

 

-致命性の程度

-結果への影響度合い

  -重要な結果に影響を与えるか

   -市場における競争優位要因,差別化要因(≒有すべき能力)となっているか

   -間違えば重大な市場クレームに直結してしまうか

  -結果に重大な影響を及ぼすか

   -結果の良し悪しへの寄与度合いが大きいか

-異常への対応可能性

  -異常を検知可能かどうか

   -検知するための技術(精度,安定性など)が不足しているか

   -検知に膨大なコスト・工数がかかるか

  -異常への適切な対応が可能かどうか

   -対応に必要な技術が不足していないか

   -対応方法が標準化されているか

-発生頻度

-異常な状態となり得る可能性の大きさ,発生確率

 

 

さらに,業務目的の達成だけではなく,透明性・説明責任,責任権限/役割分担に関わる基本方針などの別の側面をも考慮して,業務の展開レベルの適切性を総合的に判断することになります.

 

 

以上からわかるように,ただ業務機能展開一覧表を作ればよいのではなく,上で説明した注意・留意事項を理解した上で業務機能展開を適切に実施しなければ,そこから得られる効用やメリットを最大限には引き出すことはできないのです.

 

これでQFDの解説編を終えることとしたいと思います.次回からは飯塚先生にバトンタッチして,「作業標準」の解説がスタートします.

 

金子 雅明(東海大学)

一覧に戻る