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ここがポイント、QCツール 第5回 QFDの第2の役割:品質機能の展開<前編>  (2016-11-07)

2016.11.07

 

 

第5回目は,QFDの第2の役割である「品質機能の展開(業務機能展開)」について解説したいと思います.

 

 

1.品質機能の展開(業務機能展開)の目的

 

QFDの提唱者の一人である赤尾洋二先生によれば,品質機能の展開とは「(製品の)品質を形成するための職能ないし業務を,その目的,手段の系列でステップ別に細部に展開していくこと」であるとされています.

 

ここでいう“品質機能”とは,製品そのものが有する品質に関わる性能・機能のことではなく,そのような“製品の品質を形成するための職能や業務”を意味していることに注意してください.

また,“製品の品質を形成するための”という限定修飾語が付いていますが,広く考えれば会社組織内のあらゆる職能,業務は直接的,間接的に製品品質に影響を与えていると捉えることもできますので,その意味で,品質機能の展開とはあらゆる一般的な業務の機能展開,すなわち業務機能展開と同義と考えてもよいでしょう.

 

業務機能展開とは,“対象となっている業務で実施しなければならないことを明らかにする”ことを指します.

そのために,業務が有すべき機能(働き)に着目し,それを段階的に展開していくことで,業務機能を達成するための実施項目を導出していくことになります.

 

このように言うと,そんなことは毎日やっていることなんだからもうわかっているよ,と思われる人もいるかもしれません.

しかしながら,なんとなくわかっているようで,何をどこまで実施するのか,なぜその業務を実施するのかと改めて問われると,明確な回答が意外に困難であることに気が付きます.

 

実は,日常的に実施している業務であっても,各部門が実施しなければならない業務内容,すなわち業務分掌が明確にきちんと定められている会社・組織はそれほど多くはありません.

また,毎年とは言えずとも大幅な組織変更が行われます.本来ならば,組織変更に合わせてその都度,業務分掌を更新する必要がありますが,明確にされていないこともあります.

 

そのような頓雑な作業を避けるために,例えば工場の生産現場では業務分掌として「○○製品ラインの加工・組立」と書かれることが多いですが,これだけでは実際に何を実施すべきかを特定するのには不十分です.

 

また,これから初めて実施するような新規業務の場合ではどうでしょうか.

当然ながら,自分の会社内では初めてでも,それが日本初,世界初ということは稀ですので,会社外のどこかに参考にできる情報は存在します.

しかし,取扱製品や保有技術,設備,人などの経営リソース,作業環境,さらには会社自体が異なるのですから,それらの情報をあくまでも参考に留めておくべきであり,やはり自分自身でどのような業務を実施すべきかを抜け・漏れなく系統的に検討する必要が出てきます.

 

このように,自工場,自部門,自分が,会社組織全体の中においてどのような位置づけにあり,何を実施すべきかを体系的に明らかにする方法論が,QFDの第2の役割である品質機能の展開,すなわち業務機能展開なのです.

 

 

 

 

2.品質機能の展開(業務機能展開)の実施手順が意味するところ

 

業務機能展開の実施手順は大きく分ければ,以下のようになります.

 

1)業務の目的・目標の明確化

2)業務の目的・目標の達成に必要な機能の特定

3)特定した業務機能の展開

 

既に述べましたように,業務機能展開は対象となる業務で実施すべきことを明確にすることです.

 

実施すべきことはその業務の目的・目標に大きく依存され,これによって変わってきますので,まず最初に上記の1)を実施することになります.

わかりきっていると思っていても,実はよく分かっていなかったということがありますし,組織変更,会社全体の経営方針や事業目的の変更がある中で,実は今の業務の目的・目標がそれらとは整合性のないものになっていることもありますので,改めて考えてみることをお勧めします.

 

2)においては,業務目的・目標の達成に必要な業務機能を特定することになり,それをどのような視点で捉えるかが大切ですが,これについては後述します.

また,既に実施している業務を対象にしているのであれば,今実際に目の前で実施している業務を列挙してしまいがちですが,それは間違ったアプローチです.

「どのようにするか(手順、手段;how-to-do)ではなく、何をするか(目的、機能;what-to-do)を明らかにすること」が本質的にやりたいことですので,当該業務の目的・目標を達成するために必要な業務機能,すなわち本来あるべき業務の姿を特定することが大切です.これを,あるべき業務プロセスの設計,設計的アプローチと表現することもあります.

 

3)では,本来こうあるべきだと特定した業務機能の一つ一つに対して,1次項目,2次項目,・・・と細かく展開していき,具体的に実施すべき業務内容を特定することです.

ここでも,従来実施している業務が細かく書かれた業務手順書,作業マニュアルの内容を当てはめていく人が多いですが,そうではなく,“その業務機能を実現するためにはどのようなことを(本来)実施しなければならないか”という視点から,その業務機能を達成するために必要な業務実施項目,内容を過不足なく演繹的に展開していくことが大切なのです(なお,2)と3)の業務機能の展開方法の勘どころについては,次週に詳細に説明します).

 

このように,業務機能展開を行う際には,現在実施している業務内容そのものは意図的に頭の中から除外し,あるべき業務プロセスの姿を明らかにすることだけに集中するのです.

 

 

 

 

3. 適用場面と得られる効用・メリット

 

業務機能展開を用いて得られる効用・メリットは,何といっても“あるべき業務”,“本来実施すべき業務”を明らかにできることです.

その適用場面に関しては,主に新規業務プロセスを実施し始めるときと,既存プロセスの見直しのときの二つに分類されます.

 

“新規業務プロセスを実施し始めるとき”というと,稀にしかないと思われるかもしれません.

しかし,ここでいう“新規”とは,今までにやったことがまったくない,本当に初めての業務(例えば,新規生産ラインを立ち上げたとき)という場合だけでなく,新たな大型製造設備・システムを導入したとき,国内の工場で実施していたことを海外の工場を立ち上げて実施するとき,ある業務機能を関連子会社に移管するとき,新たな技術・手法を導入したときなどもその範疇に入ります.

このようなときに業務機能展開をあらかじめ実施することで,それを実施しないで業務を開始した後に発生する多くの問題を未然防止することが可能となります.

 

“新規業務プロセスを実施し始めるとき”が全くの新しい業務プロセスを始めるときだけでなく,既存の業務プロセスであっても何らかの外的要因によって見直すときも意味していました.

ここでいう2番目の“既存プロセスの見直しのとき”とは,きっかけが外的要因ではなく,むしろ既存業務プロセスのパフォーマンスが低いので改善したい,今のパフォーマンスは特に悪いわけではないが毎年これを継続的に向上させたいという内的な要因をきっかけとしたときを指します.

 

既存プロセスを見直す際,多くの人は今の業務プロセスを前提として話を進めます.

これはこれで大事なことですが,一方で業務機能展開によりあるべき業務の姿を明らかにしておいて,それと今の業務プロセスを対比させてその差異をチェックすることも重要です.

とりわけ,慢性不良と言われるような問題については,この後者のアプローチが有効になります.

なぜなら,いま実施している業務の方法や手段のどこに問題があるかという思考から視野をさらに広げて、そもそも目的達成のために何をすべきか、その視点から現在の方法・手段そのものに問題はないかについて検討・考察することができるからであり,これが業務機能展開のひとつの重要な効用・メリットなのです.

 

最後に,業務機能展開は通常一人では実施せず,対象となっている業務に関連する複数の人達が集まって議論しながら進めていくのが一般的です.

このように,日常的な業務の実施から少し離れて,関連する人たちの間で“本来私たちの業務はこうあるべきだ”と議論することがとても重要です.

これにより,業務の目的・目標の再認識,共有化が促進されたり,業務のやり方についての重要な気づきやヒントを得ることも多々あり,業務パフォーマンス向上のための数少ない貴重な機会となりえます.

 

金子 雅明(東海大学)

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