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メルマガ④ ここがポイント、QCツール

ここがポイント、QCツール 第4回 第1の役割:品質の展開<後編>  (2016-10-31)

2016.10.31

 

本日は、前回の「ここがポイント、QCツール 第3回 第1の役割:品質の展開<前編>」に続く、後編をお届けします。

前回は、

 

1.品質展開の(主な)目的

2.品質展開の実施手順が意味するところ

3. 適用場面と得られる効用・メリット

 

と説明してきましたので、今日はその後を受け、4. からです。

 

 

 

4.他の手法との関係

 

品質の展開においては,顧客の声はインプット情報として扱われています.

しかし実際には,その情報を如何に収集するのかに興味がある読者もいるでしょう.

その場合には商品企画七つ道具で紹介されているアンケート調査,インタビュー調査方法などが参考になるでしょう.

また,品質の展開の実施手順の2)においては,競合との差別化を踏まえた重要要求品質の特定が重要であると説明しましたが,このためには同じく商品企画七つ道具内のポジショニング分析が役立ちます.

 

また,実施手順4)ではボトルネック技術を把握することになりますが,この検討に当たっては,品質工学や実験計画法を用いた解析を実施することが少なくありません.

本メルマガのツール編でも,この後に統計的手法の紹介がありますので,それを参考にしてみてください.

 

さらに,後に紹介を予定しているDR(デザイン・レビュー)においても,ここで作成した品質表が重要ドキュメントのひとつとなります.

ISO9001においても,設計・開発のインプットとアウトプットを明確にしてその検証と妥当性確認を要求していますが,その際にもこの品質表を活かすことができます.

 

 

 

5.実施時の注意・留意事項

 

品質の展開を実施する際に注意・留意すべき事項について解説します.

 

(1)生のデータから要求品質に展開する際のシーンの想定

品質の展開の実施手順1)は,顧客の生の声から本質的に意味のある情報を抜き出し,顧客が真に求める要求品質を整理することであると述べました.

このためには,どのような顧客がどのような状況で製品を使うのかを,分析する側がよく理解しておく必要があります.

そのために有用だと思われる考え方や視点を紹介します.

 

ひとつめは,いわゆる5W1Hと言われるもので,顧客が発した生の声が踏まえて誰が(Who),いつ(When),どこで(Where),何を(What),どのように(How),なぜ(Why)を深く検討していきます.

QFDの多くの本ではこれを“シーンの想定”と言っています.

 

他にも,とりわけマーケティング分野で開発された考え方,方法として,ペルソナ分析があります.

これは,ターゲットとするもっとも代表的な顧客のプロフィールを掘り下げて,顧客がどのような状況の中,何を考えて何に困っているのか(逆に何が好きなのか)などを具体的な人物像として可視化し,理解します.

 

そのほかにも近年では,顧客が何に困っていて,それを解決するために自分が必要とする製品・サービスをどのように理解し,探索し,購買決定し,使用開始し,継続し,廃棄し,次の新たな買い物につながるのかの全体像を理解することを目的に,カスタマージャーニー・マップ,消費チェーンという考え方が欧米で提唱されています.

 

 

(2)要求品質と品質特性値との間の関係把握

品質の展開の実施手順4)が最も重要なところだと述べました.

一言で品質表を作成すると言いましたが,実際には,要求品質と品質特性値の間の因果関係の理解が必要不可欠で,そのための根拠となる設計技術・知識がなければいけません.

通常は,品質表を作成する際には,これまでに会社内に蓄積された類似製品の設計知識・技術を検索・照合して,当該設計対象の製品に適用できる場合にそれを当てまめることになります.

当然ながら,因果関係が分からない場合はそれをボトルネック技術として取り上げて,要素技術開発を行うことになり,その結果わかった新たな科学的事実を品質表に反映させ改良していきます.

これによって,影響する品質特性項目やその値自体が頻繁に変更されることもあるので,設計・開発の変更管理を適切に行う体制づくりも大切になります.

 

また,近年の顧客ニーズの多様化・成熟化に伴い,顧客の要求品質が非常に曖昧な場合(かっこいい,持っていてドキドキワクワクするなど)が少なくありません.

製品の性能・機能よりも人間の五感や感性で感じたことを製品の品質特性値に反映することが企業に強く求められています.

それを解決する手法も多く開発・提案されていますが,例えば超ISO企業研究会メンバーの一人である早稲田大学・棟近雅彦先生は,人間のフィーリングや感性と品質特性項目との関係を把握するために,人間の認知・知覚過程に基づいたグラフィカルモデリング(GM)分析手法を提案しています(参考文献;棟近雅彦,三輪高志(2000):感性品質の調査に用いる評価用語選定の指針,品質,Vol.30,No.4,96-108).

この分析結果からわかった知見は新たな設計知識の獲得と蓄積,レベルアップにつながるのです.

 

 

(3)重要な品質特性項目・仕様とは

品質の展開の実施手順の4)の結果として,どの品質特性項目が重要であるかを特定することができますが,何をもって重要であるか,その判断基準は人によって大きく異なることがありますので,前もって明確にしておくことが大切です.

 

一つの基準は,例えば製品の安全性など,何か不備があればすぐに重大な市場クレーム,顧客に何らかの損害を与えてしまう事態に直結する品質特性であるかどうかです.

多くの設計者は,実現するのに高度な技術が必要な品質特性に注目しがちですが,足元をすくわれないようにしなければなりません.

 

もう一つの有用な基準は,この品質特性を実現することによって,市場での差別化要因,製品の競争力強化につながるかどうかです.

ここで留意すべきことは,競合と差別化できているが顧客から見たら意味のない差異になっていないかをチェックすることです.

製品の仕様を決める際にはついつい競合ばかりを見て仕様を決めてしまい,顧客のニーズがなおざりにされているケースを見受けしてしまいますが,それを避けることが重要です.

 

 

(4)品質の展開の応用

今回のメルマガでは,とりわけ顧客の要求品質から製品の品質特性への展開にフォーカスを当てて説明しました.

同様な考え方を用いて,製品の品質特性→機能部品への展開→ユニット部品への展開→製造工程への展開についてもQFDの中で提唱されています.

また,品質の展開だけでなく,その他にも,技術展開,コスト展開,信頼性展開があり,これらを合わせて“総合的品質展開”と呼ばれています.

 

このように,QFDとは製品の品質,技術,コスト,信頼性などの様々な要求を実現手段に展開し,要求事項と実現手段の間の連鎖(因果関係)に着目します.

そして,この連鎖を理解した上で製品設計を論理的に行うことで,“なぜこのような設計にしたのか”に関する明確な根拠を与えることができるのです.

 

 

次回は,QFDの第2の役割である「業務機能展開」について解説したいと思います.

 

金子 雅明(東海大学)

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