活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第9回 山上裕司
2016.10.30
みなさんこんにちは.
今回は、山上裕司がつぶやきます。
今年の夏は、あまり、夏らしくなく、日本列島は、数多くの台風にさらされています。
私の田舎である、北海道では、台風というものは、ほとんどなく、北海道に上陸頃には、熱帯低気圧に変わっていました。
しかし、今年は、強い勢力を維持したまま台風が東北、そして北海道に、見たことのない規模の被害、人災もたらしました。
今日のつぶやきは、その、”見たことのない” ということからの話題です。
約2ヶ月前ですが、知り合いの米国人とネットで議論をしていました。それは、Preventionという言葉についてでした。
その米国人は、原因分析の専門家です。
そこで、私から、Prevention という言葉には、再発防止と、未然防止という意味があるが、英語では、そのような意味は含まれているのか、
どうだろうか、という質問をしました。
すると、彼から帰ってきた質問に、軽い衝撃を受けました。
“未だ起きていないことは、本当に予測できるのか?”
いやいや、起きてはいけないことを積極的に事前につぶしておく努力は必要でしょう、と反論しつつも、心の中でモヤモヤしてきました。
今年、東北、北海道に上陸した台風により16人の方が亡くなっています。そして、その台風についてニュースが使った言葉は、
“想定外”
でした。私達は、今年の台風は、とても勢力が強いことを事前で、認知していました。でも、自体は、私達の想定を超えました。やはり、私達は、本当に、起きていないことは予測できないものでしょうか。
そんなモヤモヤを抱きつつも、
“いやいや、様々リスクや失敗を予測する手法や技術があるじゃないですか?” と、質問しました
すると、その米国人が言った言葉はこうでした。
“それは、過去にすでに起きたことや、それに類似する事象を列挙しているのではないか。列挙ができる、ということは”想定内”だからではないか?
かなり強いパンチを感じました。
また、自分にも思い当たることがあります。
ある顧客の情報セキュリティリスク分析を支援していた時です。
列挙されたリスクを良くみると、すでに、過去に発生した事象ばかりです。ですので、対策もすでにわかっています。
ならば、最初から管理の仕組みを決めれば良いはずです。
わざわざリスクの重みを算定する必要があったのか。どちらかというと、どの管理の仕組みに重点を置くのか、ということを算出しているようです。
結局、発生頻度が少なリスクは、”めったに起きない”として扱われ、”年に一度確認しましょう”程度の管理となりました。
また、振り返ると、福島原子力発電所の事故も、あのような規模の地震は、”想定外”として扱われていた結果、事前対応は不十分のまま、大きな被害、被災に至ることとなりました。
なんとなく、納得した部分と、まだ、モヤモヤとした部分が混ざりながら、その米国人に、次の質問をしました。
“では、私達は、どうしたら良いのでしょうか。”
すると、次の答えがありました。
“Prevention” は、最近起きた事象・事故だけでなく、かつて起きたこと、更に他で起きたことを繰り返し学習しその痛みを感じる必要がある。すると、これから未来に何をすべきかがわかってくる、また、人々も行動する”
何やら、”深い”回答ですが、納得できる部分が、ありました。
以前に起きた事象・事故を再度発生させないためには、ではなく、人の認識に、過去の痛みを含め、どれだけ刷り込みができるのか、ということが重要、ということです。
確かに、分析表に、様々な文字や数値が並んでいると、正しいことをやっている感じはしますが、過去の痛みは感じられません。
ここで、ふと思い出したことに、次があります。
それは、”津波てんでんこ” です。
その意味は、”津波が来たら、取る物も取り敢えず、肉親にも構わずに、各自てんでばらばらに一人で高台へと逃げろ、自分の命は自分で守れ”というものです。
まさに、この米国人が示唆していることと同じ内容に思えます。
さて、この米国人の思う通りに、納得をさせられましたがこれで、終わってしまっては、何か悔しい思いがあります。
で、この原稿を見直すと、”人は、起きていないことは予測できない”、という視点から始まっていますが、すると人は、そのような事象・事故に翻弄されるだけの存在でしょうか。
ということで、悔し紛れに、次の提案を示し終わりたいと思います。
ネタは、もちろん、ISO9001:2015規格 4.1です。
すなわち、起きていないことに、どうにか近づく(予測)するために、ISO9001:2015規格 4.1 を、この話題の文脈で解釈してみましょう。
すなわち、組織の内外にあるコンテクスト(変化する状況)は、それだけを見つめても大雑把な視点しか得られませんがかつて起きた事象・事故の痛み、発生メカニズムと対策を良く理解した上で、組織の変化しているコンテクストが、その理解にどのような影響を与えるのかを明らかにすることが可能かもしれません。
また、将来における、事象・事故の発生メカニズムや対策、並びに結果として、リスクと機会をかなりの細部に至り見直すことが可能でしょう。
すると、完全とはいえませんが、多少は、未だ起きていない未来を、小さな穴から覗く程度はできるかもしれませんね。
さて、今回のつぶやきは、これでおしまいです。
読者の皆様に、少しでも、考えるネタを提供できているとしたら幸いです。