超ISO企業研究会

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活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第10回 山田 秀

2016.10.30

 

 

「Plan =目的を決める+目的を達成する方法を決める」

 

 

多くの市民ランナーにとって,フルマラソン(42.195km)で3時間を切り2時間台で走ることは憧れです.

マラソンが趣味の私ももちろん憧れていて,そして目標にし,ランニング道具の準備,精神面の育成などをしています.と同時に,品質管理について教育,研究をしているので,科学的に「PDCAをしっかり回す」を意識しています.

 

Plan:目標は3時間切りです.

 

このために,15km/日の走行,競技前の3kg減量,腹筋強化などいくつかの具体的な施策を決めています.

 

Do: 毎日の練習です.その内容を記録しています.

 

Check:競技会に出走します.目標の達成状況と施策の実施状況を確認します.可能性としては下記の4つがあります.

 

(a) 目標達成,施策実施

(b) 目標達成,施策未実施

(c) 目標未達成,施策実施

(d) 目標未達成,施策未実施

 

Action:状況に応じて処置をします.

 

昨シーズンは(d),すなわち,3時間切りもできず,また15km/日の走行,競技前の3kg減量が実施できませんでした.

 

この(d)ということは,本来やるべきことができていないために目標が未達成だった場合です.

 

そのため今シーズンも同じ目標,同じ施策を考えています.

加えて,昨シーズン15km/日の走行が達成できなかったかを調べたところ,アキレス腱の故障で2か月オフ,二日酔いによる怠惰な休みが月平均1.5日・・・などの分析の後に,施策の確実な実施に向け今シーズンを過ごしています.

 

仮に(c),すなわち,15km/日の走行,競技前の3kg減量などが実施できていて3時間切りができないとすれば,これらの施策が目標達成のために不十分であることを示しているので,施策を見直す必要があります.

 

目標が達成できても施策が未実施な(b)の場合には,たまたま運よく3時間が切れたのであり,なぜ目標が達成できたかがわからないままです.

 

したがって,次のシーズンで3時間が切れるかどうかわかりません.まずは,達成できた理由を分析する必要があります.

 

施策を実施し目標を達成しいる(a)は,結果とその原因という因果が正確に把握できていて,施策を継続的に実施することで結果の継続的な達成が高確率で期待できます.

 

このように,目標とそれを達成する手段を計画段階で決め,それらの達成,実施状況を2元的に評価することでPDCAが効果的に回ります...とまあ,偉そうに書きましたが,PDCAを回すことが目的ではなく,3時間切りが目的ですから,「言うは易く行うは難し」を実感しています.

 

さてPDCAのPlan段階で,目標とそれを達成する手段である施策を決めることの重要性について,どなたか初めて指摘されたのかは私が不勉強でわかりません.

 

石川馨先生(「品質管理入門第3版」,日科技連出版社p.49)は

 

Plan

1)目的を決める

2)目的を達成する方法を決める

 

Do

3)教育訓練する

4)実施する

 

Check

5)チェックする

 

Action

6)修正処置をとる

 

としてPlanを2段階に分けて明示されています.

 

Plan段階で目標とそれを達成するための施策を決める点は,組織の目標展開の上でもとても重要です.

 

例えば社長が目標とその達成のための施策を決めます.

その次の階層である部長にとっては,社長の施策が部長の目標になり,これを達成するための施策を決めます.

 

さらにその次の階層である課長にとっては,部長の施策が目標になり,これを達成するための施策を定めます.

 

というように,全社の目標が徐々に具現化する施策とともに展開できるからです.

 

目標とその施策という観点が抜けていると,全社の売上目標を部門別の売り上げ目標に分け,それを課別の売り上げ目標に分けるというように,単なる目標だけの展開になります.

 

これでは具体的に何をするのかがわからないため,精神主義的行動に陥らざるを得ません.

 

私が社会人対象の筑波大学ビジネススクールでこれらを説明する際,目標だけが見えていて施策が見えない組織は大変だから,次の職場を探したほうがよい,と半分冗談めかして言っていました.

 

すると,過半数の学生が同意していました.

案外,この展開がうまくいっていない組織が多いのかもしれません.

 

ISO 9001に,QMSの有効性という言葉が多数表れます.

これは,QMSの結果として経営目標を達成するという意味であり,QMSが経営目標達成のための施策である点を示唆してい

ます.また,結果とプロセスの両面を評価するという記述が随所にあります.

 

これは前述の目標とその施策の関係に対応しています.

どこまでが要求事項なのかという点では審査を悩ませると思います.一方,ISO 9001を活用して組織の質を高めたい場合には前向きに目標とその施策の2元評価とその対応を取り入れたらよいと思います.

 

さて,総合的品質管理(Total Quality Management)の行動指針には、今回取り上げたPDCAに加え,たくさんの有益なものがあります.

 

顧客指向、全員参加、トップのリーダーシップ、データで語る、継続的改善、プロセスで作りこむ、応急処置と再発防止...PDCAと同様に,どれにも深遠な意味があり,その実践は難しいですが,効果があります.

 

よろしければ,次の機会につぶやきます...

 

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