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基礎から学ぶQMSの本質 第33回 品質監査(製品監査とシステム監査)(中編)  (2016-09-05)

2016.09.06

 

前編では、日本におけるシステム監査は、診断(diagnosis)として発展してきたことを紹介しましたが、欧米からISO9001規格に基づく制度が日本に紹介されると、診断と同じ概念である内部監査方式が日本に入ってきました。

そして、第三者認証制度の広まりと相まって、急速にマネジメントシステム監査が日本に定着しました。

 

 

(2) マネジメントシステム監査

 

1990年代に入りISO9001が広まると、QC診断の代わりに同様な概念であるマネジメントシステム監査が行われるようになり、同時期に組織の内部統制(コーポレイトガバナンス)のための監査(J-SOX)も行われるようになりました。

システム監査は,製品の評価ではなく結果に影響を与える要素の集まり(システム)の有効性を評価することを目的としています。

そのためにシステム監査は一般者には抽象的な印象を与えます。

システム監査にも監査基準が必要であり、1980年代からISO9001が監査の基準文書として用いられるようになりました。

 

① 第一者監査(内部監査)

監査には基本的には3つの主体が存在します。

監査依頼者、被監査者、監査員の3者です。この3つの主体が、それぞれ独立して機能することで、監査全体の仕組みが公平で信頼性の高いものとして運用されていきます。

内部監査は組織の成長、発展の為に、組織の品質マネジメントシステム(以降QMS:Quality Management System)運用状況を確認し、改善していくためのものです。

監査の定義は、「監査基準が満たされている程度を判定するために、客観的証拠を収集し、・・・」となっていますが、“監査基準が満たされている程度”を判定する上で次の2つの観点があります。

 

a) 組織の標準文書が監査基準(例えばISO9001規格)に合致しているか。

b) 組織の活動が計画した標準文書に合致しているか。

 

内部監査は内部のプロセスをよく知った者が監査をするので、現場の事実に踏み込めまた適切な改善提案を出すことができ、組織にとっては問題の未然防止につながる極めて価値の高い活動です。

 

 

② 第二者監査

 現代においてはどんな組織も外部の力を活用しています。

部品を購入する、サービスを利用する、組立業務を一式外部に委託する、組織に変わって顧客に製品及びサービスを届けてもらうなど様々な外部活用が行われています。

 

外部に頼っている領域部分の品質保証は組織にとって極めて重要です。

組織は定期的に外部に頼っている製品及びサービスの品質を確認する必要があり、買い手組織が外部依頼先の該当製品及びサービスを基準に基づいてチェックするのが第二者監査です。

組織からみて品質の良い物を入手する一つの方法は検査ですが、当然の事ながら、検査にはコストがかかります(また検査では100%の良品の保証は困難)。

検査よりも工程で品質を作り込むことを優先したほうが得策です。

しかし、組織の狙いは製品品質にあるから、第二者監査にはシステム監査を優先しても製品監査も一連のスケジュールの中に入れ込むことが普通です。

 

供給者は通常複数以上の顧客(組織)と取引をしているので、大きな供給者になると毎月、又は毎週取引先からの第二者監査を受けることになり、第二者監査は供給者にとっては負担が大きくその軽減化は多くの供給者の取組みたいところです。

 

 

③ 第三者監査(審査)

組織の活動が国際的になるにつれて、第三者が組織のQMSを監査するという仕組みが1990年代広がりました。

この第三者監査は、第三者審査あるいは認証審査と呼ばれ、2010年代には世界で100万もの組織がQMSの第三者審査を受けるというほどに世界に広まりました。

 

1980年代の認証制度のスタート時(イギリスで始まったと言われている)、第三者審査は第二者監査に代わる方法であるとして宣伝され、供給組織はQMS構築並びに受審を前向きに捉えました。

外部委託を受ける組織にとってはいろいろな顧客から第二者監査を受けることは時間と経費の面から多くの負担となっていましたが、第三者審査を受ければ第二者監査の代わりになるという触れ込みに多くの供給者はこの制度に関心を持ち、受審する組織も年々増加しました。

加えて、B(Business)to B(Business)の世界では、買い手がISO9001の認証を要求するという現象も受審組織の増加に拍車をかけました。

 

しかし、第三者審査が第二者監査の代わりになるという前提は、第三者審査の信頼性にあるのですが、第三者審査の広まりと同時に、そのデメリット即ち審査の信頼性低下というネガティブな問題が目立ってきました。

現在、認証の信頼性向上は、ISO9001:2015の移行審査の大きな課題となっています。

 

 

a)  第三者審査登録制度

審査登録制度とは、顧客(買い手、消費者、国民)に代わって第三者(審査登録機関、認証機関)が組織のQMSをISO9001規格への適合で評価する制度です。

審査登録機関は、組織の信頼性を認定機関から評価されなければならない国際的な仕組みになっています。

我が国の認定機関は、財団法人日本適合性認定協会(JAB)であり、JABから認定を受けている審査登録機関は、我が国には約50ほどあります。

また、諸外国にも、我が国と同様に、各国に認定機関があり、その認定機関によって認定されている審査登録機関が数多くあります(一説には世界で数千あると言われている)。

 

組織は日本で審査登録を受けるか、外国で受けるかは自由であり、国際的には「相互承認」という制度が設けられています。

相互承認とは、各国の審査登録機関同士、あるいは認定機関同士が、お互いの審査登録結果、あるいは認定結果を認め合うというものです。

この効果により、外国で審査登録を受けなくても、外国の審査登録機関の審査登録を受けたと同等の効果を得られることになっています。

 

 

b) 審査登録の手順

QMS審査登録における手順は次の通りです。

 

●審査登録の申請と契約

組織は、どこの審査登録機関の審査を受けるかを決めなければなりません。

どの審査登録機関に登録審査の申請をしても構いませんが、審査登録機関の専門性を考慮するとよいでしょう。

 

●書類審査

審査登録機関と契約を結んだ後は書類審査に進みます。

実地審査に先立って組織にISO9001に基づいたシステムが存在するかを書類で確認します。

 

●実施審査:

書類審査のあと実地審査が行われます。

実地審査は、一定の資格を有した主任審査員と複数の審査員から構成される審査チームが、審査登録の対象となる職場を訪れて行います。

実地審査においては、最初に会合が持たれ、審査の対象となる製品や組織、審査の基準となる規格、審査のスケジュールなどの確認が行われます。

 

・審査チームの構成及び審査の実施日時を含めた審査計画の作成

・各審査員への担当の割り当て及び審査員による調査項目チェックリスト等の準備

・被審査側との初回会議

・実地審査の実施

・被審査側との最終会議

 

実地審査のポイントは、規定文書に書かれていることが実際に行われているかどうかを、記録・文書などを客観的証拠に基づいて判断することです。

実地審査の最後に行われる受審組織との会議では、審査チームが不適合(規格の要求事項を満たしていない場合)を発見した事項について見解を述べ、受審組織の同意を得ます。

 

●報告書の作成・配付、是正処置及び再審査

実地審査が終わると、審査チームは報告書を作成し、審査登録機関内に設けられている公正なメンバーによる判定を受けその報告書を受審組織に提出します。

判定委員会は、書類審査と実地審査の結果である審査報告書に基づいて、登録するかしないかの判断を下します。

結果は、審査報告書とともに受審組織に通知され、場合によっては、判定留保となることもあり、この場合は、受審組織は、不適合事項に対して是正処置を行い、必要に応じて再審査を受けることになります。

 

●登録の承認、登録証の交付、審査登録費用の支払い

評定委員会で登録の承認が得られた組織に対しては、登録証が交付されます。受審組織は、登録料を支払います。

 

●組織名の登録・公表

登録された組織については、審査登録機関が一覧表を作成し、公表することになっています。

 

(つづく)

 

(平林良人)

 

 

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