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基礎から学ぶQMSの本質 第32回 品質監査(製品監査とシステム監査)(前編)  (2016-08-29)

2016.08.29

 

今回からは品質監査について3回に分けて述べさせていただきます。

品質監査は、製品監査とシステム監査とに2大別することができますが、そもそも「監査」とはどのような背景をもつ活動なのかから説明させていただき、3回目後編には品質監査の受け方、監査する側のスタンス、心がけなどについても触れされていただきます。

 

 

前編

 

監査は、英語でauditでありその原義はaudio(hearing)だと言われています。

古代ローマ時代、皇帝が遠隔地の属州に出した勅令が本当に届いているかどうかを確認するために“聞き人”(auditor)を派遣して、現地でインタビュー調査し、その結果を報告させました。

これがauditのはじまりだと言われています。

 

その後、18世紀ヨーロッパの会計監査に発展、進化しました。

それ以来、資本主義経済社会の拡大とともに、利害関係者(株主)が投資した先の組織を監査することが常識になり、世の中に定着しました。

監査を行う理由は、利害関係者(株主)が投資先はきちんとルールに基づいて適切に運営をしているかどうかを専門家(監査員)にチェックしてもらうことにあります。

近代社会になってからは、組織経営の会計、税務にとどまらず、製品品質、環境保全、社会倫理などの観点からいろいろな形の監査へと発展しました。

 

品質監査は、社会から一層厳しく要求されている製品及びサービスの品質を的確に把握するために、組織にとって欠かせない活動です。監査(audit)は、「監査基準が満たされている程度を判定するために、客観的証拠を収集し、それを客観的に評価するための、体系的で、独立し、文書化したプロセス」です。

 

また、監査基準は「客観的証拠と比較する基準として用いる一連の方針、手順又は要求事項」であり、客観的証拠は「あるものの存在又は真実を裏付けるデータ」とされ、品質監査には次のようにいろいろなタイプがあります。

 

(1) 監査の対象による分類

 

①製品監査:製品及びサービスをチェックする。

②システム監査:マネジメントシステムをチェックする。

 

日本式品質管理(TQC)では監査とは言わず診断(diagnosis)としていましたが、ISOの考え方が広まってからは品質監査の一部と捉えるようになりました。

 

(2) 監査する人による分類

 

①第一者監査:組織自身が自分を監査する。

②第二者監査:組織が供給者を監査する。

③第三者監査:独立したものが組織を監査する。

 

 

1.製品監査

 

製品監査は、製品品質そのものについての監査です。

製品が顧客要求事項を満たしているかどうか、製品規格が妥当であり規格通り作られているかを監査します。

組織では当然のこととして、製造あるいはサービス提供の現場で品質の確認を行っていますが、製品監査はそれとは独立して(あるいは並行して)製品の出来栄え、各種基準への適合を評価しようとするものです。

 

(1)製品評価

 

製品及びサービスそのものを評価します。新製品発売時には入念に、その後は決められた期間ごとに定期的に評価します。

・工程内検査項目のチェック

・出荷検査項目のチェック

・長期信頼性評価,

・使用限界試験

・実用テスト

・いじわるテスト

・サービス妥当性確認など

 

(2)製品説明書、サービスパンフレット評価

 

ユーザが製品及びサービスを使用する時、それを支援する説明書に使用方法、効用、アフターフォローなどが適切に記述されているかどうかを評価します。

新製品初回時は全項目を評価しますが、派生製品発売などの変化があった時にはギャップを明確にして、その差分の評価項目に絞ってチェックします。

 

特に法的要求事項に規定されている項目は重点的にチェックします。

・使用条件

・危険への配慮事項

・幼児など弱者への配慮

・アレルギー

・廃棄処分方法など

 

 

2.システム監査

 

製品監査はプロセスの結果を評価しますが、効果的に製品及びサービスの品質を管理しようとすると、最終までいってから検査、評価するより作られる過程で評価するほうが経済的に得策です。

「品質は工程で作り込む」という格言がシステム監査の概念を言い表しています。

日本ではかってQC診断と称して次のような観点で工程を評価していました。

 

・材料は規定のものが用いられたか

・設備は管理された状態のものであったか

・作業者の能力は大丈夫か

・製造工程は管理された条件で行われたか

・設計、購買、品質保証などのスタッフ業務は管理されているか、など

 

 

(1) QC診断

1970年代を中心にTQCで行われていたPDCAのCheckにあたるステージであり、プロセスで規定されたことがきちんと行われているかチェックしようとするものです。

規定されたことの概念は広く次のようなことを含みます。

 

・品質管理の進め方

・設計管理

・工程管理

・外注管理

・クレーム処理

・新製品開発

・顧客満足度など

 

QC診断は目的によって次のように分けられます。

 

①社外の人による診断

-買手による売手のQC診断

大手メーカーは外注会社に対してQC診断を行い、自分達の品質管理に極めて強い影響を及ぼす部品、製品を中心にチェックを行います。

「規定や標準はあるか」「書式やデータはそろっているか」などといった、形式のみの診断は避けなければなりません。

 

②資格付与の診断

JISマーク審査がこれに当たります。

審査に合格することが目的化すると、担当者に形式的な書類を用意させて「書類作りの品質管理」をすることになります。

 

③デミング賞

石川馨は「全社的品質管理、統計的品質管理を推進するために受審するのである。デミング賞をとるために受審してはならない。社長がリーダーシップをとって、これに挑戦すれば、全重役、全部課長、全従業員の考え方が変わって、経営の体質改善ができる」と戒めています。

 

② 社内の人による診断

実施する人により次の4つがある。

a) 社長QC診断

b) 部長QC診断

c) QCスタッフによるQC診断

d) QC相互診断

社長QC診断が一番効果的なものです。文字通り社長自身が工場、事務所、営業所等へ出向き自分の目で診断をします。社長QC診断の目的は次の通りです。

1)品質方針の運用状況

社長が自分で決めた方針の実施状況を確認します。現場をみることで場合によっては、方針が適切ではない、ということが理解できることもあります。

2)品質管理機能の状況

例えば、工程内不良の発生状況、市場クレームなど、組織全体の品質管理状況を診断します。

3)社長の勉強の場

トップは普段現場を訪問する時間がなかなか取れません。組織の現場を知ることは何にも変えられない大きな価値をもたらします。

 

QC診断は組織全体の車輪を回転させる重要な活動でありますが、次のような問題点も指摘されています(水野滋)。

「QC診断に関しては、一般に次のような点に問題を意識しなければならない。

1)診断の目的が正しく理解されているか。

2)診断の方法に誤りはないか。外面の形式に惑わされたり、部分的な見方をしていないか。

3)診断の結果が品質管理推進計画にフィードバックされているか。

4)重要品質問題になる芽を見逃していないか。

5)診断のための修飾ではなく日常の状態をみているか。

6)先入観をもってみていないか。」

 

(つづく)

 

(平林良人)

 

 

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