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基礎から学ぶQMSの本質 第31回 重要品質問題への対応(後編)  (2016-08-22)

2016.08.22

 

 

前回に引き続き重要品質問題への対応について述べます。

 

前回、重要品質問題は設計・開発、製造など組織内の問題から、原料などの取引先における問題、製品が顧客に手に渡ってしまったいわゆる市場クレームまで、いろいろなタイプの重要品質問題があり得て、それらへの対処も場面に応じて多岐にわたることを説明してきました。

そして、多くの場合全社的なプロジェクトとして対応することが望ましいことも述べました。

 

今回は市場クレームにおける顧客管理、また費用をコストとみるのか投資としてみるのかなどについて触れます。

 

 

 

1. 顧客管理

 

重要品質問題が市場クレームの場合は、顧客管理が重要になります。苦情を表明した顧客を中心に、このクレームの対象範囲を確定します。

同様な苦情が、他の小売店、サービス店、営業所などの種々の窓口に来ていないかも把握しなければなりません。

もし、当初の調査で把握できずに後から同様な欠陥品が発見されると、クレーム処理は迅速性を欠き、後手に回ることになりますので、この調査は確実に行う必要があります。

 

この調査を確実に行うためには、今回のクレームが組織の重要品質問題として登録され、かつタスクチーム(もし結成されれば)がプロジェクト活動を開始したことを広く関係者に周知しておく必要があります。

同種の苦情、クレームのすべてはタスクチームに集まるように、苦情受付け手順、留意事項について小売店、サービス店、営業所などに伝えます。

当然のこととして、その過程においては、対象となる顧客名簿の作成もしていきます。

 

さらに、欠陥の影響が大きいと思われる場合には、顧客からの申し出を待たず、既に製造、販売された製品について処置をとる必要があります。

製品が顧客に危害を及ぼす恐れがあると予測されるときや、機能、性能上看過できない欠陥については、その欠陥について公表し、無料で点検し、所要の修理・取替えを行ないます。

 

 

 

 

2.重要品質問題処理の費用

 

組織経営へのインパクトを明確にするため、重要品質問題処理のスタートから解決宣言までのあらゆる費用を把握します。

考えられる費用には次のようなものがありますので、重要品質問題処理のスタート時に関係するデータを収集する仕組みを構築しておかなければなりません。

 

・人的費用

-組織内(部署ごと)

-組織外(法人、機関、会社ごと)

 

・材料、部品、完成製品代

 

・流通、旅費・宿泊費(出張費)、通信費

-国内

-海外

 

・損害賠償金 など

 

 

費用の把握に当たっては、2つの視点から管理することが必要です。

重要品質問題処理に当たって、プロジェクトを組むか否かに関わらず、組織では問題処理に当たっての大枠の予算を組みます。

一般に、組織におけるコスト意識は高く問題処理への費用は最低限に抑えられる傾向が強いでしょう。

重要品質問題の処理に当たっても、現在考えられる規模から費用算出をしての最大予算、すなわち限界である天井を決め、これを意識して問題処理を推進することが多いものです。

これが一つの視点であり、掛かった費用を組織運営のコストとして見る意識です。

 

もう一つの視点は、掛かる費用をコストと見ないで投資としてみる考え方です。

よくピンチはチャンスであると言いますが、重要品質問題は大きなチャンスを秘めている可能性があります。

本稿その1にある1.重要品質問題で取り上げた5つの事例にはどんなチャンスがあり得るのか説明します。

 

 

①設計・開発段階での品質トラブル

 

トラブルの内容によりますが、この品質トラブルを解決すれば目標としている製品の実現化に目途がつくような場合には、いま挑んでいる設計・開発は将来の組織競争力の源泉になるかもしれません。

この問題解決のカギになった技術は、将来、組織の保有する優良特許になるかもしれません。

もしここで、品質トラブル解決に掛かる費用をコストとみて予算オーバーを理由に設計・開発を中断する判断をしたら大きな悔いを残すことになるかもしれません。

ちょうどゴール寸前に力尽きてしまい、後で悔し涙に暮れるランナーのようなものです。

 

②新製品の初期流動段階での品質問題

 

ここにおける費用は、新製品開発のための投資とみることが、一般には多いと思います。

ただし、問題解決した後の技術確立が標準化されなかったり、知財化されなかったりすると投資ではなくなり、コストに変じてしまいます。

 

③部品、材料供給元での品質トラブル

 

多くは組織外の問題解決になりますので、協働して問題解決した結果の中に知財となりうるものがあるのかの技術的見極めが重要です。

もし、その技術的知見が一般化できるものであれば、2社間の知財管理契約の締結を考えなければなりません。

当然、その場合は投資という見方で問題解決に当たることが妥当でしょう。

 

④製造部門における品質トラブル

 

原因の分析の結果、トラブルがルールを守らなかったために起きたのか、そうではなかったかによって、コストと見るか、投資として見るかが変わってきます。

後者の場合は、いわゆるノウハウとして組織に蓄積された固有技術として扱うことになり、掛かった費用は投資として見ることができます。

 

⑤消費者の使用・安全に影響を与えるクレーム

ここにも投資として見るべき要素があります。

例えば、なぜ検査で見逃したのかを分析した結果、思わぬ原因がありえてその問題解決過程で新規の検査技術が確立できた、というようなこともあります。

もちろん、市場からの回収、代替品の供給、回収製品の処分などには、一般に技術的要素はなく、顧客の信頼を維持していくことが目的である場合が多く、コストと見なされるケースが多いと思います。

ただ、投資とは言えなくてもきちんとした後始末が顧客の感動を呼ぶということもあり得ますので、手を抜くことはできません。

 

 

 

3.問題解決宣言

 

重要品質問題の報告書を作成し、社内確認(必要な場合報告会を実施する)をすることで、関係者に重要品質問題の処理が終了し、タスクチーム(編成した場合)を解散することを責任者が宣言します。

 

報告書は次のような項目を含んで(これには限らない)発行するとよいでしょう。

 

・問題発生から処理完了までの経過

・問題再発の可能性(リスクの存在)への言及

・問題処理費(例えば、クレーム処理に要した総コスト)

・問題処理を通じて得られた知財(場合によっては投資とみなせる費用)

 

 

(平林良人)

 

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