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基礎から学ぶQMSの本質 第22回 方針管理(2016-6-20)

2016.06.28

 

<運営編>第2回目は、「方針管理」です。

 

<運営編>第1回目は、「日常管理」でした。

少しおさらいをすると、「日常管理」とは”それぞれの部門で日常的に実施すべき業務を効率的・効果的に実施していくための管理”であり、その基本は、標準化を基礎として、部門が果たすべき業務のPDCAを適切に回すことという解説がありました。
さて、今回は「方針管理」つまり、”組織全体で全社的な重要課題を解決するための管理”がテーマとなります。

 

 

1.「方針」の定義

 

「会社(上)の方針がわからない」といったように「方針」という言葉は組織で働く者にとって、広く使われている馴染みの言葉ですが、ここでは、あらためて「方針」を〝そのときの経営における重要課題″と定義します。

したがって、普遍的な経営上の課題や社是のようなものとは区別して考える必要があります。

 

 

 

2.方針管理とは何か

 

現在の最も重要な課題に組織を挙げ取り組み、その課題を解決、達成するための管理です。

〝方針は決めて、周知徹底すればよい。(あとは通常の組織の管理システムによって達成される。)″と考えている向きが多いかもしれません。

クラッシックの演奏会に行くと、演奏中、演奏者はほとんど指揮者を見ていないので、オーケストラに指揮者が必要なのか、と思うことがありました。

この楽曲を演奏するのに必要なパートと人数がそろっていて、楽譜があって、必要な楽器が調音されて用意され、各パートは熟練の演奏者で成り立っていますので、後は演奏者が体調不良やら楽譜が照明の反射で見えないとか、といったことがなく環境が整っているならば、後は何が必要なのだろう、と。当の指揮者に聞いてみると、やはりオーケストラは指揮者不在でも、楽曲を楽譜通りに完璧に演奏することは可能なのだそうです。

しかしその日その時に聴衆を感動させる音楽を提供することは指揮者なくしてはできないことなのだそうです。

指揮者の果たす役割が組織のトップマネジメントによる方針管理における役割とどの程度共通しているかはわかりませんが、重要課題への集中と達成にあたっては、通常の状態では十分な成果を期待できるような運営管理だけでは不十分であり、組織全体を俯瞰し、一体にして、ある課題を達成する、独立した別個の管理手法が必要だということは少なくとも共通しているのではないでしょうか。

 

 
3.方針管理の4ステップ

 

(1)方針の策定

 

普遍的な方針は、日常管理などの通常の運営管理の中で取り扱われて、よりよい組織の基盤、能力を作っていくためのPDCAにつながってゆくもので、ここでいう方針とは区別します。組織の内外の状況は常に変化します。

経済、市場、環境、技術革新、人々の志向、などなど。組織のトップはその変化を分析し、中長期の組織の課題を特定し、中期経営計画(中経)に落とし込むといったことをしています。

この分析から、資金調達が重要であれば、ひとつの方法として株式の上場とか、技術革新などの変化へのスピーディな対応が重要課題とすれば、会社の分社化といった方法も出てくるでしょう。

もう少し規模の小さな組織では、新規製品の開発や、合理化の促進など、あり得るかもしれません。

こうした大きな課題の達成と解決のために、よりブレークダウンした内容を含んだ展開された中経が策定されます。

そして、年度ごとの方針・計画が中経達成のためのマイルストーンが策定されます。中経策定段階で暫定的に策定された年度方針・計画は、2年目以降、もしくは必要に応じて適時、内外の状況の変化や、前年度の結果、そこまでの過程で得られた知識経験などによって見直される必要があります。

 

(2)方針の展開

 

方針管理という言葉にはあまり馴染みがない向きが案外多いのではないかと思います。

私自身、方針というものは、トップとして明確にし、管理職がその方針に沿って、判断、行動することが組織運営上重要だ、というところまでで終わっていました。

そのために、システマティックに「管理」しようという認識は持っていませんでした。遠くに見える灯台のようなもので、船から見えていればよく、目標にたどり着けるかはまた別のこと、といったような。目標管理と方針管理との大きな違いは、重要課題の解決や達成までの実現手段やプロセス管理へのアプローチがないことだと言われています。

つまり、全社方針→事業部方針→部門方針→課方針といったように、組織の構造とその役割に従って、展開され、そのつながりが見えるようにすることです。方針がわかり、それぞれの単位における方針が会社全体の方針達成のためにどうつながって貢献するかが理解されていることは組織を方針達成に向かって進める大きな力になるのではないでしょうか。

確実な実施と、振り返りの際の問題の特定を容易にするため、できるだけここでは各々の実施項目について、誰がいつまでに何をどのレベルで進捗させるか、といった項目を決め込みます。

最小単位までの各機能で期待される貢献を方針策定時に速やかに展開案に落とし込むためには、通常時の日常管理を含む基盤が可視化されて運営されていることが大切になります。

もしその基盤が堅牢でなければ、方針を達成するために何をするか、までを分析して決定した後、どうやるかを決めるところで大いに難儀をし、時機を逸してしまったり、結局達成できないことになりかねないのです。

何事もここぞ、というときに力を発揮するには、日ごろの鍛錬が大事なのでしょう。

 

 

(3)進捗管理

 

(2)の展開計画の管理項目と工程進捗計画をベースに、具体的な進捗管理活動の実施計画を作ることが肝心です。

必要に応じて、進捗管理表を維持管理する事務担当を指名しておくとよいでしょう。また、全社で進捗するわけですから、当然ながら他の部門、課、個人の進捗が相互に連動し、作用しあっています。

したがって、どの単位での方針進捗の確認を、どの頻度で、どの単位レベルで進捗の確認をするかの計画をしっかり立てて実施することももう一つのポイントになります。

また、進捗管理というと、できた、できていない、の結果の報告確認に重点が置かれてしまうケースがあります。

その時点までの進捗を確認して、分析し、この後の計画を見直し、方針達成に向けて今後の順調に進捗させるための対策を考えることが本来の目的です。

現状の問題の把握と、その時点までに確認された阻害要因について、起こったことや起こりそうになったことを分析して対策を検討し、そこからの実施計画に反映させることが重要ですが、計画通りに進捗していないなら無論のこと、計画通りに進捗していたとしても、振り返ることが重要です。

そして今後順調に進捗させるための対策として、今すでに顕在化している問題の解決方法と、再発防止、この先起こるかもしれない問題を未然に防ぐ方法の決定、さらには今後の課題を見直します。

 

 

(4)振り返り

 

進捗管理の際に行う問題解決、再発防止、問題の発生防止、課題の見直しにおいて、どうしてそのような問題が起こったのか、どうして計画通りに進まなかったのか、を技術的な側面や組織のプロセスの側面などでのメカニズムで分析し、改善策を立てます。

組織では一般に経営トップレベルで年度方針・計画についての進捗やそこで確認された問題と解決策、特定された原因となった要素などについて報告されるでしょう。

進捗の管理のために実施された原因分析とその結果取られた解決策などを全社で横断的にかつ包括的な視点で振り返り、問題が起こった原因のみならずそれらを引き起こすような誘因など、また通常ではなかなか取り扱いにくい人、財務資源、文化などの要素についてもここで俎上にあげて、振り返ります。これによって、全社が一丸となって方針を達成するための仕組みが効果的に運用できます。

 

 

 

4.方針管理の成熟度

組織には多様な管理項目に対して、個々に異なる成熟度にあります。

例えば導入期は、方針管理については、方針そのものが、普遍的なものになってしまったり、社是のようなものであったり、各分野において課題が特定されて、経営の最重要課題を絞り切れなかったりします。

その状態だと、各部門の目標は設定され、達成度合いを評価し、次年度の目標に反映される、といったことはできるようになります。

それが少し成熟してくると、方針は絞れていて、各部門やそれより小さな単位のグループでの方針まで展開され、年度末の振り返りでは、進捗管理の結果、達成度合いなどから、次年度への展開計画を見直す、PDCAが動き始めます。

しかし、なかなか内外の状況の情報収集を十分に分析し、「方針」に立ち返って、方針そのものを見直すというところまでの振り返りがその会議体で行われていないことが多い状態です。

最も成熟した方針管理が定着した組織では、トップマネジメントによって、方針管理の進捗管理、振り返りからのインプットに合わせて、他の経営的な側面、内外の環境を総括的にとらえ、中長期経営計画、次年度方針の見直しを行い、組織の目的と普遍的な方針の達成につなげていけるようになります。

(米岡 優子)

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