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基礎から学ぶQMSの本質 第21回 日常管理(2016-6-13)

2016.06.14

 

 

<基礎編>が終わって今回からは<運営編>に入る。

 

その第1回目は「日常管理」である。

 

 

そもそも「日常管理」とは“それぞれの部門で日常的に実施すべき業務を効率的・効果的に実施していくための管理”である。

そしてその基本は、標準化を基礎として、部門が果たすべき業務のPDCAを適切に回すことである。

 

 

あるボールペンを作る会社は、部品を作る製造1課、組み立てる製造2課、梱包出荷をする製造3課がある。この会社の製造2課の部門の例で考えてみよう。

 

ここでは、社員が朝来るとまずは自動組立機のスイッチを入れて設備点検をして、部品を機械に供給して運転が始まり、組み立てられた製品が排出されて次の出荷工程に送り込むまでの作業を夕方まで連続して行っている。

この日常的に実施している業務は、永久に同じように進行すればよいが、現実的にはなかなかそうはいかない。

 

そこでまずはそのやり方の「標準」を決めて、これを基にして新しくその業務に就く人には教育訓練をして、いつでもだれでも同じ作業ができるようにしておく。

しかしながらある日機械が不調になり、製品接続部の強度不足不良が時々発生するようになっていたが、そのことに気がつかず何日間も作り続けたらどうだろうか?

説明の必要もあるまい。

いち早くその業務の中で起きている異常に気づき、適切な手を打つことが重要であることは誰も思うことであろう。

この時打つ手には、当面の事態を収拾し、かつ被害を拡大させないための処置と、同じことを再発させないための対策を実施することがあろう。

 

このような活動全体が「日常管理」である。

すなわち日常管理とは、当該部門業務の最適なやり方を決めてこれを守るような維持活動だけでなく、この状況を監視し、いったん異常が発生したときには、これが再発しないように現状業務の標準を変えて改善するまでのPDCAサイクルであることに留意する必要がある。

 

 

—————–

 

 

次に日常管理の全体を、基本概念編で説明したPDCAサイクルに沿って、前記ボールペン組立業務の例を通して説明してみよう。

 

PDCAサイクルの、PDCAそれぞれには2段階あったことを思い出してほしい。

 

(1)Plan(計画)

①P1:目的、目標、ねらいの明確化

良品のボールペンを生産計画で計画された通りに次工程に送り出すことが、製造2課の目的である。

具体的には前工程からの指示カンバンであったり、週や日々の差立て板や作業指示書で明確になっている。

 

ここではこれらの目的の達成具合を計る尺度を明確にして「管理項目」としておき、さらにこの管理水準を決めておくことが、PDCAサイクルを確実に回すことのポイントである。

この部門では、出来高、不良率などを管理項目として設定している。またこの工程内で異常なことが発生していないかどうかをできるだけ合理的に判断できるような「管理水準」を設定している。

このことは後でもまた説明する。

 

②P2:目的達成のための手段・方法の決定

ボールペンを組み立てるためには、機械の準備・操作の方法や、機械の運転中の監視のやり方、製品の“できばえ”見本があり、各種作業のやり方が標準書として決めてある。

 

 

(2)Do(実施)

①D1:実施準備・整備

標準通りの作業ができるようにするためには、新しく仕事に就く人たちへの教育訓練と、このスキルが維持できるような教育訓練も必要である。

また必要となる部品・材料、設備や測定機器などの資源も準備し、これがいつでも使用できるように整備がされていなければならない。

 

②D2:実施

(1)②のPlan通りに実施する。

 

 

(3)Check(チェック)

ボールペンの組立業務の中で異常が発生していないかを、(1)①で設定した「管理項目」について、設定してある管理水準を超えていないかどうかを、処置を取る必要があるかどうかの判断基準として監視する。

 

①C1:目標達成に関わる進捗確認、処置

日々の「出来高」が計画通りに出来上がっているのかを毎夕には確認している。

また、この出来高に最も影響するのは不良品の発生である。

組立中に自動機によって検出された不良は排出されて機械脇の不良BOXに貯められるのでこの「不良数」も確認している。

この確認頻度は日だけでなく、週や月で集計して傾向で確認もしている。

 

これらの管理項目の管理水準については、不良数については、p管理図やpn管理図にして統計的に異常を判断できるように設定してあるが、その他のものも過去のデータを分析して((1)①の目的達成具合を計る尺度として)合理的な管理水準を設定している。

 

②C2:副作用の確認、対応

異常は自工程で監視している出来高や不良率だけでなく、後工程ででている副作用で検出されることもある。

組立工程の後には製造3課の箱詰め工程があるが、「後工程の稼働率」に悪影響をしているかどうかも確認の対象としている。

 

 

(4)Act(処置)

①A1:応急処置、影響拡大防止

前出例の“機械の不調による不良品が発生した”ときを例に取ると、まずは当該製品の選別及び手直しの実施、原因となった機械の停止と修理などの応急処置の実施をする。

もうひとつ重要なのは、この影響の拡大防止対策である。

すでに顧客に渡されてしまったものを含む周辺ロットの品質確認が必要であり、場合によっては回収も必要かもしれない。

これらは、迅速で的確な処置が取られなくてはならない。

 

②A2:再発防止、未然防止

さて最後が再発防止対策である。

このためには不良の真の原因をつかまえて、これに対策を打たなければならない。

同じ例では、機械が不調になった原因をつかまえて、これが二度と起きないように対策をうたなければならないのであるが、「原因は機械の不調であり、これを修理したからもう大丈夫」としている例がよくあるので注意が必要である。

またよく見かける例として、不良が再現せずに原因追求が不十分であるとか、技術上難しいために慢性不良となってしまっていることがある。

これらに対しては、これをそのままにせず、慢性不良問題としてテーマアップして計画的に改善をしていく活動も必要である。

 

 

—————–

 

今回は、“もの作り”の業務を例に挙げて説明してみた。

これは、例えば、営業部門、購買部門、設備管理部門、総務部門などの間接部門の業務についても全く同じである。

 

日常管理のPDCAがうまく回るポイントは、適切な「管理項目」と「管理水準」を設定することである。

当該業務の目的やねらいとずれた管理項目をいくら監視しても空回りするだけである。

製造業務以外の間接業務の場合は、適切な「管理項目」が設定できないときが往々にしてある。

そこで登場してくるのが「業務の機能展開」である。

これは、業務分掌で決めてあることを目的として、その手段を展開していく方法である。購買部門の例を取ってみよう。

 

ある会社では、購買部門の目的は「品質のよい部品を、安く、指定通りの納期で、製造ラインに供給する」ことである。

この目的を達成するための手段としては、「適切な業者の選定」「正確で適切な発注」「注文品の進捗管理」「注文品の受入検査」・・・である。

そして、この中の「適切な業者の選定」の手段としては「業者情報の収集」「業者の評価」「製品・工程の知識の熟知」などがある。

この様に展開すると、管理項目の一部として「(供給業者起因や発注起因による)工程トラブル件数」「外部購入品納期遵守率」などが設定され、購買責任者の行動(運用)基準の一部として、例えば「業者情報の定期的収集(月、年)」「期初の定期的業者評価の実施」などが設定されている。

 

これまでは“目的を達成する度合いを計る尺度”としての管理項目の説明をしてきたが、“効率尺度”を挙げることもある。

例えば、製造業務では「単位時間当たりの出来高」とかがあり、営業業務では「一人当たりの売上高・受注件数」、購買業務では「実働時間当たりの購入金額」などがある。

 

日常管理を効率的に実施するためのポイントとしては、この管理項目・管理水準の設定以外に、部門の業務を「プロセス」として意識して管理をすることや、肝心の作業標準書を守りやすく、目的にかなうように作ることや、これを改訂しやすくすることなどあるが、これらの説明は、またの機会としよう。

 

いずれにしても日常管理とは、決めたことをただ守ることではなく、結果を監視して現状の業務のやり方を継続的に改善していく活動であることを忘れてはならない。

そしてそのための大前提として、現状の最もよいとされるやり方が標準として確立し、共有化され、遵守されていることが重要なのである。

 

日常管理は、企業の経営基盤を着実に強化していく重要な管理活動なのである。

 

(丸山 昇)

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